21、初めての魔物狩り
「ゼン、夜に森の中に行くのは危険ですか?」
クレイが話が変わるのですがと、話しかけた。
「そうじゃの……昼と夜では活動しておる魔物の種類が変わるのじゃ。場所にもよるが、夜の方が強い魔物が多いようじゃの。狩りにいくのかの?」
「はい……行きたかったのですが……」
「魔術の属性レベルもだいぶ上がったのじゃろ?」
「はい。私は闇属性はレベル10まで。リオは、火と水と光属性がレベル5まで上がりました」
「ふむ……クレイは夜目が利くじゃろうし……リオは術の威力が強いから大丈夫じゃろう。行ってみると良い」
「わぁ!」
「今から行きますか?」
「うん!」
「ふぉっふぉ、気をつけてのぉ」
「はーい!行ってきまーす!」
ゼンが大丈夫だろうと言ってくれたので、喜んで出かけていく。
バタンと扉を開け、外に出て空を見上げると、空は青と黒が入り交じり、月らしきものが東の空に浮かんでいた。
「月?三日月みたいだけど…赤い…」
「ツキ?とはあれのことですか?」
「うん。私が前にいた地球では月っていう名前の黄色くて大きい星?……んと、天体が夜になると見えてたの。あの赤色のが黄色だったらそっくりだよ!」
「そうなのですね……。黄色の月……それは美しいのでしょうね」
「うん。月明かりって言葉があったくらい夜でも明るく照らしてくれてたよ。あの赤色の月も結構明るいね。」
「そうですね。赤い月も綺麗です。」
この星の空に浮かぶのは赤色の天体だったが、リオ達は月と呼ぶことにしたようだ。
赤い月はとても綺麗だった。地球の月よりも、もっともっと大きく見える。そのせいかとても明るい。
これなら深い森の中でも木の葉の隙間から足元も照らしてくれそうだ。
リオとクレイはしばらく月を眺めた後、森の方へ歩を進めて行った。
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「どんな魔物がいるかな?」
「最初はそこまで強くないのがいいですね」
話しながら森の中を散策していく。
魔物と戦うのが目的なのでそこまで隠密行動は取らずにサクサク進んでいく。
ガサガサ バキバキ
「グァアアアアアア!」
しばらく進んでいると、魔物が現れた。
これは……とゼンに貰った知識から魔物の種類を探す。
「あれは……ブルーオーガだ!」
かなり大きく、160センチ程の身長のリオの倍近くはありそうな体躯だ。
~ブルーオーガ~
Cランクの魔物
人型の魔物。巨体と怪力で気性も荒く大変危険。くすんだ青い皮膚で頭に角が生えた鬼。
皮膚は固く防具の素材になる。
「シャドーバインド」
クレイが魔術でブルーオーガを拘束する。
ブルーオーガは、ミチミチと嫌な音をたてながら、拘束を引きちぎろうとしている。
「ライトボール」
そこに、リオがすかさずライトボールを撃ち出す。
眉間を狙って打ち出したはずのライトボールは顬を掠めた。
「ガアアアアァ」肌を傷つけられ、ブルーオーガは怒り、さらに暴れようともがくが拘束はなかなか外れない。
「あれ?……もっかい!ライトボール」
シュンッ
ブシューッ
今度は頭には当たった。
眉間よりは上の、さらに左側を貫通し、血が吹き出した。
そのままブルーオーガはズシーンと重たそうな音を立てながら倒れた。
テッテレー
「やった倒せた!クレイありがとう!」
「はい。おめでとうございます!」
「クレイの拘束のおかげだよ!」
イェーイとハイタッチする。
「レベルも上がったようですね」
「やったねー!でもまだ狙ったとこに上手く当てられないなぁ……」
上手く狙い通りに行かなかった事、拘束がなかったら攻撃を受けていたかもしれない状況に反省の声を漏らす。
「でも、裏庭で練習していた時より上手くなっていますよ」
「本当に?」
「はい」
クレイに前よりは上手くなっていると 褒められご機嫌に、次こそは!と、気合いを入れ直し次の獲物を探す。
しばらく草をサクサクと踏みながら歩いていくと、あ!と声を上げる。何事かと振り返るクレイに。
「薬草見つけた!詰んでいっていい?」
笑顔で声をかけ、返事も待たずに薬草の方に歩いていく。
リオの声に魔物が出たのかと身構えたクレイは、リオのマイペースさに苦笑いしていた。
生えていたのは先程作ったポーションの材料になる[コガマ草]だった。
白い花が咲く薬草で、材料になるのは葉の方だ。
葉を摘もうとしてふと手を止める。
「これ、亜空間に植え替えできないかなー?」
「沢山生えていますし、少し植え替えてみましょうか!」
早速、槍をスコップの代わりに使い、コガマ草を根元からザクザク掘り起こしていく。
リオのもつ槍は、ホムンクルスに転生した際に魔法陣で魂に刻まれた魔力から生まれたもので、通常の槍とは少々異なる。
穂先から石突きまで全て白く、石突きの少し上太くなっており赤い石が嵌っている。
通常分けて作られる穂と塚は一体型で槍先まで真っ白だ。
穂先はかなり幅が広く長さもあり大きい。
薬草をザクザクと沢山生えている内の半分ほどを掘り起こす。
「場所はどこに植えましょうか?」
「あ、じゃぁ、見えない壁のとこは?」
「いいですね!」
以前、なにか目印を置きたいと言っていた透明の壁の前に植え替えることになった。
まずはということで、果樹に向かって右側の壁際の地面を掘り返して薬草を埋めていく。
ゲートをすぐ近くに展開し、中と外でバケツリレーの要領で渡し、せっせと埋める。
かなりの量の薬草を掘り起こしていたが、掘り起こした分を全て植え替え終わると、泥だらけになった手をウォーターで洗い流し散策を再開した。
「薬草、枯れずにちゃんと定着するといいねー」
「そうですね」
クレイ:リオの前の世界の月……想像しただけでうっとりしてしまいますね…
それにしても、リオは暗いのは平気なのですね…良かったです!
夜目もきくようですし…夜の狩りにも一緒に行き放題ですね…ふふふふふ…
ここまで読んで下さりありがとうございます。




