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番外編:ふらっと遊びに行く先がどこかの星かよ

移住した先の話をとのご希望を頂いたので、ベリルの旦那を出しました。ひとまず2話の番外編追加です。


ベリルの「目を開けていいわよ」という声でゆるゆると瞼を上げた異世界の者たちは、目の前の景色に驚愕した。

おそらく王城のテラスだろう場所に降り立った彼らの前には、正面の空には揺らめくオーロラ、右上には浮いている島とその島から流れ落ちる滝、眼下にはドラゴンが何匹ものそのそと歩いていて、左側に見える山の辺りには小型のドラゴン・・・みたいなのがそこらじゅうを飛んでいる。

目を凝らしてよく見ると、ドラゴンに混じって魔女っぽいのが箒で飛んでいた。


「凄い・・・まるでおとぎ話みたいだ」


ショールの弟が、テラスに身を乗り出す妹を抑えながら思わず呟いた。


「ふふ、ターフェアライト王国へようこそ。我が国は綺麗でしょう?」


「ええ、凄く綺麗です!凄い!これからこんな素敵な国に住めるなんて!」


城では暗い顔をしていた侍女は光を取り戻した瞳をキラキラと輝かせ、凄い!綺麗!と繰り返した。


「ドラゴン・・・もしかしたら私もいつかは竜騎士に・・・」


騎士が少年のような顔で憧れだったのだろう言葉を零す。


ベリルが微笑ましく見守っていると、後ろから愛しい声がした。


「べリィ」


ベリルがその声に勢いよく振り返ると、すぐに愛しい声の持ち主の腕にすっぽりと抱きしめられた。

ベリルの最愛の夫であり、魔王であり、国王であるユークレース・ターフェアライト。


「ユーク」


今朝もいつも通り、目覚めのキスを交わしたばかりの夫だが、やはり異世界というこことは違う次元へ行っていた影響なのか、長く夫に会っていなかったような感覚になり、ベリルは夫の顔を見上げて見てほっと息を吐いた。


その様子を見ていた人間の面々は、ターフェアライトに着いて目を開けた瞬間と同じに、いや、さらに上回って驚愕していた。

ベリルもそれはもう見つめ続けたら目が潰れそうな美貌だが、ベリルにユークと呼ばれた、ターフェアライトの国王であろう魔族の男性は、男でも無意識に告ってしまいそうな色気ダダ漏れ、なのに顔の作りは酷く繊細で、儚げにも見えて。

ユークレースの髪は青いような銀色なような、不思議な髪色で、長さは腰あたりまであるが纏めてはいないため、サラサラと風に揺れて煌めいている。

そしてベリルをそれはそれは愛しげに見つめる瞳も、白銀に濃い青を一滴一滴注意深く垂らしたような繊細な色合いで、髪色同様、ゆらゆらと色が変わっている。

神様が一体何年かけたらこんな美形生み出せるんだ?という美丈夫だった。

そんな規格外の美貌の2人が抱きしめあって微笑み合う様は、もうなんと言うか、神々しくてご馳走様です!な感じだった。

短時間とはいえ、ベリルで耐性が出来ていなかったら、多分半数は倒れていたかもしれない。


「べリィ、異世界に行ってる間、そんなに寂しかったのかい?」


ベリルの耳にだけ聞こえるような蕩けた声がした。

ベリルが背の高い夫を上目で見つめて「バレてましたの?」と言い、白い肌を少し赤く染めて顔を伏せる。


ようやく抱擁を解き、人間達の方に視線を向けたユークレースが、ベリルの腰を抱き寄せて人間達に歩み寄った。


「放ったらかしてしまってすまない。私はターフェアライトの王を務めているユークレース・ターフェアライト。ベリルの夫だ。君達が我が国に来ることになった経緯はだいたい把握している。とりあえず城に君達の部屋を用意しておいたから、案内させるよ。夕食が出来たら呼びに行かせる。それまでは休んでくれ」


「ありがとうユーク。皆さん、何か必要な物があればあとで教えてくださいな。ではまた夕食でお会い致しましょう」


ベリルとユークレースはそう言うと、人間達に笑顔を向けてから背を向け、ベリルと共に城へと入って行った。


美形の笑顔は凶器である。


ユークレースに部屋の案内を指示されていた魔族の男性一人と女性一人が、人間達をそれぞれの部屋へ案内したのだが、笑顔にやられた人間達が我に返ったのは、夕食が準備出来たという知らせを貰ってテーブルに着いた時だった。




「改めて、ターフェアライトへようこそ、人間諸君。いや、魔族の子孫も居るようだね。さぁ、歓迎の食事を楽しんでくれ」


ながーーーーいテーブルの上座に座るユークレースが給仕に食事の開始を告げた。

次々と運ばれてくる料理は、盛り付けだけでも物凄く豪華で見た目は人間のと変わらない。


「大丈夫よ、ここに並ぶ料理は人間でも問題なく食べれますわ」


あまりの豪華さに目が点になっている人間達に、くすくすと笑いながらベリルが伝える。

すると我に返ったショールが、


「あっ、いえ!そのような疑いは持っておりません!ただあまりの豪華さに驚いてしまいまして」


ショールの弁明に、他の7人もこくこくと首を縦に振って同意を示した。


そこからは和やかに食事が進み、話題は件の『聖女召喚』になった。


「ベリルから聞いたのだけど、君たちのいた星はすでに脅威も無いのに召喚を続けているんだって?」


ユークレースの問いかけに、ショールがフォークを置いて答えた。


「はい。およそ100年ほど前に魔族は全て駆逐されたので、私が生まれた時には既に脅威はなくなっていたのですが、召喚は続けられておりました・・・あっ、すみません!ここは魔族の国なのにこんな事を・・・!」


ショールが青い顔で立ち上がって頭を下げようとした瞬間、ユークレースがひょいっと人差し指を上から下へと動かした。

するとショールの体が少し浮き、ショールの意志を無視して体が勝手に椅子に座り直した。


ショールはびっくりして「へっ?」と目を瞬かせている。


「謝る必要は無いよ。魔族にも色々いるが、君たちの星にいた魔族は人間を襲っていたのだろう?それならば戦うのは道理。生き残った方が正義となるのは当たり前の事だよ。それにしても・・・ふむ」


「ユーク?どうされましたの?」


考える素振りをするユークレースに、ベリルが首を傾げた。


「いや、100年前と言うのが気になってね。べリィ、100年前の大移住を覚えているかい?」


「ええ、もちろんよ。ユークがお忍びでふらっと遊びに行った時に、どこかの星から魔族を大勢移住させたときでしょう?あら・・・もしかしてその星が?」


「そうかもしれない。星そのものには興味が無くて、あまり覚えていないけれどね」


ショール達は『ふらっと遊びに行く先がどこかの星かよ』とツッコミたいのを抑えながら、自分達の産まれた星の魔族が消えた理由が、聖女兼勇者兼精霊の愛し子のお陰では無かった可能性に驚き、耳を澄ませた。


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