03.王妃様って意味わかりますかー?
最後まで書きあがってるので、誤字確認次第アップしていきます。4話で完結します。
聖女や勇者は生まれた時から、色々な世界に多くいる神々の誰かから守護や加護を授かっているが、普段その神の存在などふんわりしてて、「守られてるかもな〜」程度でほぼ認識できないものだ。
しかし精霊の愛し子は別。
常に精霊が何匹も愛し子に寄り添い、愛し子の魔力を糧に精霊は力を増し、増した力でまた愛し子を全力で守る。
愛し子にかすり傷でも負わせると、精霊の怒りを買うのだ。
なのに殺したとなればもう、ご愁傷さまとしか言えない。
「はい、今はその国は地図に存在しません」
「まぁ、そうよね。それで、何故まだ聖女召喚をしてるのかしら」
「魔族が滅びた後、この世界は聖女を必要としなくなり、各国が聖女召喚をしなくなったのですが、この星を創りたもうた神々は、今まで聖女が召喚された時に祝福や加護をかなり多く与えておられたようで、そのお零れとでもいいますか、聖女様がおられることで国が繁栄していたことに気付いた国が出てきたのです」
「・・・ふーん」
「それで、その繁栄を取り戻すために聖女召喚を再開したのだそうです。しかし危機的状況でもないので、本当に王家が娶る為でしかありません」
「今までそれで文句を言う方は居られなかったのか疑問なのだけれど?それに、そんな理由で召喚して、神々は加護や祝福を与えるのかしら」
「今回ベリル王妃様を畏れ多くも召喚させて頂くまでは、元いた世界では所謂平民階級の方ばかりだったので、さほど苦情はありませんでしたが・・・やはり中には既婚の方もおられて、王家に嫁ぐのを断った方や、相性が壊滅的に合わなくて離縁、中には孤児だった為か一般常識が無い状態から王太子妃にされかけて猛反発して婚姻を結ばなかった聖女様や、王子側に問題があったりで離縁など、様々ありました。それでも魔族がいた間はたしかに国は繁栄しておりました・・・が、私は昨今では多大な加護や祝福は与えられていないのでは、と感じております」
「なるほど、それでそこのタコはわたくしに求婚したと」
「その通りさ!僕の聖女!」
「黙れと言っておろうが!この愚息めが!」
なにやら喚いているが、ベリルはそちらに視線すら向けない。
「僕の聖女!ベリル!」
タコがベリルを呼び捨てにした瞬間、それまでにこにことチーズケーキの3個目を食べていたショールが立ち上がった。
そして床に固定されたタコの前にしゃがんで顔を覗き込む。
「殿下、私達の話聞いてたんですよね?」
「あ?ああ、聞いていたとも。それよりショール、貴様僕のベリルとなに親しくしてグフッ」
ベリルにはショールの背中しか見えない為、何が起こったのかは分からなかったが、ショールが主でもあるタコ王太子に何か物理的にやったらしい。
「殿下、ここに居られる方は一国の王妃様であらせられます。貴方のようなタコが軽々しく呼び捨てにしていい方ではございません。それに、僕の僕のと喚いておられますが、王妃様です。王妃様って意味わかりますかー?王妃様というのは国王様の伴侶の事ですよー?もうご結婚されてるんですよー?わかりますかー?」
「なっ!ショール、貴様、王太子であるカーネリアンになんと言う口の利き方じゃ!誰かこやつを牢に連れてゆけ!おい!そこの騎士!聞こえておるだろ!」
床に固定されたコゲは顔半分が氷漬けの為、近くに待機していた騎士になんとか視線だけ向けるが、騎士は気付かぬ振りをしている。
どうやらコゲは国王としては慕われていないようだ。
ベリルだってもしこんなのに嫁げと言われたら嫌だ。
「でもでも!もうベリルの世界に戻れないんだから僕が娶るべきだろ!」
「そうだぞ!カーネリアンがダメなら我でいいではないか!」
「はぁ。陛下、殿下、少しは自分達のおツムの弱さに気付いてくださいよ。貴方がた程度の人間じゃ、ベリル王妃様の視界にも入りませんよ。現に、陛下は声掛けもノックもなく女性の部屋に入るわ、王妃様と聞いても呼び捨てにするわ、殿下も名前を聞きもせず求婚するわ、所有物の如く呼び捨てにするわ・・・そもそもベリル王妃様は殿下とは一言も会話されてないじゃないですか」
そう、タコが部屋に来てからベリルは一言もタコの言葉に返していない。
ショールから聞いて名前は分かったが、未だに自ら名乗りもしないタコとなど、話す必要はない。
それにしてもと、ベリルは最初対面した時とだいぶ違う態度のショールを眺め「紅茶にお酒でも入ってたのかしら?」と、バラの紅茶の入っているカップの香りを確かめたが、カップからはバラの匂いしかしない。
ショールのカップは2杯目からコーヒーだったが、もしやカフェインでテンション上がる体質なのかしら、と呑気に考えていた。
「ベリル王妃様、お待たせして申し訳ありませんでした」
ふいに、タコを罵るのに飽きたのか、ショールが元の椅子に戻ってきた。
「あら、もうよろしいの?」
「はい、とりあえずはスッキリしました!」
たしかにショールは清々しい顔をしている。
が、こんなにぶちまけてしまって、今後はどうするのだろうか?とベリルは少しショールが心配になった。
「ねぇショール、あなたこの国・・・というか、この星に未練はあるかしら?」
ベリルの問いかけに、ショールは一瞬きょとんとした。