第十一話 『 鬼火 』
「 鬼火 」
『魔獣詩歌断片集』 曰く──、
大陸西部にまだ盾の三国がなく、原始林と原野ばかりだったころ、ビルゲンの山にときおりあやしい火の玉があらわれた。
ひとつひとつは、ランタンほどの冷たく光る玉だ。
夜に数百数千、どこからともなくあらわれると、ふわふわと群れて山頂にかかったり、山すそを彷徨い、朝には、どこかへいなくなってしまう。
ビルゲンの山を遠目にみるうちは、驚き、あやしむだけだったが、人里がつくられて近くに道が通されると、むごたらしく殺されるものが出るようになった。
数ヶ月や数年おきだが、火の玉の群れが山にわく夜、家や宿に帰らなかった住民や旅人が朝に死体でみつかる。顔かたちがわからないくらいに肌や肉がかき削られていて、なかには、夜道や野原を逃げ回って、血や薄い肉片をまき散らして死んだものもいた。
そうしてもがいた犠牲者には、ときおり、見たことのないほど極薄で、細い、金属のリボンがまとわりついていた。
近隣の集落は災いを恐れた。夜、奇妙な明かりが山に灯ると外出を避けたが、不注意なものやよそから来た旅人は時折、命を落すのだった。
ある年の夜、火の玉の群れが、まだ夜の早い時刻に散り散りになって消えることがあった。そして、二度と出なくなった。
理由はわからない。
異変の翌朝、地元の男が道端で寝ているところをみつかり、どうやら火の玉に出くわして何かしたらしい、と、なったが、男は夜の出来事をろくに覚えていなかった。ひどく酔っていたのだ。
── 夜中、すこし、呑みすぎて道で休んでいたら、暗くなってからヘンなやつらが集まって来て、ロレツの回らないヘンな口調でやいのやいのと言ってきた。
あまりにもうるさかったので、ひとこと怒鳴り返したら、急に静かになってどこかに行ってしまったそうだ。
肝心の『言われたこと』と『言い返したこと』はカケラも思い出せない。そもそも相手を見ていない。つまり、わけがわからなかった。
ひとびとは首をひねるしかなかったが、なんにせよ、災いがもう起きないのならそれでよしとなった。
のちの時代──
ビルゲンの山に未発掘の古代遺跡がある、と噂になり。あやしい者たちが集まってちょっとした騒動になったが、この出来事はまた別の逸話である。
[ どこにも記録されなかった、ある夜の遭遇 ]
Vi!!!…Vi!!!…Vi!!!…
Vi!!!…Vi!!!…Vi!!!…
Vi!!!…Vi!!!…Vi!!!…
Vi!!!…Vi!!!…Vi!!!…
*??
「噛膩Å瞢ィれ、蜥£兊蝴。靛靦j禰ィ歯シ迺緇ュ」
〈 顔認証─ 不適合。敵味方識別信号─ 発信無し 〉
「瞢尸踠q靛靦j禰。繝ゥ縺韶後≠シ縺。
セ黽霎シ縺縺セ膩Å瞢ィれ蜥?蝴縺ョ谿窠fv埜梵∽′回堡抛ゐ圖メ°抛瞢尸区g霎罔濟シ縺≦縺サ釶址軼」
〈 侵入者に告げる。直ちに退去せよ。
従わない場合、思考霊珠ガーディアンは第七等級・対人殺傷兵器を行使して侵入者を終了させる。 〉
酔っ払い
「んぁあ″、なんだってぇ?? 」
「へろへろいっても、わかんねぇよ。だれだおめぇ」
*??
「瞢尸踠q靛靦j禰。繝ゥ縺韶後≠シ縺。
セ黽霎シ縺縺セ膩Å瞢ィれ蜥?蝴縺ョ谿窠fv埜梵∽′回堡抛ゐ圖メ°抛瞢尸区g霎罔濟シ縺≦縺サ釶址軼」
〈 侵入者に告げる。直ちに退去せよ。
従わない場合、思考霊珠ガーディアンは第七等級・対人殺傷兵器を行使して侵入者を終了させる。 〉
酔っ払い
「げッふうぅぅゥ…っ」
「だァからぁ。 もーっと、ちゃあんとしゃべれって」
*??
「韶涊ョ奎ヱ痲麻2且:凢メメメ狃狃2尸洤」
〈 対象は音声でのみ反応 ── 意味は不明 〉
「嚮ゥ縺韶後≠シヌ。譬喭セ膩Å瞢蜥¿蠓蝴蠍∩爹夛糺τ靦汴澠蠅蝿蛆戊ン褹」
〈 直ちに退去せよ。音声鍵は《特定緊急暗号》にのみ認められている 〉
酔っ払い
「おめー、なに言ってんだぁ、あ″ぁ……こうか、“ ま們のぉ膩れ”?」
*??
「戈舛谿、坨匳#瞢雰」
〈 発音を正確にせよ 〉
酔っ払い
「はえぇよ、くそー、この──。むずかしいなぁ、おれ、鳥真似は得意なんだけどよー」
「“ 譬ょΞ跬”?」「“ 絜藺むYピ”⁈」
*??
「── ≠吧把爬趺ャ叭、埠桴桴サ≡鴞疾ミ邊区舳区莵区…」
〈 ── 対人ブレード加速、カウントダウン、5、4、3 、…〉
(( ( キキュキュぅぅううううううう! ) ))
酔っ払い
「こうか?… kdひっくぅ………んん。
…… 櫑檑鐳!!」
〈〈 バルス!!〉〉
*??
「………❗️」
*??
「琶谿♣︎瞢罒櫑檑鐳膩忞踠q。靛諼广靦j禰霎シ縺昰窠ττ繧ョ蜻錆縺韶份玢E繧縺鰻繝¿呀枒迓訝衙是是是是。」
〈最上位 緊急暗号指令を受諾。全ユニットは直ちに帰投し、所定施設に於いて自壊プロトコルを実行します〉
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*
酔っ払い
「……んがぁ、あれ?」
「なんだぁ? てきとーに怒鳴ってやったら逃げやがった。
うははははは!
…………………………… ち。」
「明かりはおいていけよ。気がきかねえな、道がワカンねぇ」
[ どこか遠くの地下にて ]
ちゅどーん!ぱーん! ぱんぱん(メキッ)、ぱーん………
── × ── × ──
* 登場した古代ロボット『ウィル・オー・ウィスプ (鬼火)』は、「モンスターコレクション」の記事を参照。
→ https://ncode.syosetu.com/n3634gg/24/