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冴えない(自主規制)の使い方

作者: mange

「ドボボボボボボ!」

失敬、俺はいま脱糞をしている。脱糞ing。否、「脱」が動詞に当たるなら「脱ing糞」とすべきだろうか。都内某所、昼からイチローでもサブローでもないラーメン屋に入ったのが間違いだった。「あぁやべえ、うんこしてたら講義遅れちまうよ」。「うんこ漢字ドリル」にこの文採用してくれないかな。

ふぅ…。褐色の固体を排出しつつ、白濁の液体を排出するときと同様の嘆息を漏らす。嗚呼、清々しき哉。「Imagine all the people living life in peace」。世界は平和だ。いまの俺には白いハトが見えるぞ、飛蚊症治っちゃったかな笑。ちなみにジョン・レノンは殺されました。やっぱ平和じゃねえわ、ホンマクソ。糞糞糞。


さぁてそろそろ講義室に着くところで自己紹介をしよう。俺は糞しかしない糞みたいな糞そのものな大学生。Thunderが多いと名高い三田さんだの大学に通っている。兵庫にはマジで三田さんだ市があるらしいっすね、やっぱ雷多いんかな。気づいたらもう三年だが、糞の出し方以外身についていない。いや、糞は我が身から離れるわけですけどね。交尾がらみで不祥事の多い大学にいながら、未だに童貞。「類は友を呼ぶ」とはよく言ったもんで、俺の友人もみんな”極まった”ヤツだったんだけど、最近そいつらが「あっち側」にイっちゃったんですわ。ちょっとこりゃ悲しいなってことで最近は出会いを求めて三千里、いろいろ活動しはじめた。「ヤラハタ越えたしいっそ魔法使い目指しちゃうか~~ww」なんて桃園の誓いを交わしたのが懐かしい。男は愚息に素直だからな、素直に射精しちまうってこった。


早漏(だと思われる)でありながら遅刻。さすがに申し訳ないということでそっとドアを開けて教室に入る。日本人たるもの、遠慮は基本のキ。社会の中じゃ健常者を演じるが吉だ。キチは狂。狂は凶。ゆえにキチは凶。君たち、三段論法くらいは知っておくんだぞ。大人数講義、空席の検索条件は2つ。「隣にをんながいる」席の中で「なるべく後ろ」のものを探す。窓側「16A」の席に陣取る。16Bのをんなはおそらく1年だろう、真面目にノートを取ってやがる。グースカグーグー。寝てたら講義が終わったらしい。「出会い厨」はどんなチャンスも見逃さない。


「すみません、ちょっといいですか?」

まずは敬語。話過ぎない。基本のキ。

「えーと、なんですか?」

「俺この講義サボりすぎてて今日初めて出たんすけど、よかったらノート撮らせてもらえないかなって」

ちょっとくだけた感を出す。

「字汚いんですけど、それでもよければ…」

「マジ!超助かる!ありがとう!」

大袈裟に喜びながらフランクさマシマシ。ノートをスマホに収めながら話を続ける。

「いま何年生?」

「1年です」

「マジか、ちなみに俺何年に見える?」

「ん~、2年生?」

「実はね、3年なってもこの科目取らなきゃいけない可哀想なヤツがいてね、俺っていうんだけど」

「(苦笑)」

「そいやサークルとかどう?」

「一応文芸サークルに入ってます」

「なんで文芸サークル?」

「私、運動とかニガテで。パリピみたいなノリも得意じゃなくて」

「文芸部だと飲み会とかも少ない?」

「そうですね、新歓コンパくらいです、行ったの」

「まあそのほうがいいよ。よし、撮り終わった。ありがとう!」

「いえいえ」

ノートをしまう彼女にひとこと。

「そいや名前なんて言うの?」

「中野です」

「じゃあ中野先生だ。中野先生、LINE交換しませんか?これからも講義のことでお世話になりたいので…。先生、よろしくお願いします!」

「(苦笑)いいですよ。先輩はなんていうんですか?」

「マジ!ありがてえ。俺は日野。これからよろしく!」

「はい!こちらこそ」

無事にLINE交換之儀を終えた。読者のそこの君、「なんやコイツ、陰キャちゃうんけ?」とか思ってるそこのキミ!女子の前という条件でのみ吃音を発症してた、数か月前の俺。俺は、生まれ変わったんだ。長い道のりだったぜ。とにもかくにも、会話の内容をあらかじめ用意しとくことだ。そしてこれを脳死でいえるようにする。私文の受験勉強で鍛えたクソクソクソクソ暗記脳がここで役に立った。1600年以降の世界史の出来事を1年刻みで覚えた俺をナメんなよ。あとは声質。ちょっと低めを心掛ける。そんで、髪型・服装とか整える。つっても千円カットで十分だし、服装はユニクロの店員に訊きゃいい。これをクリアすりゃなんとかなる。まあ、第一関門はな。


中野っちをメシに誘う。

「今日はマジで助かった!ありがとう!」

とりあえず軽い内容を送っておく。がっつくのはキモイからな。

「いえいえ!お話楽しかったですよ笑。お互い単位頑張りましょう!」

礼儀正しい内容。ええ子や。ちょいとジャブ入れてみるか。

「中野っち、普段昼飯どこで食べてるの?食堂?」

「そうですね。それかお弁当持ってくるか買うか、ですかね」

「最近はコンビニ弁当も旨いからなあ。よかったらこんど一緒に昼飯食わない?」

「いいですよー。場所とかどうします?」

きたきたきた。

「来週の今日の3限前でどう?弁当買ってテキトーに場所見つけて食おう。お礼ってことで弁当代は俺が出すよ。てか出させてください笑」

「わかりました笑。来週はよろしくお願いしますね」


こうしてメシにも誘い出せたわけだが、果たして日野は中野っちを落とせるのか!?続きはウェブで!


…といいたいところだが、諸君には一応伝えておこう。結論からいえば、失敗した。中野っちは文芸サークルの先輩のことが好きなんだと。そしてセフレの概念を未履修。袋小路もいいところ、こりゃおったまげた。「彼氏がいるか」「好きな人がいるか」くらいは早めに割り出しといたほうがいい。3回くらい遊びに行ったら告白ってネットの情報が悪いわけじゃあない。告白のタイミングは問題なかったんだ、ただ、俺の経験値が足らないばかりに…(日野、ここで斃れる)。また地道に他を当たるか。トホホ。


「人は誰も愛求めて 闇に彷徨う運命 そして風まかせ Oh,My destiny」。男ってのはホンマにバカな生き物。亀の頭でモノ考えよる。


ちんちん。



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