表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

第十七話 『三匹のオークと狼の城』

 

『 三匹のオークと狼の城 』



『魔獣詩歌断片集』 曰く──、


 大陸西部の戦乱の時代、ある小国の王城をおそるべき三匹のオークが襲った。


 朝早く、大きな影が三つ。

 どこかからかおそろしい速さで飛んで来ると、城郭都市の壁をやすやすとこえ、市街地の家々の屋根をかすめて王城の奥へ飛び込んだ。

 降り立ったのは園庭…… 転げまわる着地、墜落だったともいう。



 押し入ったのはオークの上位種だった。


 赤毛の獣の頭、肉厚のからだ。三匹ともに古代の飛行魔術具を身につけていた。城に降り立つと、それぞれの得意で城兵相手に暴れまわった。


 赤毛の一匹はオーク・シャーマン。

 不思議な模様のマントをまとい、まわりへ見えない大型ハンマーのような暴風を放った。

 やり方は風変わりで、杖は持たず。マントの内側に小さな麦わら人形を何十と吊り下げ、人形を握って念じると、わらクズを散らして弾けて魔法が発動した。


 もう一匹の赤毛のオークは、剛力無双の巨漢だ。

 長い丸太を一本、長槍のようにかかえて城に乗り込み、たくましい腕で軽々と振りまわして、兵士を木っ端のように薙ぎ払った。


 三匹目のオークは、石斧使いの戦士だった。

 もっとも若く、もっとも巧みな身のこなしで、煉瓦色の大きな斧刃は鋭く素早く。手練れの騎士の剣もさばき、盾を砕いてみせた。




 この国の王は「狼」の異名をもつ武勇のものだったが、このとき他国へ親善訪問中だった。


 オークたちは王の留守を襲い、不意をついて、玉座のある城館にまで踏み込んだが攻勢はそこまで。城の武人たちは魔獣狩りの玄人ぞろい。一時の混乱を脱すると、たちまちオークたちを押し返し、城下から集まる騎士や兵士やハンターたちも加勢して園庭に追いつめた。


 三匹のオークは、最期は満身創痍で飛び立ち、西空にすがたを消した。



 **



 狼王は帰国後、赤毛のオークを捜し出そうとした。懸賞金すらかけた。


 三匹はどこから来たのか。空を飛ぶ魔術具をどこで手に入れたのか。そもそも、なんのために城に殴り込んで来たのか ── 行方を知る手がかりはみつからず、結局、すべて謎となった。


 狼王は事件の後、戦場で精彩を欠くようになり。わずか五年後、呆気なその王国は滅んだ。



「紅の豚」あるいは「三匹の豚人」。


 くだんの小王国のあった土地の言い回しで、突然、思いもよらない災難に襲われることを指す。


 今も現地に残る、事件のわずかな痕跡である。


『三匹の子豚』のまじゅう童話化です。


攻守は逆で、留守の家(城)を三匹で襲っていますが。


 空を飛ばしたのは、飛べないオークはただのオークだから。

(意味不明)



☆ 例えばこんな裏設定が?


 狼王はもともと小さな傭兵団の長でしたが、オーク大侵攻のおり、オーク王種が樹海から持ち出した古代の「とある遺物(飛行デバイスではない)」を奪います。一代で国を興したのは秘密裏にその力をつかったから。


 一方、三匹のオークはオーク王の遺児(三兄弟)。


 狼王は外遊中、大事な「古代の遺物」を城の庭園の地下に隠し、裏仕事の部下に監視までさせますが、三匹は人目を無視して城に押し入り、力づくで強奪してしまいました。

(……力ある遺物がなんなのか未設定)


 さらに事件の背後には「ナゾの女」がいて。古代の遺物の濫用を阻止するため、三匹の王城襲撃に手を貸します。狼王の外交日程、城の見取図を手に入れる情報支援、飛行の魔術具の調達と調整です………

(小説「蜘蛛の意吐」の、とあるキャラクターの過去につながります)


 **


 もちろん、先の裏設定は「ひとつの例」です。

 本文をベースにして、まったく違う三匹のオークの素性、襲撃の動機、狼王と王城の秘密も考えられます


 **


[さらに蛇足]

…… 歴史の闇を知ってか知らずか。

『三匹の豚と、狼王の城』なる童話が、後日、世に出た。


 筆者は不明。赤毛の三匹の豚が、邪悪な狼が平和な森につくった城を、麦わらと丸太とレンガを武器にして攻め落とす話。

 この童話の狼王は、城を無くしたあと、野山をさまよう痩せ狼にもどってしまうのです。





NOMARさまより。城を無くした王の後日談を頂戴しました。


( ̄▽ ̄;) そして、後の狼王。


 その後、狼王は酒に溺れるようになる。一方で光の神々教会に通い熱心に祈るようにも。


『禁忌に触れる者、破滅を招く、という光の神の教えは真実だった。今もあのときの声が耳の奥に残って消えない』


 晩年、狼王が残したのは光の神の使徒を怖れながら讃える言葉だった。



… 力づくで奪取する動きとは別に。

狼王の心に囁きかけて、遺産を手放すように仕向ける「光の神(自称?)」が暗躍していた! その正体と真意は⁉︎


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者:NOMAR ‬様

蜘蛛の意吐
あなたの為ならドラゴンも食い殺すの
ジャンル異世界恋愛小説(完結済み)。‬『今日の一冊・第66回』にて紹介! シナリオソースの世界です。



蜘蛛の意吐
欄外スピンアウト作品集
後日談を中心に過去話、パロディ、サブキャラクターたちの短編などを、順不同で不定期掲載。100話突破。



火炎嬢のいらだち
同じ世界観の別主人の外伝異伝です。ジャンル:ハイファンタジー(連載中)、魔術令嬢、ハンターたちと魔獣の森へ!


少女に恋した白毛龍
異世界恋愛、ネット小説大賞八 一次通過。



くいしんぼウサギと格好をつけたがる神官
ハイファンタジー。イメージソング?あり。



闇を落とした毒の魔女
ハイファンタジー(ダーク)、少年主人公、グロ描写あり。






K John・Smith (自作)

K John・Smithのモンスターコレクション
ショートストーリーやバルーンアートの写真あります(… いくつかはモンスターの人相が悪いデス)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ