第二十話 砂糖の作り方
砂糖の作り方
①ショ糖いわゆるグラニュー糖の原料に近いものを作る。
北海道なら砂糖大根、沖縄・九州ならサトウキビ。
基本的にはそれらを絞って汁を煮詰めて作っていく。
日本で生産されてる砂糖はサトウキビより砂糖大根のほうが多い。
ソルガム・サトウカエデもあるけど見つけるのは難しそう。
まず原料糖を作る。
サトウキビを絞る。
少し青っぽい絞り汁を布でろ過して細かいゴミや繊維を取りツボに入れる。
絞り汁100㎏に対して100gの水酸化カルシウムを入れ、攪拌し、絞り汁に含まれるアスパラギン酸やグルタミン酸・クエン酸・リンゴ酸などの酸を中和・固化させて沈殿させる。 例えばクエン酸はクエン酸カルシウム となる。クエン酸カルシウムは水にほとんど溶けないので沈む。
クエン酸などの酸をそのままにして加熱して煮詰めるとショ糖が加水分解されて転化糖つまり果糖とブドウ糖になるので結晶化しなくなる。
結晶化しなくてもそれを最後まで水分を飛ばし乾燥させてから砕けば、一応粉末のきび砂糖にはなるけど、グラニュー糖や上白糖とは違う。
加熱しなければ加水分解は起らない。最初に絞り汁を無加工で煮てしまうとショ糖が分解されスクロースの結晶にならず失敗する。
まあとにかく絞り汁に水酸化カルシウムを入れ
反応せずに溶け残った水酸化カルシウムをろ過できるように二酸化炭素(貝殻に酸をかけて作る)を吹き込み
炭酸カルシウムにして他の反応物や不純物と一緒に沈殿させる。
遠心分離して上澄み液を採取。ろ過でもいい。
次に土鍋で煮詰めていく。いや煮詰めるというより温めてゆっくり水分を飛ばす感じ。
表面に浮いてくるアクを取り除きながら弱火の遠火で100℃以下で煮詰めていく。
量が少なければ鍋で湯煎して沸騰させないように水分を飛ばしていく。
高温で加熱すると黒くなるので注意。
糖は170℃以上でカラメル反応が起きる。
水分が無くなると容易に100℃を超えるので注意。
沖縄などの黒糖の黒い色は、糖がカラメル反応を起こしていると思われる。
加熱を続け、ドロッとした糖蜜になってきたら火からおろし放置する。
個体になるまで煮詰めない。ある程度水分が残ってる状態で止め冷ます。
するとしばらくしてツボの中の糖蜜の底にショ糖が結晶として現れる。
結晶が現れるまで時間がかかるので待つ。
これを糖蜜と分離する。
手動の木製遠心分離機があれば最高だけど、高知県の和三盆のように紙で糖蜜を吸いとるのが簡単。
何枚もの紙で砂糖を挟んで重しをかけて数日放置する。
糖蜜は粘性が高いので時間がかかるが液体なので流れていく。
時々紙を新しいものに交換する。
現代で実験でやるならキッチンペーパーよりティッシュのほうが吸い込みが良かった。
スーパーで買ってきた沖縄黒糖から糖蜜を分離し三温糖を作る実験をうちでやってみたけど、
ティッシュで吸うのが一番かな。
紐のついた容器に入れて手でぶん回して遠心分離できないかとやってみたが
回転が足りずかなり難しい。5000回転/分で数分は続けないとダメっぽい。
そのままでも砂糖として使えるけど、ショ糖が大きく結晶化してないから
顕微鏡で見ると透き通った細かい砂のような感じだけど、きれいな結晶ではないし
肉眼で見れば透明なキラキラした感じはしない。
②グラニュー糖・上白糖を作る
まず①で作った原料糖を小さじ1杯だけ別にして置いて、残りを常温の水に溶かす。
ショ糖の溶解度は常温で水100㏄にだいたい200g、90℃まで温めると100㏄に400gぐらいまでいく。
なので間をとって原料糖3に対して水1 糖300gなら水100㏄。
水のままでは全部溶けないので、湯煎で90℃に温め全部溶かす。
全部溶けたところで容器を湯から出して放置。
常温まで冷えたら先ほど取っておいた原料糖を結晶の核として入れ、かき混ぜる。
作っている砂糖が少量なら結晶核も少しでいい。
そのまま放置して結晶を育てる。
数日放置すると温度の低下とともに溶解度が下がった分のショ糖の結晶ができてくる。
工業的には糖蜜液のタンクを減圧して水の沸点を下げ結晶化を促進させるが、ポンプが無いと無理だろう。
蜜と結晶を遠心分離する。
遠心分離機が自作できない場合はやはり紙で蜜を吸いとる。
紙を重ねて砂糖を挟んで重しをかけてしばらく放置。紙を開くと結晶化した砂糖が残っている。
これはショ糖の結晶。この方法では完全に蜜が取れてないので上白糖に近い。
遠心分離できればグラニュー糖となる。
ごく少量でもいいからグラニュー糖が見たいならブンブンゴマ遠心分離機を使えばいい。
ネットで「【遠心分離】人力だけで動く遠心分離機(No. 260)」
https://site.ngk.co.jp/lab/no260/
を見れば参考になるだろう。
紙に吸い込まれた分離した糖蜜も甘いので捨てるのはもったいない。
これらは果糖やブドウ糖なので普通に甘い。
シロップとして使えるので甘いものが貴重な異世界では紙を水に浸してもう一度糖を集めるといいだろう。
ザラメ グラニュー糖 氷砂糖 は結晶の大きさが違うだけで同じ物。
②の精製を繰り返すことで砂糖の純度は上がっていく。
結晶を大きく育てればちょっと感動する。
なお、日本の本州ではサトウキビも砂糖大根も不可能とは言わないが難しい。
https://youtu.be/TD_TnlM6jbw
ネットを探しまわったところ、このBBCの動画が最も砂糖をちゃんと作っている。
濃縮したサトウキビの絞り汁に石灰石から作った石灰乳を入れ沈殿し ろ過してアミノ酸を取り除き
減圧濃縮して遠心分離にかけてる。ただちょっと煮詰めすぎ。結晶を育てるのにもうちょっとゆっくり時間をかけ低温でやったほうが結晶が大きく育つ。
日本の動画だと今のところサトウキビの汁を煮詰めただけで砂糖と言ってる程度のしょぼい動画か、工場の取材動画しかない。
③糖が手に入らない場合のガムシロップの作り方
綿・紙などのセルロースを用意する。
水酸化ナトリウムで洗い脱脂し、蒸留水でよく洗う。
そこに硫酸を加え湯煎で加熱しながら繊維を分解し糖にする。
糖になったあともずっと硫酸に浸すと脱水反応が起きて炭素になってしまう。
硫酸はただの触媒なので減らない。セルロースから水が出るので少し濃度は薄くなる。
綿が溶けた頃合いを見て炭酸カルシウムを少しずつ加え中和する。二酸化炭素の泡を出して硫酸カルシウムが沈殿する。
ろ過で硫酸カルシウムを除去して黒い糖液を得る。
あとは同じように結晶化したいところだが、半分または全部がきっと転化糖になってるので
砂糖の結晶にはならない。
ガムシロップとして使うといい。乾燥させれば一応粉末にはなる。
ブドウ糖なので同じカロリーでショ糖より甘く感じる。
ただし高温で煮ると甘みが減る。
アルコール発酵に使える。
しかしとても割に合わない。果物から果糖を取るほうがいい。
④コメなどのでんぷんからコウジカビを使って糖を作る。
砂糖はできない。甘酒になる。ブドウ糖になるのでかなり甘い。
ただし、現代の特定できてる種麹ならともかく自然界から天然麹カビを採取するのは危険を伴う。
食用にするには覚悟が必要だ。
餅やご飯を用意し放置、カビを発生させる。その中から日本のコウジカビ(アスペルギルス・オリゼー)と思われるカビを採取し別のごはんに移し育てる。黒色や派手な黄色や赤のカラフルなものは避け、白・薄い黄色・深い緑などを選ぶ。日本ではどこにでもいる。
また新しいごはんを用意して冷まし、椿・またはケヤキを燃やした灰をごはんの上にふりかける。
そこに候補のカビをふりかける。
灰はアルカリ性で有害カビは繁殖できずコウジカビだけが増えやすい。(増えやすいだけで絶対じゃない)
増えたコウジカビのついたご飯を乾燥させて種麹とする。
炊いたごはんを容器にいれ外部から菌がはいらないように蓋をして冷まし、荒熱が取れたら
種麹をまいて少し揉んで35℃に保つ。
コウジカビが増えるのでそれを60℃まで温めて保温するとコウジカビが出す酵素がでんぷんを分解し
甘いブドウ糖になる。
いわゆる、甘酒の作り方だけどビタミンB群も発生するので体にはいい。成功していれば。
しかし もしコウジカビ以外のヤバいカビ菌が混じっていればかなり危ない。
もしカビ毒のアフラトキシンが混入していればかなり死亡率が高い。
アフラトキシンは自然界の物質では発がん性No1の物質である。
すぐに死なないところも怖い。半年ぐらいしてから肝臓がんで死ぬのだ。
古米にカビがついて廃棄された事件があったが、あれはそうだったんじゃないかな。
かつて海外で100人ほど死亡する事件が起きてる。どこの国でもかなり規制が強い。
正直、俺から見れば自然界からのカビ菌で甘酒を作るのは
硫酸銅や水酸化ナトリウムや硝酸を扱うよりずっと危険である。