17、レッドオーガの肉実食
空を見上げると、日はだいぶ傾いてきていた。
みんな家の中で休憩すると言うので見送り、私は、ほぼ見学しかしてないので、魔術の練習の続きをすることにした。
クレイも練習に付き合ってくれるとの事で、2人で並んで魔術を撃つ。
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空が赤く染まった頃、リオは火魔術レベル5に、クレイは闇魔術レベル8になったので、今日の練習は終わりにした。
リビングに行くと、皆ソファーでまだグッタリしていた。
「大丈夫?」
声をかけると目だけコチラを向け、大丈夫と返事はあったものの、かなりの疲労度のようだ。
……体力的にっていうより、精神的にかな?
解体大変そうだったもんなぁ……
魔物の解体は普通の動物の解体に比べ、皮膚も固いし、魔物自体の大きさがかなり大きい。
一体解体するだけでも、動物何匹分になるかという大きさだ。
しかも初めての解体である。クタクタになるのも必然だ……
日本にいた時にはお肉の状態で手に入ったので、ノアちゃん以外生き物の解体などしたことも無かった。ノアちゃんは料理人だったので鶏は絞めるところから2度ほどしたことがあると言っていたが、それでも鶏である。大きさも解体工程も随分と違う。
サンちゃんとランちゃんは内蔵を見た時も、うわぁ……。気持ち悪い……。などと青い顔で言っていたし、かなり精神的にくるものがあったに違いない……。
これでクレイが綺麗に血抜きをしてくれていなかったら、切る度に血が出て、もっと悲惨なことになっていたかもしれない……
みんなが動けなさそうなので、リオはみんな大丈夫かな……?と、心配しつつも夜ご飯、基、果物の準備を始めた。今日もすぐ食べれる物はこれしかない。
ナイフを借り、皿に山盛りになるほど果物を剥いていく。
「リオー」
「ランちゃん大丈夫?」
「うん、なんとかな……んで、これ焼ける??」
「わぁ!いいの?」
「うん、量これで足りるかな?」
「うん、足りなかったらお代わり頂戴!」
「あははは、オッケー」
ランちゃんがお肉を提供してくれたので適当な厚みに切り分け、フライパンを引っ張り出そうと棚の中をゴソゴソと探す。
日本で使っていたようなテフロン加工がしてあるフライパンはさすがにないな……
持ち手まで鉄で出来たフライパンが2つ出てきたので、それを借りることにする。
コンロは二口あるが、ガスやIHではなく、魔道コンロというものらしく、魔力を通すと表面に彫られている魔法陣から発火する。ガスほど火力が強くはないようだ。
脂身の部分を先に入れ、フライパンに全体的に脂を馴染ませお肉を焼いていく。
あちこち探したけど調味料は塩すら見つからなかったので、焼くだけだ。
せめて塩が欲しかった……
お皿とフォークを取り出し並べて、焼けたお肉を乗せていく。
ノアちゃんとサンちゃんも、のそのそとテーブルまで来て、みんなで食べ始めた。
2人ともまだかなり疲れた顔をしている。
「お肉すごい弾力だけど美味しい!塩でもあればもっと良かったかなー?」
「うん、素材の味って感じ。レッドオーガの肉だけど結構いけるな!」
「異世界の魔物の肉、初実食だね」
「うーん!見た目にそぐわない美味しさー!ランちゃんお肉ありがとう!リオ焼いてくれてありがとう」
お肉を食べてみんな少し元気が出てきたようだ。良かった。
初めて食べる異世界の魔物の肉は牛のもも肉のようだった。
しっかりとした弾力がある、しかし硬すぎて噛みきれないということはない。レッドオーガは脂肪も少なく、しかしパサついているわけでもなくとても美味しい。噛むと肉汁はしっかり溢れてきていた。見た目がかなりゴツイ魔物なので、もっとお肉は固くて噛みきれないかと思っていたので想像以上の美味しさにビックリだ!
味付け無しでこの美味しさなら、塩や他の調味料で味付けをしたらもっと美味しそうだ。
こういう脂の少ないお肉はローストビーフとかにすると美味しいよねー、いつか調味料が揃ったら試してみたいと思う。
この世界の魔物の肉は基本的には魔力が高い魔物の方が美味しいらしい。種類によっては魔力が低くても美味しいのもいるらしいけど魔力が高い魔物ほどではないようだ。
お腹いっぱいになり片付けようと食器を運ぶが洗剤がない。
とりあえず果物を入れていたお皿だけ水洗いし、後でゼンに聞くことにする。
そうこうしていると、明日なんだけど、とランちゃんが話出す。
「一通りのことは教えて貰えたし、俺は明日出立しようかと思うんだけど、みんなはどうする?」
ランちゃんも早く街に行ってみたいようだ。
サンちゃんとノアちゃんも、街までかなりの日数がかかるし一緒に行こうかなとの事だ。
「リオは?」
「私はもうちょっと魔術の練習してからにしようかな。覚えたいのがまだ覚えれてないから、それ覚えたら行くよ」
「でも、1人だと危なくない?」
「んー、どっちにしてもクレイは昼間移動できないし……。もし無理そうなら亜空間に逃げ込むよ!」
「あー、クレイ、ヴァンパイアだもんな……」
「昼間動けないのは辛いな……」
  
「夜の方が魔物が凶暴だってゼンが言ってたし、気をつけてこいよ」
「うん、ありがと!皆も気をつけてね!」
明日の予定も決まり、ゼンにお皿のことを伝えるとお皿にもクリーンの魔術をかけてくれた。ついでにみんなにもかけてくれ解散した。
部屋に戻りふぅと一息、ベッドに腰を下ろす。
「リオ、また血を分けて貰えませんか
?」
「あ、そうだったね!いつも夜で大丈夫なの?」
「はい!大丈夫です」
昨日の体勢はちょっと恥ずかしいから他の体勢で飲んで欲しいと伝えると、では……とクレイの膝の上に同じ方を向くように座らされた。
重くないか聞くと、大丈夫ですと言いながら後ろからお腹に手を回し抱きしめられる。
すぅーーーっ と首もので息を吸う。
首に息がかかり少しくすぐったい。
右手をお腹から離し髪の毛をサラサラと梳く。
リオの左の横髪から後ろの髪の毛までをまとめて右に流し、左手で顎に触れる。
少し頭を右に傾けられ、首の左にチュッと唇が触れる。
チュッ……チュッ……と耳下から肩の方に唇が降りてくる。
リオの手にクレイの手が触れ、指が絡まされたかと思うと、首筋にチクッとした痛みが走った。
「ぅん……」
チュッ……ジュッッ……チュッ……
血を啜る音と合間にハァ、ハァと息を吐く音だけが狭い部屋に響く。
しばらく経った後。
ジュジュッッ……。
「んっ……ぅ……」
一際強く吸われ声が漏れる。
ペロッ……チュッ……ペロッペロッ……
唾液で傷を塞いでくれ、ギュッと抱きしめられる。
「ハァ……ありがとうございました」
「うん……」
ご飯!ご飯なんだよ!分かってるのになんか………
前からも恥ずかしかったけど後ろからも恥ずかしすぎる……
今日も頬を赤く染め、顔を両手で押さえながら、熱を早く収めようと天を仰ぐのだった。
ラン:リオ大丈夫かな?
サン:夜しかクレイが動けないって言ってたのか?
ラン:そう!
サン:ちょっと心配だよな……
ラン:クレイって強いのかな?
サン:魔獣のランクはSだけどな。
ラン:クレイがメインで戦えるなら何とかなるか?
サン:頑張って走れば5日くらいだろ?それに結界石もあるなら何とかなるか?
ラン:あー、結界石もあるんだっけ!それなら……
サン:うん、何とかなりそうだよな!
ラン:明日一応もっかい聞いて見ようかな?
サン:そうだな!
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