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異世界で役立つ化学物質の作り方  作者: リトマ寿司
17/22

第十七話 アルコール・無水エタノールの作り方

アルコール・無水エタノールの作り方

(日本国内では酒税法で禁止です。実験するなら「飲まないよ」アピールの為にメチルアルコールを数滴入れるといいらしいけど、ばかげた法だと思います)


①まず酒を造る。ブドウがあれば潰して樽に入れて空気が入らないように蓋をして二酸化炭素が抜けるように小さな穴があればOK。ブドウの皮に酵母菌が存在しています。パン用の酵母もレーズンから作りますね。

リンゴでもいいし、砂糖があれば酵母を入れるだけで発酵してアルコールができます。


具体的には(砂糖を使う場合)

まず小さなツボに少しの砂糖とブドウかリンゴの皮を入れる。空気は入れない。

それで発酵させ酵母を増やす。この時点で腐ったら失敗なのでやり直す。

次におおきなツボに水を入れる。水1リッターにつき200gほど砂糖を入れ火にかけ一度沸騰させる。

40℃以下に冷ます。そこに増やした酵母を入れ蓋をする。時々ごくわずかに隙間をあけガス抜きをする。混ぜなくていい。外の空気は入れないほうがいい。数日~1週間で完成するので蒸留に回す。


砂糖が多すぎてもアルコール発酵がある程度まで進むとアルコール濃度が高くなり酵母菌が働かなくなり甘いまま無駄になる。


日本酒はコウジカビが必要なのでちょっと難しいですね。味にこだわる必要がないので米を大根の酵素で分解して糖にしてもいいかもしれない。




農耕が無い原始時代なら日本だとエビヅル・ヤマブドウ・はちみつ・アケビが使えると思います。


くずの根っこ・ゆり根・カタクリの根を掘りだして、潰して水につけてでんぷんを取り出して加熱し、口に含んで唾液で分解し糖にして加熱消毒してから酵母と一緒にツボに入れても酒になると思います。

くちかみ酒はお米でやるものですが、君の名は的に。でんぷんならなんでもOKのはずです。


どうしても糖もでんぷんも発見できない場合は、倒木に生えてるキノコを探し集め、潰して水に入れエキスを抽出します。そして木を細かくおがくずのようにしてから倒木キノコエキスに浸して夏に35度ぐらいで放置すればセルロースが分解して糖になるかもしれません。セルロース(紙)からアルコールを作る実験は何度か動画でみかけましたね。キノコ酵素がどれぐらい働くかは賭けですが。



綿花や紙、水酸化ナトリウムで煮込んで取り出したセルロース・パルプを硫酸で分解して糖を得る方法もある。


75%の濃硫酸にわたや和紙を入れて温めて溶かす。やり過ぎると炭素になる。

綿が適度に溶けたところで炭酸カルシウム、貝殻の粉末とかを入れて中和すると二酸化炭素を出して硫酸カルシウムが沈殿する。それをろ過する。黒っぽい甘い汁が得られる。この黒い色は糖が脱水反応でできた炭素なので活性炭では除去するのが難しい。これを煮詰めて黒い砂糖や水飴にする。この糖を水に溶かしこれに酵母菌を入れれば酒になるだろう。







とにかく酒ができたら蒸留する。水とエタノールは共沸関係になるのでいきなり高濃度アルコールを温度計無しで作るのは至難の業なので何度か蒸留を繰り返し、少しづつ濃度を高めます。

沸騰してきたら火を止め、また沸騰させ火を止め、 みたいな感じで蒸留できればいいですが、ガラス容器が無いので中が確認できない。音で判断できるぐらい何度も練習を重ねる必要があります。直感で79℃を維持できる魔法ありますかね?(エタノールの沸点は72℃ぐらいですが、水と一緒になるとつられて少し上がるし、アルコールが揮発して減った分だけ沸点もあがります)


燃料が無く、外が冷凍庫並みの氷点下ならば、何度か凍らせると水だけが氷るので、氷を取り除いていけばアルコール濃度が上がっていきます。非効率だけど。


で、蒸留のはじめに出てくるアルコールには有害なメチルアルコールが含まれていることがあります。これを捨てなければいけない。果物素材だと含まれるペクチンなどがメチルを作りやすいとか。穀物由来でも微量できるそうなので、蒸留で濃縮されてしまうと体にも影響がでます。量にもよりますが、最初のコップ1杯のアルコールは捨てるべき。メチルとエチルどっちが危険だったっけ?となる人は「メチルは目が散る」と覚えます。失明する恐れがあります。ロシアでは自家製ウォッカで失明などの被害がたまにあるそうです。メチルの沸点64℃ぐらいでエチルアルコール(つまりお酒のエタノール)の沸点は78℃ぐらいなので蒸留の初期にメチルがまず出てくるというわけです。



ある程度アルコール濃度が高くなってきたら塩化カルシウムを入れて蒸留します。塩化カルシウムを入れると蒸留しやすくなります。ですが蒸留による濃度はどんなに頑張っても理論上95%までしか上げられません。

それでなくても未開の地で陶器の手作り蒸留器でやってるので、せいぜい90%まで上げたら上出来ではないでしょうか。





なので次にケミカルドライです。


貝殻を900℃以上でカスカスになるまで焼いて酸化カルシウムを作ります。それを冷ましてから、高濃度アルコールに少しづつ入れていきます。いきなりたくさん入れると危険です。すると熱をだしながら水と反応して水酸化カルシウムとなって水を取り込みます。結果、無水エタノールの完成です。ろ過するか、完全にカルシウムを除去したいならもう一度蒸留します。



硫酸銅でも水を吸えます。

16話で作った水色の硫酸銅水和物の結晶を加熱して水分を分離して白くします。陶器の皿に乗せて下からあぶります。この時650℃を超えると三酸化硫黄ガスが発生するので危険です。もっと低温で色を見ながら加熱し全体が白くなったら火からおろします。酸化カルシウムより低温で作れるのが魅力です。

酸化カルシウムだと七輪がボロボロになるまで空気送って高温を作らないといけないし時間も燃料もかかるので。

90%以上に濃度を高めたエタノール水溶液に白い無水硫酸銅粉末を入れます。すると硫酸銅はエタノールは吸いませんが水分は吸うので無水エタノールになります。一晩置いて硫酸銅が水色の水和物になったらもう一度100℃以下で蒸留してアルコールだけを集めます。硫酸銅は100℃ぐらいじゃ熱分解しません。



灰の上澄み液を加熱で水を飛ばし炭酸カリウムにして50%以上に蒸留できたアルコールにドバドバ入れる。炭酸カリウム(個体)を飽和するまで入れて、しばらく置いておくと、液が二層に分かれるので上層だけを掬い取る方法もあり。




金属マグネシウム粉末を入れても水と反応して無水エタノールになりますが、電気のない異世界で金属マグネシウムを得るのは難しいでしょう。





現代で手軽にやろうとすると、業務スーパーのアルコール消毒液にホームセンターの凍結防止剤の塩化カルシウムを入れて温度計を見ながら80℃あたりを維持し、じっくり蒸留して、出来上がった物に キャンプ用品のマグネシウムファイヤースターターを削って粉にして中に入れちゃえば作れますが違法です。どうも蒸留自体が違法とか風の噂で聞きましたが調べたわけじゃないです。まあでもやらないように。

結局Amazonで無水アルコールを買うほうが安いですね。ちなみに業務用の安いアルコール消毒液などには飲めないように添加物が入ってる場合があります。絶対に飲まないように。




無水エタノールは「水に溶けるがアルコールに溶けない物質」を取り出すのに使えます。例えばエビヅルやヤマブドウの絞り汁に無水アルコールを加えると酒石酸が析出します。酢酸カルシウムを作る時も使います。炎色反応でも無色の炎を作るのに欲しいですね。消毒液も作れます。消毒液は無水じゃなく70~80%ぐらいのほうがいいのですが、一度無水を作らないと70%を作れてるのかどうか判らないじゃないですか。

またデザートの香料バニラや石鹸の香料バラの花の香りを抽出するのにも使います。異世界物でプリンを作って美味そうに食ってるシーンとか見ると、それバニラ無し?卵臭くない?って感じです。


異世界暮らしには絶対必要です。


追記 2024.3/23

稲作はしているがダイコンなどのアミラーゼが見つからないので糖化できない、口神酒は嫌だ、という場合は発芽玄米でアミラーゼを作れる。これは麦芽と同じだ。ビールを作るのに麦芽のアミラーゼを使ってでんぷんを糖に変えてそれを酵母で発酵するが、玄米でも同じ事ができる。生きてる大麦・小麦・玄米のどれかを水にひたしておくと数日で発芽する。芽が1~2cmになった所で酵素を殺さないように40℃以下で低温乾燥し、すり鉢ですって粉にする。それを酵素粉末として使う。なぜ発芽にアミラーゼがあるのか。タネとしての米が成長の為に蓄えたでんぷんを糖に変えて成長のエネルギーにする為にアミラーゼが必要だからだ。米や麦のおかゆを作り40℃にして酵素粉末を入れるとでんぷんのとろっとした感じが急にさらさらになりだんだん甘くなってくる。こうなれば酒の元として使えるので酵母菌で発酵していけばアルコールになる。天然のコウジカビは素人が触ると危険なので、でんぷんの糖化実験をするなら玄米発芽が一番手っ取り早いのではないだろうか。スーパーで売ってる玄米でも普通に発芽する。毎年メダカ桶に稲を植える為に大阪府河内長野のくろまろの郷という農産物を売ってる所で玄米をすこし買う。米1㎏から玄米をその場で精米して売ってくれるのだが一握りだけ玄米が欲しいと言えば少しだけ玄米のままくれる。もちろん1㎏全部玄米でくれと言ってもいい。脱穀されているのに水に浸せば芽を出し普通に稲として成長する。

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