135、クレイの説教
この部屋に居た人達も引渡し、後はお願いしますと屋敷を後にしようとすると、柄の悪い男たちに取り囲まれた。
門を出てすぐの場所、衛兵達が数人倒れている。
死んではなさそうだがかなり血が流れているようだ…
「ここの家が無くなると色々こっちにも都合が悪くてな。」
「おめーらも死ねやー!」
「ライトジェイル シャドーバインド」
「「な?!」」
「クソ!」
「出しやがれ!」
ガンガン と、ライトジェイルで出来た檻を剣や武器で叩くが、ビクともしない。
リオは捕まえ損ねた人はいないかと周りを確認するが中に入っている20人ほどで全員のようだ。
シャドーバインドで、倒れた衛兵をライトジェイルの外に連れ出すという荒業を使い、衛兵の様子を見る。
切られた傷が何ヶ所もあるが、まだ生きているようだ。
リオが回復魔術で、傷を癒すと衛兵達はすぐに気がついた。
あの人達、とりあえず捕まえたけどどうすればいいかと聞くと、すぐに拘束する準備をするので、そのまま待っていて欲しいと言われた。
だいぶ血も流れていたので、傷は治っても少しフラフラとしながら、衛兵の人はどこかへ行ってしまった。多分他の衛兵を呼びに行ったのだろう。
とりあえず、あまり暴れられないように、ライトジェイルの檻のサイズを縮小していく。
ギューギューの満員電車のように、動くスペースもないほどギチギチの状態にしてから、衛兵が戻って来るのを待つことにした。
「これも、魔力操作?」
「んー、魔力操作もだけど、後イメージかな?」
「イメージか…。」
「シュバルツも何か適正属性あったよね?」
「俺は風だけだな…。」
「風はなかなかいいよ!攻撃速度も発動速度も早いし、攻撃がほとんど見えないから、相手も避けにくいし。」
「そ、そうなのか?」
しっぽがゆらゆらと揺れだした。嬉しいようだ。
「それからイメージトレーニングしてるとめっちゃいい事あるよ!」
「めっちゃいい事?」
「属性レベルが100になると覚える魔術知ってる?」
「え?100に…なった人なんか居んのか?」
「ん?どうだろ?私は師匠しか知らないけど…え?もしかしていないのかな?」
「リオの師匠……」
「まぁいいや、属性レベルが100になるとね、イメージ次第でなんでもできるようになるんだよ。」
「……は?」
「師匠が実践済みだから間違えないよ!100になるまではレベルが上がる毎に覚えれる魔術が決まってるんだけど、レベル100になったらオリジナル魔術も作り放題だよ。」
「ま…じか…!」
「こないだ、めっちゃ早い飛んでるみたいって走ってたけど、風魔術なら実際飛べるかもね。」
「マジか!!」
「だから魔力操作とイメージトレーニング大事だと思うよ?」
「風魔術のレベルまだ1なんだよ…これしか出来ない…。」
手のひらの上で風を起こす。
扇風機の弱程の風が前に吹いていく。
「マナポーションいるなら、いくらでも作ってあげれるから言ってね。」
「!!本当か?」
目をキラキラさせて身を乗り出してきた。
「うん。」
頭をぽんぽんと撫でる。
こないだリオがみんなに魔力操作を教えてから、夜は魔術や魔力操作の練習をするのが日課になりつつあるようだ。
だがレベルが1の人がほとんどで、さらに獣人は魔力も低い人が多いようで、思うほど練習が出来ないと悩んでいたのだそう。
少しでも魔力値が伸びるようにレベル上げもしに行きたいと言っていた。
シュバルツと話しながら待っていると、衛兵の人達が色々拘束具を持って戻ってきた。
従属させるような首輪などもあるようだ。
首輪が着けやすいようにライトジェイルを操作しながら、フォローしていく。
全員拘束が終わると、あとは衛兵に任せて帰ることにした。
ルードはもう帰ったのかな?と茶髪で金目の男の人を見かけなかったか聞いてみると、こちらにいますと、案内してくれた。
ルードは、地下で死にかけていた女の子の傍に付いていてくれたようだ。
他の人たちは目が覚めたが、その女の子だけ未だに目が覚めないのだそう。
「もう帰ろうかと思ってたんだけど、目が覚めるまでついてる?」
「んー…。」
どうしようかと話していると、領主様の領兵が私共で見ていますので大丈夫ですよと、声をかけてくれた。
それなら、とあとはお任せして家に帰る。
朝は朝食を食べてすぐに行動を開始したのに、もうすぐ空が赤くなり始める時間になっていた。
「お腹空いたー。」
「そうですね。」
「昼食い損なったな。」
家に着くと、フリーオンはちょうど客足が減っていた。
席も沢山空いていたので、ハンバーガーを注文して3人で食べる。
お金はいいよと言われたが、めっちゃ食べるからと、ちゃんと払って、リオは20個ほど注文していた。
ルードとシュバルツに、食べ過ぎだと呆れた顔をされたが気にせずパクパク食べていた。
さらに、晩御飯の時間にはいつもと変わらない量をモリモリ食べる。
つい、2時間ほど前にあんなにハンバーガー食べたのにと、それを知っているルードとシュバルツはリオの食べっぷりを見て絶句していた。
食後、ジオが話しかけてきた。
全員捕まえてきたこと、ジェネファー・ジェネシスもちゃんと衛兵に引き渡したこと、領主様が後処理はしてくれる事になっている事などを説明する。
「もう会うこともないよ。大丈夫。」
「リオ…ありがと。」
「どういたしまして。」
「はぁ…何か、胸につっかえてた不安?なのかな?何か気持ち悪いの無くなった気がする。」
「そうなの?なら良かった!後どうなったか明日聞きに行く?」
「いや、大丈夫。リオのおかげ。もう大丈夫そうだわ。」
「ちゃんと仕返しもしてあるしね!」
「……は?何したん?」
「寝たら、ジオがされたようなことを体感するように魔術かけといた!」
「……マジか。もう寝れんじゃん…」
「だろうね?気絶させたら、絶叫して飛び起きたし?」
「え"?!ガチじゃん…。」
「そりゃそうだよ!大事な友達傷つけられたんだから!」
「ハハッ、マジでサンキューな!それ聞いてちょっとざまぁって感じだわ!」
「でしょ!もう怖いもんも無いからね!」
「ん、マジでありがと!」
ジオの表情が柔らかくなった気がした。
胸のつっかえが取れたって言ってたのは本当なのだろう。
良かった。
明日からは無理に笑わず自然体でいられるようになってるといいな。
クレイに狩りに行くか聞きに行くと、めちゃくちゃ説教された…。
朝アランに気づかれて、ルードとシュバルツが着いてきてくれたが、クレイがその事を知ったのはお昼の時だそう。
お昼にリオが戻らなかったので知っている人が居ないか聞くと、アランが教えてくれたそうだ。
なんで自分にも言わずにそんな危険なことをしたのかと、延々と…
この日は寝る時間まで説教をされ続けるのだった…。
読んで下さりありがとうございます。