136、領主様からの相談
「おはよー!」
「「リオ、おはよう!」」
今日もみんな元気だ。
いつものように朝食を食べに食堂に入る。
「リオ。」
「ん?あ、ジオ、おはよう。」
「おはよう。昨日は…その、ありがとな。」
「うん。今日は昨日より元気そうだね?」
「うん。なんか吹っ切れたっつうか、なんて言うの?とりあえず、もう大丈夫だわ!」
「そか!…今日この後どうなったか聞きに行こうと思ってるんだけど…行く?」
「……行く。」
朝食後、ジオと出かけようとしていると、ルードとシュバルツ、それからランちゃんとサンちゃんも着いて来てくれると6人で、まずは領主様の所に行くことになった。
今日もアポ無しだが、来ると思っていたそうで、割と直ぐに会うことができた。
領主様の話では、ジェネファー・ジェネシスは貴族位は剥奪の上、他の結託していた者達と共に、終身奴隷落ちに決定したそう。
パラダイン王国の国王陛下にも昨日の内に事の詳細を伝え、すぐに対応して貰えたのだそう。
昨日保護した者達も、リオが回復魔術をかけていたので、治療などは必要なさそうだったが、手厚い保護をしてくれるとの事だ。
それなら安心だと思っていると、それからと、話は続いた。
リオが門前で捕まえたチンピラ達。
あれがブラックスコーピオンの戦闘員だったそうで、調べた結果、戦闘員はあれで全てだったので、スラムにあった、ブラックスコーピオンの拠点も制圧でき、ペルカにあった裏組織はあれだけなので全て解体済み。
リオが狙われているという話も聞いていたが、もう安心してくれていいとの事だった。
めんどくさいからと、避けていた、ブラックスコーピオンだが、結局リオがほぼ1人で片付けたようなものだったらしい。
おお!ラッキー!と、リオは言っていたが、他の人は、1人で片付けるとか…と呆れ顔だ。
その後、スラムで以前、怪我の治療と炊き出しをしてくれてありがとうと、感謝の言葉も貰えた。
「あと、相談なのだが…。」
領主様が切り出した。
内容はこんな感じだ。
スラムに住む者もほぼ全ての人が怪我も治り働ける状態だ。
仕切っていた裏組織も解体済みなので、スラム自体も解体してしまいたい。
だが、急に働き手が増えたせいで仕事が足りないのだそう。
何かいい案は無いだろうか?
というものだった。
「それならちょうど良かった。」
リオは、以前、ペルカのスラムの中を案内してもらったベルナルドに仕事がなかなか見つからない。魔物と戦うのはリスクが高いからもっと安全な仕事がしたい事を相談されていて考えていたことがあるのだと、話し始めた。
「コンラッド様にも、あと、商業ギルドにも協力して貰えるならとても有難いんですけど…。」
と、話し始める。
簡単に言うと、家が家とも言えないようなボロボロの小屋なので、それはこっちで立て替えてあげられるから、場所は家賃を払う形で、スラムがある場所に住ませてあげて欲しい事。
娯楽が少ないので、娯楽用の玩具を考えたので、それを作る為の工場をスラムの場所に作らせて欲しい事。
その工場で働く人手を、スラムの人を優先させて雇って欲しいことを提案した。
「ちなみに、その玩具は、これと、これです。」
リオが取り出したのは、リバーシーとバランスタワーだった。
領主様も時間はまだ大丈夫だと言うので、周りにいた護衛の人や執事さんも巻き込んで、ルールを説明してやり始める。
結果、みんな一瞬でハマった!
「なるほど、これは面白い。」
「これを作る工場の管理と、販売ルートは商業ギルドにお願いしたいんですけど。」
「わかった!商業ギルドには私から掛け合おう。スラムの方を頼んでも良いか?」
「はい。よろしくお願いします。」
話が纏まり、玩具はサンプルにと今遊んでいた物を領主様に預け、領主邸を後にする。
「リオ、前言ってた、玩具の販売ルート任せてもらっていいかって、ああいう事?」
「ランちゃん、覚えてたんだ。そういう事!」
「どうすんのかと思ってたんだけど、なるほどなー」
「なんかベルナルドが安定した仕事が見つかんないとか言ってたからちょうどいいかな?と思って」
「やー、マジさすがだわ!」
「そぉ?ありがと!」
「うんうん、後半商業ギルドに丸投げなとこもな……」
「わ!バレた?えへっ」
サンちゃんにツッコまれ、ペロリと舌を出す。
「や、一緒に聞いてたからな。これは面倒臭かったんだろうなと思ったわー」ハハッ
「アハハ、でね、ジオにお願いがあるんだけどー!」
「え"?!俺?……なんだよ?」
「家の図面描いて!」
「は?」
ジオは日本にいた時は建築家の仕事をしていたと聞いていたので、適役だ!と、お願いしてみることにした。
「メゾネットタイプっていうの?マンションみたいな作りの家とあと、玩具作る為の工場」
「あぁ、一部屋ずつになってるのはそうだな」
「それを立てたいんだけど、デザイン描いて欲しいの」
「描くのはいいけど、俺作るのは無理だぞ?」
「作るのはクラフトで出来るから大丈夫!」
「…クラフト?」
「あ、ジオはリオのクラフトの能力知らないのか!マジやべーから!マジでチート!」
「そうなのか?」
「あとね、亜空間内のも、それが終わったら描いて欲しいの。」
「え?亜空間の中もマンションにするのか?」
「んーん、亜空間の中のは、お・し・ろ!」
「「は?」」
みんな意味がわからず呆然としている。
「お城みたいな見た目にして欲しい。中はめっちゃ部屋数作って!今いる全員一人一部屋で一緒に住めるくらい!後ね、温泉に行く通路と、広い地下室完備にして欲しくてー。」
「城みたいなマンションって……ラブホか?」
「「ブッ」」
「ちっがーーーーう!!!」
「だって城みたいなマンションだろ?」それはもう見た目が城のホテルじゃね?とジオはケラケラ笑っている。
「違う違う!もぉ!ジオのバカー!!」
リオは少し顔を赤くしてポカポカとジオを叩く。もちろん軽くだ。本気で叩いたら辺りが血の海になる。
「いてっ、いてっ、ちょ、止めろ!」
「てか、城みたいなラブホとかまだあんの?」
「かなり古そうだな」
「だよな?俺聞いたことしかない」
「田舎の方にならあったの見かけたことあるんよ」
「へぇ、そうなんだな」
「むー……」
サンとランが話している間も、リオは先程のジオの発言で機嫌が悪い。
「悪かったって!リオ、もっかい言って!」
ジオは苦笑いで、謝っていた。
「見た目をシンデレラ城みたいな綺麗でオシャレなお城にして欲しいの!ラブホじゃなくて!!
それでね、中はめっちゃ部屋数作って!今いる全員一緒に住めるくらい大きくして欲しくて、遊ぶ部屋とか図書室とかも欲しいし、部屋も一人一部屋に…」
「え、や、ちょっと待て!待て!さっきと言っとること違うじゃん…とりあえず、描く時もっかい聞くわ!覚えきれん!先にマンションは、どんなんがいいの?」
とりあえず、家に帰ってにしようと、家に帰り、食堂に集まった。
リオの希望的には、スラムに作るマンションは部屋は2部屋で、リビングとキッチンとトイレは付いてるのがいいなというものだった。要は2LDKだ。
みんなに風呂は?とツッコまれたが、水が貴重みたいだからお風呂は1階を広い銭湯みたいにして欲しいと言うと、なるほどと納得していた。
「上水道通って無いんだよねー。」
「え?じゃぁ部屋のキッチンの水は?」
「それもタンクになるかな?水出す魔石くっつけとくよ。」
「…なんか、一般の人よりいい暮らしができそうだな…。」
「でも、水汲み行く時間も、玩具作って貰えたら、その分お金稼げるじゃん?」
「「あー、なるほど?」」
「待って、ずっと働かせる気か?」
「労働基準法とかはなさそうだよ?」
「ちょ、リオ?鬼かよ……」
「お金欲しければ頑張って働き続けるんじゃない?」
「怖ぇこと言うなよな」
「冗談だよー」
「いや、マジ、リオが言うと本気に聞こえるわ……」
「でも……」
「「でも?」」
「商業ギルドの人達にこき使われそうだよね?」
「「あー……」」
そのまま雑談をしながらもジオにマンションの設計図を描いて貰う。
「ふんふん…んじゃこんな感じか?」
「どれどれ?」
「1階は管理人室とポスト、銭湯を作って、2階から5階までがメゾネットタイプのマンション。部屋は2部屋とキッチン、リビング、トイレで玄関は日本式。あと天井に魔石でつくライトの設置箇所と、キッチンの水道の所にはタンク式の水道。コンロはあとから入れるのか?」
「うん。コンロは魔道コンロじゃないと、家の中で火なんか焚いたら火事になっちゃう!
あ、忘れてた、換気扇もいるね!
あと、食器棚みたいなのとリビングに机と椅子も備え付けにしようか?それも描いといてくれる?」
「ふんふん…。」
「あとねー、」
「まだあんのか?」
「うん!部屋空間拡張するから、できるだけ数増やして欲しいのと、1階が銭湯なのは2件で、他のは1階の作り変えてもらってもいい?」
「え?部屋のクウカンカクチョウってなんだ?」
「ジオ、アヒンの家見てないっけ?リオが拡張してんの。」
「さすが魔法がある世界だよねー!凄い便利ー!」
「や、意味わかんないから、ちょぉ、それ見して?アヒン?の家?」
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アヒンの家にゲートを抜けて出ると、え?別に普通じゃん?と言っていたが、こっちこっちと、1階に連れていき、外と中の差を見せると、なんじゃこりゃー!と目を見開き叫んでいた。
高級店が並ぶ通りだ、行き交う人にジロジロ見られてちょっと恥ずかしい。
小さい子供のように、ワーワー言いながら出たり入ったりして大きさの違いを見て回っている。
「やべー!リオの能力チートすぎだろ!」
「え?コレはみんなもできるよ?」
「「……は?」」
詳しく!と詰め寄られたので、説明していく。
光属性レベルと闇属性レベルをレベル5まであげると、空間属性が使えるようになる。空間属性をレベル5まであげると、何処でも3面以上で囲まれた空間なら拡張できるようになる事を伝える。
拡張しただけだと、すぐに戻ってしまうので、今度は固定するのに錬金術の出番だ。
錬金術は、水属性、火属性、光属性レベルをそれぞれ5レベルまで上げると使えるようになる。
「うーわ…」
「実質無理ゲーじゃね?」
「リオ、そんなレベル上げてんの……?」
「あれ?でも、ゼンの家にいた時、みんな魔術使えるようになったって言ってたよね?」
「レベル1のな。」
「え?レベル2じゃなくて?」
「「は?」」
「なんでレベル2?」
「だって、レベルせめて2まで上げないと使えるのなくなかった?」
「……もしかして、リオ魔術で魔物倒してた?」
「うん。愛用してるのはライトボール。」
「「マジか…」」
「えー、皆、魔術全属性覚えたって言ってたから、レベルも全属性上げ終わってるのかと思ってた…みんな覚えるの早すぎって思ってたけどレベル1だったのか…。」
「や、1日でとか無理だからな…」
リオが何で魔物を余裕で倒せるのか、怖くないのかと皆不思議に思っていたが、遠距離攻撃かと、今更ながらに納得した3人だった。
「でも、ライトボールは光属性レベル2で覚えるよ!」
「練習するわ!」
ランちゃんは気合いを入れていた。
「俺も。」
サンちゃんもやる気になったようだ。
「俺は忙しいからいいわ。リオんとこ居たら働かんくても平気そうだし。」
ジオはカラカラと笑っている。
「ご飯はね?買い物するお金は出ないよ?」
「リオに借りる!」
「「ヒモ生活する気満々だな…」」
ランちゃんとサンちゃんは呆れ顔だった。
読んでくださりありがとうございます。