1、異世界転生
読みに来て下さりありがとうございます(_ _)
ここは……どこ……?
意識が浮上した時、私は知らない空間にいた。ふわふわと水面に浮かんでいるように気持ちがいい。
目の前には見慣れぬ空間……青空のようであり海の中のようでもある。何処までも青に囲まれた不思議な空間だ。
辺り一面青く蒼く瑠璃く碧く、どこまでも続いているように見える不思議な空間。意識が覚醒しないままぼんやり眺めていると、
「こんにちは、お嬢さん」
凄く綺麗……と、辺りをぼんやりと見回していると、急に後ろから声をかけられ、驚きにビクリと肩を震わせながらも振り向いた。
「私は主達のような適合者を探しておったのじゃ」
振り向いた先にはファンタジー風なグレーのローブに身を包んだ骸骨がいた。
「!!? きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
振り返ると声をかけてきたのが骸骨だった事に驚き、悲鳴をあげた。
「?! ぎゃぁぁぁぁぁー!」
骸骨は、声をかけると叫ばれたことに驚き、悲鳴をあげた。
「……」ドキドキドキドキ
「……」ドキドキドキドキ
そしてお互い顔を見合わせたまま沈黙が続いた。
ぼんやりしていた目が一瞬で覚めた。振り向くと骸骨がいた事に驚き叫んだが、相手が自分以上に驚いたせいで逆に少し落ち着き冷静になれた。私と骸骨以外は辺りを見ても誰もいないので、どういう状況なのか誰かに聞くことも出来ない……仕方ないので、骸骨を観察する事にした。
骸骨も、こちらに顔を向け静止している。目玉がないのでどこを見ているのかはよく分からないが、顔はこちらを向いているので、こちらを見ているのでは無いかと思う。
動く骨だ、何処からどう見ても骸骨……理科室にあった骨格模型のようだった。濃いグレーのローブの下に服は着ておらず靴も履いていない。7分丈程の袖、フードが着いた足首程もある長いローブだけを羽織っている。腰の位置にはベルトが着いているようだが、骨だけで肉が無いせいかだらんとベルトが垂れ下がっている。フードは被っており、手首や指にアクセサリーをつけているのが見えた。その骸骨が動いて……喋っていた。だが落ち着いて見ると不思議と怖い感じも、禍々しい感じも特にしない。
「……コ、コホン。驚かせてすまんの。私はゼルジオン。ゼンと呼んでおくれ。先程も申したが、おぬしらのような適合者を探しておったのじゃ」
しばしの沈黙の後、骸骨は手を口元で握り、咳払いを1つして、ゆっくりと話し出した。
「適合者?おぬしらってことは私以外にも誰かいるの……?」
骸骨だが、話し方も優しく、声も落ち着いた低く優しい声だ。悪い人ではなさそうだと直感でそう感じられたので、とりあえず話の続きを聞く事にした。ゼルジオンと名乗る骸骨の言葉を聞き、周りをキョロキョロと見渡すが、この不思議な真っ青な空間には私とゼン以外には誰もいない。
「他の者は本人の許可を得て、先に送っておるよ」
「先に送ったって……何処へ?」
「私が作り上げた人造人間の中へじゃよ」
「作った?身体を……?」
「うむ、そうじゃ」
ゼンの言っていることは分かるが、思考が追いつかず意味がわからなく目を丸くしていると、ゼンが説明を続けてくれる。
「私の手伝いをしてくれる、人造人間に適合する魂をずっと探しておったのじゃ。魂を受け入れる人造人間は完成したが、魂が見つからないまま数百年……お嬢さん、私の作り上げた人造人間に魂を移して、人造人間の継承者になっては貰えんじゃろうか?」
「でも……私の身体はここに……?」
……あれ?身体が透けてる?
ゼンの言葉にふと手を見ると手は透けており周りの青い空間が透けた手を通して見えている。そのまま、ふとした違和感に足元を見るが、地面もない……足も透けており、足の下に地面はなく下も青がどこまでも続いているように見える、ただただ青い、どこまでも青い空間に立っているのではなく浮いているようだ。驚き身体も確認するが、ぼんやりと輪郭はあるがどこもかしこも透けていた。
「そなたらは魂だけの状態で見つけたのでの、元々の身体は亡くなったと思われるのぉ。私は魂を抜き出すことは出来ぬからのぉ……」
「魂の……状態?コレが……?」
「他の4人も魂の状態で見つけたんじゃよ、4人は既に人造人間に魂を入れ終わったところじゃ。今回見つけた適合者は5人じゃ。一度に探していた5人分の魂を見つけられるとはついておったのぉ。ふぉっふぉっ」
「……」
「して、そなたで最後なんじゃが、どうじゃ?」
亡くなったって……死んだってこと?……なんで死んだか思い出せない。あー……どうしよう……どうしたら……
それに、色々常識と違う情報が多すぎて思考が追いつかない……
どうしたらいいのかと考えても考えても次から次から疑問が浮かび混乱する中、何とかゼンに質問をする。
「もし、断ったら……どうなるんですか?」
「その場合は、輪廻の輪に戻るだけじゃろうの?」
つまり、普通に死ぬのと同じってこと……?はぁ……本当に死んだんだ、私……
「……もう1つ聞いてもいいですか?」
「うむ」
骨なので表情はよく分からないが、ゼンは話し方も穏やかで優しそうだ。
考えをまとめるのに少し時間がかかったが、何も言わずに私が喋り出すのを待ってくれた。
「あなたの……ゼンの作った身体に入れてもらったら、私は何をしたらいいんですか?」
「ふぉっふぉ。難しい事はない。私が作り上げた人造人間がきちんと機能するかの経過観察をしてもらいたいのじゃ。それ以外にお嬢さんにお願いすることは特にないかのぉ。安心したかの?」
「経過観察?」
「うむ、要は自由に生活してくれれば良い」
「自由に……?」
「やりたい事をやり、生きたいように生きる」
「え……」
「それで何か身体に問題があった時にだけ教えてもらえればそれで良い」
「そんな事でいいの?」
「どうじゃ?簡単であろう?」
分からないことも多いけど、このまま死ぬくらいなら……
特に無理な要求も無かったので、ゼンの提案を受けることにした。
「はい。それなら……よろしくお願いします」
こうして、私はゼンに導かれ、異世界に転生することとなった。
ゼン:ふぅ…最後の子はびっくりしたのぉ…声をかけたらいきなり叫ぶもんじゃから、私も驚いて年甲斐もなく大きな声を出してしもうたわい…
威厳たっぷりに話しかけるつもりが…台無しじゃったのぉ…ふぅ…
読んでくださりありがとうございます。