第二十二話 シリカゲル・水ガラス(ケイ酸ナトリウム)の作り方
シリカゲル・水ガラス(ケイ酸ナトリウム)の作り方
まず砂を用意する。
できるだけきれいで長石・石英が多く、雲母や砂鉄や貝殻が少ない砂を選ぶと後が楽だ。
私の地元だと大阪の千早赤坂村の金剛山中腹の川の砂が余計なものが少なく扱いやすそうだった。
海の砂と違って貝殻が少ないのでいい。
二上山の周りは鉄分が多くてちょっと辛い。ザクロ石が多く含まれるので鉄分の分離が難しそう。
原始の日本だと和歌山県白浜の白良浜の砂などがいい。
現代では和歌山県白浜も和歌山県加太も海水浴場はオーストラリアからの輸入砂を入れてる。この砂はとてもいい。金属が少なく、石英が多い。
和歌山磯ノ浦の浜で採取した砂は、おそらく紀の川由来の砂だろうが、チタン鉱が多くてイマイチだったが関東の砂に比べればずっと砂鉄が少ない。
関東だと鉱物資源がわりと豊かなので、砂鉄採取には向いてるが石英や長石だけを集めるのは苦労しそう。
まあ結局は、精製作業を頑張ればどこの砂でもいい。
絶対完璧な石英ばかりの白い砂が欲しいなら、もう石英とか水晶の岩石を採取して砕くといい。
まず砂を水できれいに洗い泥などを洗い流す。
磁石があれば砂鉄を除去する。無ければしょうがない。
タライに水を張り、砂を皿に入れて、タライの中に皿ごと漬けて、ゆっくりゆすって比重選鉱する。
砂金でよくやってるやつだ。軽い砂を皿からこぼして、底に重い砂鉄が残る。砂金とは違い砂鉄は捨てる。
これはちょっとコツがいるのだが一日練習すればできるようになる。
それを繰り返すとタライの底に砂鉄以外の砂が残る。
ここから先の作業は保護メガネがいる。できればビニール手袋も。
水酸化ナトリウムを扱ったりするので、異世界だろうが現実だろうが目を保護すること。失明の恐れあり。ラノベに書くなら、調子にのったお馬鹿さんが失明するエピソードを入れてほしい。
この砂を乾燥させてツボにいれる。ツボに塩酸を入れ、反応を促進するために少し温め陶器の棒でかき混ぜる。
これで貝殻と鉄分を溶かす。鉄分と貝殻が無くなるまでやる。薄い塩酸だと数日かかるかも。
終わったらよく洗い、液体中の塩化カルシウムや塩化鉄を洗い流す。そして再び乾燥。
洗って乾いた砂を鉄の容器に入れ、水酸化ナトリウムの個体を入れ、砂と混ぜる。
砂と水酸化ナトリウム粉末、重量比で1対1でいい。
鉄容器を火で加熱してかき混ぜる。砂が溶けていく。ケイ酸ナトリウムと水になる。
溶け残った砂があるかもしれないけど無視していい。
発生した水分も飛ばして煮込んでいくと固くなってくるので、火からおろして熱を取る。
不純物は入ってるがケイ酸ナトリウムとなった。
これに蒸留水を入れ温めながらかき混ぜて溶かす。最初はちょっとドロドロしてるかもしれないけど少し水を多目にいれるとサラサラしてくる。いわゆる水ガラスとなる。これを紙や布でろ過して溶け残りの砂や雲母などを除去する。
水ガラスは肌に侵食するので濃度の濃いものを素手で触るのはよくない。
で、ろ過した水ガラスをツボに入れ酸を加える。濃硫酸の場合は一滴ずつゆっくりと加える。濃硫酸の場合は反応が激しいので気を付ける事。ていうかクエン酸でも固まるけど。たぶん二酸化炭素を吹き入れても固まる。ケイ酸は炭酸よりまだ弱酸なので遊離する。
すると液中に寒天みたいな半透明のゲルができる。これをろ過する。というか布で包んで絞る。すると布の中にゲルが残る。これをしばらく空気中で放置してから一度砕いて水でよく洗う。例えば硫酸で固めた場合は硫酸ナトリウムが含まれてるから洗い流す。それをまた絞って細かくして180℃で12時間乾燥すると乾燥材としてのシリカゲルになる。12時間もやらなくていいかもしれないけど。七輪で炭火をおこして鉄板を置いて少し高さを遠めにして天ぷら油が煙にならない距離にして乾燥させる。時々炭を追加する。この時500℃以上で48時間乾燥すると、内部構造が失われ吸湿罪としての力はなくなる。あ、丸くは無いよ・・・粉末です。丸くするにはまた別の技術がいります。ガラス材料として透明なガラスを作る為に純粋な二酸化ケイ素が欲しい場合は、二酸化炭素で固めてから全力で乾燥すればいいと思います。
市販のシリカゲルはたぶん硫酸か塩酸で固めてるのでちょっとぐらいは硫酸ナトリウムが残ってるんじゃないかと思います。
現代でシリカゲルはホームセンターで1㎏500円ぐらいで売ってます。
水ガラスはAmazonで少し高いけど買えます。
前に小型溶鉱炉を作ろうとして耐熱セメントを自作したんですが、アルミ缶から作った耐熱アルミナを固める為の水ガラスが欲しくて、ホームセンターで買ってきた重曹を加熱して炭酸ナトリウムにして園芸用の牡蠣殻焼き石灰と合わせて濃いめの水酸化ナトリウム水溶液を作って炭酸カルシウムをろ過で除去してから市販のシリカゲルを入れて煮込んで溶かして水ガラスを作りました。意外とうまくいきましたが水分の調節が難しかったですね。あの時は作り過ぎた水ガラスをお掃除用のクエン酸で中和してシリカゲルに戻して遊んでました。今なら砂から採取して作るかな。
参考までに https://youtu.be/F-dWWChEynA 水ガラスを作る動画
水ガラスは鋳物での砂型を固めるのによく使いますね。二酸化炭素を吹き入れると固まるので型崩れを起こさないように、砂型に長い針を突き刺してCO2を入れて固めるんです。水ガラスは長い事置いておくと空気中の二酸化炭素を吸ってゲルと炭酸ナトリウムに戻るので、必要な時に作るほうがいいですね。
シリカゲルは乾燥材や溶媒抽出の吸着材やクロマトグラフの材料として異世界でも欲しいところです。
どちらにしろ異世界で透明なガラスを作るなら、こういった工程を経たガラス材料としての不純物の無い二酸化ケイ素を作る技術は必要になるでしょう。街にまっすぐで透明な窓ガラスや透明なガラスのランタンがあるだけで、その世界にどの程度の化学物質が出回ってるか想像がつきます。板ガラスがあるなら少なくとも高純度のアルカリ塩と酸と錫はあるはずです。
無職転生ではゆがんだ分厚いガラスが存在してますね。つまりアルカリと酸はあるけど、錫を溶かして溶けたガラスを浮かべてまっすぐなガラス板を作る技術はまだないんですね。
そういえばゲート・自衛隊かく戦えり でアニメにはなってませんがノベルの最終あたりで異世界から現代に帰る時に透明なガラスの製法に焦点があたるシーンがあります。ガラスは作れるが透明にはできない、というと江戸初期の日本みたいな感じでしょうか。砂から鉄分が除去できないと鉄イオンのせいで琉球ガラスのような緑色のガラスになってしまいます。ああいうのは世界観にちょっとリアルを感じますね。




