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第三話『 闇に消える 』



『魔獣詩歌断片集』 曰く──、


 大陸西部がまだいくつもの自治領や王国にわかれていた頃、ある山間やまあいの原野で異変が起きた。


 初期の開拓者がよく通る位置だったが、石ころだらけの荒れ野に木立も水場もろくになく、埃っぽく、此処にすもうというものはなかった。しかし、彼方此方の入植が進み、発展しだすと様子は少し変わった。


 緑が乏しくひらけた荒地は、この地域の開拓地をつなげる交通の要所になった。


 よほどの事がなければ足早に通り抜けるだけだが、乾いたかたい土地は安全で安心なルートだった。大きな魔獣や害賊はいつかず、たまにあらわれても離れた場所から危険に気づくとこができた。

 


 ところがある時から荒れ野で人がすがたを消しはじめた。

 屍体は見つからず、一緒にいた馬やロバさえもどらない。失踪は増えつづけ、


『人食いの荒れ野』


  ── とわ忌まわしい異名がつき、隣接する土地の住民まで怯えはじめた。

 見えない闇の死霊が荒れ野をさまよい、人を喰う、と噂が流れ。ついに大きな商隊がハンターの護衛もろとも消え失せると、地元の有力者は『人食いの荒れ野』へ出入りする道を閉ざした。

 死霊の災いと信じてのことだ。



 このとき、ある村で、商隊の消滅騒動で足止めされていた旅の薬師が名乗りを上げた。


 ── 人や馬が跡形なく荒れ野で消える。

 ── 危険な魔獣などは目撃されず、殺風景な風景は異変前後、変わり無い。


 黒衣の薬師は『仮説』で不思議を説明してみせ、村のハンターたちはそれを信じて『人食いの荒れ野』に赴いた。

 そして、おどろくほど巧みに埋め戻された土穴をみつけ、いつの間にか荒野の地下にすみついていた巨大モグラの魔獣の群れを討ち果たした。


 薬師曰く──、

 ずっと北の雪深い土地には、さらに巨大で凶暴なモグラの魔獣がいて、人々に恐れられていた。そいつは、岩よりかたい氷雪や凍土でも易々とトンネルを掘った。

 荒れ野のモグラ魔獣は、何かの理由で南下した小型の亜種あるいは変種。地上の人間を奇襲し、地下トンネルへ引き込む狩りをして、地上に痕跡を残さず、穴さえ偽装し(埋めもどし)、ふだんの潜伏を徹底する巧妙さを進化させていた。


 ── モグラ魔獣を討伐したハンターたちは地元の英雄になった。かれらのために、魔獣の美しい毛皮は帽子や壁飾りにされた。


 旅の薬師はいつの間にが姿を消していて、その後の消息は不明である。


* 登場した『ジャイアント・モウル』は、『アバランチモウル // シルバーヘッド・ワンダラー 』の表題の「モンスターコレクション」の記事を参照。

→ https://ncode.syosetu.com/n3634gg/10/



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