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小六編 第83話 莉紗の目指すところ

 朝起きて小学校へ行こうとしてげんかんを開けたらまっ白なねこがいた。そっかぁ、ミユキチ、今日もみのがしてくれないんだね。これから学校だからすぐにはむりだよ。あいかわらず「ミャーミャー」言ってくるけど何なのよ。えっ? 走れって事? ちょっ、後ろからおすんじゃないわよ。おしりに体当たりはやめて!


 きのうと同じくミユキチにおいたてられ、小学校まで走らされた。ミユキチは校門の所までいっしょだったけど、そこからは入らないようにしてるみたい。まぁミユキチだったらへいとかのりこえてすぐに入れるんだろうけど。校門前で「ミャーン」と一声鳴いてトットコとどこかへ行ってしまった。うーん、多分だけど学校終わったらまたくんれんな、って事だと思う。何だかなぁ……


 学校が終わって帰ろうとしてると校門でミユキチがまちかまえていた。あぁ、やっぱりにげられないのね。ちょっと、また走るの? ホレホレとあおるように私をおいたてるミユキチ。あんた、楽しんでない? いつもなら書道教室――今日は修道教室だけど――に行くんだけど、ミユキチが行かせてくれない。昨日の公園に行くの? ちがう? ついて来いって事なの? まぁいいか。どうせにがしてくれなさそうだし。ミユキチの後をついていく。もちろん走りながらね。とちゅうで気づいたんだけど、町内をぐるっと一周してない? 町内って言ってもそこまで広くないんだけど一周すると1kmくらいはある。小三で1km走るのってけっこうしんどいんだけど。あまかった。一周じゃなかった。二周走ってさらに三周目にはミユキチがランドセルの上にとびのって来た。あんたのせて走るの? ウェイトトレーニングなの? かんべんしてよ、もう。


 三周走って昨日の公園に来た、というかつれて来られた。またかくとうするの? ちがう? ミユキチはかだんのへりに前足をのせ、人間の赤ちゃんでいうとつかまり立ちのかっこうになった。そのかっこうのまま後ろ足を曲げて体を落とすと、今度は後ろ足を伸ばし立ち上がる。くっしん運動っていうのかな。それを何度かくりかえすと、「やってみろ」とばかりに私に向かって「ミャン」と鳴く。そのかだん、私には低すぎるんだけど。別にかだんに手をかけるひつようはないのか。ミユキチは立てないからそうしただけで、足の曲げ伸ばしができればいいのか。とりあえず足のくっしん運動をしてみる。何度かやってるとミユキチが、前足を自分の頭の後ろにもってくる。えーと、手は頭の後ろにおけってことなの? あぁ、これって何て言ったっけ? スクワット? ねこにスクワットさせられてる私って何?


 三分くらいスクワット?やってたけど足がげんかいになった。これじみだけどすっごいつかれる。走るよりつかれるかもしれない。地面にぺたんとすわりこみ、足を前に投げ出してるとミユキチがふとももに前足をのせてくる。ミユキチ、今足さわっちゃダメ! ミユキチは私のふとももを前足で右、左、右……とフミフミしてくる。これ、ねこがよくやるやつだ。マッサージのつもりなのかな。五分ほどそうやって休けいしてるとミユキチがまたスクワットやれって言ってくる。いや、言ってはいないんだけど何となく分かってしまう。またやるの? うー、スパルタだぁ。


 そうやって三分のスクワットを休み休み三回やった――やらされた――後は足、とくにふとももがパンパンだった。これ、明日学校行けるのかな。ミユキチは今日は終わりとばかりにまた私のランドセルの上にのってきた。あっ、また走るんですか。そうですか。ともあれ今日はもう終わりだそうだから教室に行こう。ちょうど三時くらいだし。そうして私はミユキチをランドセルの上にのせたまま教室まで走って行った。まじで足が死んじゃうんですけど。


 教室につくとミユキチはランドセルからピョンととびおり、そのまま教室にげんかんから入って行った。私もその後につづいて教室に入って行ったんだけど、ミユキチはなにやらけいかいしているようす。あっ、そうか。あのじゃどう女か。今日もいるね。さすがに先生やミユキチもいるからうかつに手を出してこないと思うけど、ねんのためけいかいしといた方がいいね。少なくともふい打ちされる事がないようにね。


 教室が終わって家へかえる。やっぱりミユキチはランドセルにのるのね。って事は走らす気まんまんなんだ。ここからうちまで100mもないんだけど。えっ、何? 全力で走れ? ダッシュしろ? もぉ、ちょっとはいたわってくれてもいいんじゃないの!


 家にたどりつくとミユキチはさっさとランドセルからとびおりる。そんじゃまた明日な、とでもいうように一鳴きして教室の方向へ帰って行った。うぅ……明日もこれやるのかぁ。それよりまず明日立てるのかなぁ。とりあえずおふろでにゅうねんにマッサージしとこう。


 ごはん食べておふろ入って――もちろんマッサージはねん入りにしといた――ベッドへもぐりこむ。今日はつかれた。目をつぶったら一分いないでねむれる自信がある。ミユキチのトレーニングというかくんれんについてかんがえてみる。走らされたりスクワットさせられたり、あれは足を重点的にきたえようとしてるんだろうな。かくとうとかしないのはまだそのだんかいじゃないから。きそ体力とじきゅう力、今はそこにしぼってくんれんしてるって事か。あるていどきたえられたらそのうちじっせん的な事もやらされるんだろうな。対人戦?ねこ相手だから対ねこ戦になるのかな。私からこうげきはしなくてもいいと思うからとりあえずはよける、にげる事をゆうせんでやればいいかな。そのためのきそ体力、じきゅう力、あとスピード、はんしゃしんけい、このあたりをきたえればいいのかな。そんな事をかんがえているうちにまぶたが重くなり、落ちるようにねてしまった。


 次の朝、ふとももは少しいたかったけど歩けないほどじゃない。マッサージのこうかがあったのかな。学校へ行くために家を出ると今日もミユキチがおでむかえ。あたりまえのようにランドセルにとびのってくる。はいはい、また学校まで走るのね。れいによって校門でわかれる。学校のともだちからはねこちゃんよくなついてるねって言われるけど、そんなかわいいもんじゃない。私はランドセルにのせて走る事をしいられてるんだ! 学校が終わるとまたミユキチをのせて町内三周、公園でスクワット、それでまた走って――もちろんミユキチはランドセルにとうさい――教室へ。


 そんな事を一週間もつづけているとあまりいきが上がらなくなってきた。なれってこわい。学校が休みの日なんてミユキチが朝から待っててそのまま公園につれていかれるんだよ。ランドセルがないのに、きように私のかたにのって走らされるし。休みの日の公園では対ねこのかくとうやらされる。ブチやトラ相手にひたすらよける、さける、にげるにてっして三分間たえる。前みたいにいきは上がらないけどやっぱりこれキツい。あとスクワット!ミユキチがかたにのってくる。ミユキチのせてスクワットしろって事か。ねこ一ぴきと言ってもけっこうなウェイトがある。3㎏くらいはあるわよね。そのうちブチやトラものって来るんじゃないでしょうね。


 ミユキチたちとのくんれんも一ヶ月ともなると、かなりのせいかが出たように感じるわ。なんだかんだで町内三周やスクワットはよゆうでこなせるようになったし、対ねこ戦もうまくこなしてると思う。ブチやトラなんかだとうまくよけれるんだけど、ミユキチが本気を出すとまだかなわないんだけどね。ミユキチは私がにげにてっする事にふまんがあるみたい。こうげきしてこいってようきゅうしてくる。いや、私はにげせんもんだから。こうげきに使う体力やスタミナがあるなら、よけたりにげたりする動きのために残しておきたい。ミユキチはそんなんじゃじぶんでエサとれないぞとか言ってくる――と思われる――けど私は狩りするつもりはないからね。

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