小六編 第72話 特進検定結果
八月に提出した特進検定の結果が出た。さてさて、うちの塾生達はどうだったかな。パラパラとページを捲って結果を確認する。どうせならそのままデータベースの更新もすればいいのだが、まぁそこはあれだ。早く結果を知りたいじゃないか。
おっ、彩音は二階級特進してるな。名前の上に◎が付いている。六級地だったから次は二つ進んで五級地だな。ひょっとしたら六年生の審査を担当している梨香さんに名前覚えられたからかな。いや流石にそれは無いか。
早速データベースを更新して合否結果表を作ろう。でもこれ、面倒臭いんだよな。やる事は簡単なんだが数が多い。誰かにやらせちゃおうかな。入力だけさせて俺が結果を確認すればダブルチェックにもなるしな。PCがそこそこ使えて暇そうにしてる奴……一人居るな。でもどうなんだろう。何か対価を要求してきそうだな。いや待てよ、こいつにはいつもスキャナ貸してるじゃないか。それが対価だ。その見返りにこれ位やらせてもいいんじゃないか。えーと、彩音は……小さい子達と何かやってるな。
「彩音、ちょっといいか。」
「何でしょう。今、幼女ハーレム中で忙しいんですけど。」
何してんだこいつは。
「ちょっと手伝って欲しい事があるんだ。」
「それは私のハーレムを犠牲にしてまでやる事でしょうか。」
「そんなものは存在しない。いいからちょっと来い。いつもスキャナ貸してやってるだろ。その見返りとして手伝え。」
「仕方ないですねぇ。皆、また後でね。」
渋々乍らもこっちにやって来る彩音、最初から素直に来いよ。
「検定の合否結果表を作るんだけど、その為のデータベース更新をやって欲しい。」
「よく分かんないんですけど、具体的には何をすればいいんです?」
「今からそれを説明する。」
先日、静にやったのと同じ説明をする。今回は特進検定だから、二階級特進も考慮してデータ更新しなければならない。
「つまりこのExcelシートに合格なら1、不合格なら0、◎の二階級特進には2を入力していけばいい訳ですね。」
「そういう事だ。飲み込みが早いな。」
「まぁこれ位なら。」
あっ、ちょっと嬉しそう。
「入力してれば分かるけど、お前は今回二階級特進だ。おめでとう。」
「フフン、もっと褒めてもいいんですよ。」
「調子に乗るなや。」
合否結果が載っている白鳳を片手にデータを入力していく彩音。まぁ任せといて大丈夫だろう。最終的には俺が確認する訳だし。
「結構合格者が多いんですね。」
「特進検定だからな。二階級特進は無理でも一つ上がるだけなら通常の検定より受かり易くなってるからな。」
「あぁ、そういう事ですか。」
「段レベルだとそうはいかんがな。普段は受からず、特進検定でやっと一つ上がれるくらいのもんだ。」
「でもすごい子も居るんですね。うちじゃないけどこの子なんて三年生でもう二段を◎で受かって次は三段とか。」
「ちょっと見せてみ。」
彩音から白鳳を受け取る。小三、二段で◎が付いてる子を見てみると……
「あぁ、この子な。この子は上手いからなぁ。」
「知ってるんです?」
「知ってるも何も元々うちに通ってた子だ。親の仕事の関係で隣県に引っ越しする事になってうちを辞めたんだ。そういう経緯があって隣県で白鳳書道会に所属している教室を紹介したんだけど、今はそっちで頑張ってる。」
懐かしいな。莉紗がうちから離れて一年半か……そういや親の転勤は三年って事だったな。任期が半分終わってあと一年半で帰って来るのか。またうちに通ってくれるといいな。
「入力、終わりましたよ。」
「そしたらプリントアウトしてくれ。Excelの印刷じゃなくてシートの右上に[印刷]ってボタンがあるだろ。それクリックしてくれ。」
プリンタから吐き出される紙を取り出す。さて、白鳳と照らし合わせて確認作業だ。
「彩音、サンキュ、もういいぞ。確認して間違いがあったら俺が修正しておく。」
「それじゃ私は幼女ハーレムに戻ります。」
「だからそんなものは存在しないって。」
彩音が入力したデータに基づいた合否結果表と白鳳を見比べながら確認していく。おぉ、ノーミスだ。すごいな。静は二箇所程間違えてたが、奴より優秀だな。これからは彩音にやらせよう。
合否結果表を教室の壁に張り出してと……早速何人かがそれに群がる。やっぱり特進検定の結果は皆気になるよなぁ。結果表を皆が見に行った事で彩音のハーレムとやらが崩れる。彩音、俺を睨むんじゃない。




