小六編 第67話 廃棄物の処分
流しソーメンの水路として使った竹の樋の再利用について色々と考えてみた。元々は合宿のたびに作って使い終わったら廃棄していたが、どうせ捨てる物なら他のイベントとかに貸し出そうかと画策していた。だが少なくともその貸し出しをするまでは保管しとかないといけない訳で、保管場所に困る事態に陥ってしまった。とりあえず二メートル以上ある樋では倉庫にも入らないので半分にぶった切ったが、また使うとなるとつながなきゃならない。
上流側の樋の最下流部分Aを、下流側の樋の最上流部分Bにつなぐには、Aの外径をBの内径にはめ込むのが理想形だろう。ただ、半分にぶった切った箇所でつなぐのはAとBが同じ外径、内径になってしまうのではめ込みが出来ない。これは初めからはめ込みでつなげる事を前提として作る必要がありそうだ。なので今回は貸し出し案自体を破棄、来年以降にはめ込み出来る様に作る事にした。今回作ったやつは竹内家の竹林まで持って行って捨てて来よう。
ちょっと待てよ、どうせならこの竹がどれ位の期間で傷むか検証してみよう。寿命としては一年持たないだろうと思っていたが、案外大丈夫なのかもしれない。とりあえず何本かある樋を三本分残しておくことにする。一本は倉庫で保管、二本目は教室の庇の下に吊るして保管、屋外ではあるが雨には晒されない様にする。なんか物干し竿みたいだな。布団干すのに使えそうだ。三本目は完全に屋外で野ざらしで保管というか放置。それぞれの樋にはマジックで年月日を記入して、何時から保管しているのかが分かるようにしておく。保管状態がよければひょっとしたら数年持つのかもしれない。
「先生、合宿で使った紙皿や紙コップはもう業者に引き渡した?」
合宿後、久々に顔を出した明里がそんな事を聞いてくる。
「いや、まだだ。他にも回収してもらう古紙なんかがあるからそれらと一緒に出すつもりでいる。」
「あそこのスーパーで古紙回収やってるそうだよ。そのスーパーで使えるポイントが古紙1㎏につき1ポイント貰えるみたいだよ。」
「そんなシステムがあるのか。1ポイントは1円相当?」
「確かそう。10㎏あれば10円分だね。」
「1.5㎏とかだと切り捨てで1ポイントになっちゃうんだろうな。」
「それが切り上げみたいだよ。1.1㎏でも1.9㎏でも2ポイント貰えるって。」
「だったら1㎏少し超える位で小分けにすれば、ほぼ倍のポイントが貰えるんじゃないか?」
「そういえばそうだね。そんな事よく思いつくね。」
「いじらしい庶民の浅知恵と言ってくれ。」
「浅知恵とか自分で言っちゃうんだ。」
しかしいい事を聞いたぞ。普通に可燃ごみとして出せば金を取られる。古紙業者に引き取ってもらえばタダで回収してくれるが実入りは無い。だけどスーパーに持って行けば逆にポイントが貰える。早速1㎏ちょっと越えの束を量産しよう。
うちには塾生が毎週の様に量産する反故――書き損じの事だ――が一杯ある。これは俺がまとめて古紙業者に持って行き回収して貰っているが、それをスーパーに持って行けばいいのだ。
そう言えば俺が子供の頃通った教室では、白井先生――励碩先生の方ね――の奥さんが反故を回収して自宅の風呂の焚き付けに使っていた。当時は風呂は火を熾して焚く物だった。俺も子供の頃はお手伝いで風呂焚きとかをやったものだ。ある時、今後は反故は持ち帰って自宅で処分する様にとのお達しが出た。なんでも風呂を沸かすボイラーを導入したそうで焚き付けが不要になり、反故の行き場が無くなってしまったのだ。うちの教室でも反故は持ち帰らせていた時代があったのだが、古紙回収業者に持って行けばタダで処分できる事を知ってからは、無理に持ち帰らなくてもいい様にした。僅かとはいえポイントになるならこれからは有効活用出来るな。
一応、スーパーの古紙回収がどんなシステムになっているか確認しておく必要があるだろう。とりあえず1㎏を少し超える1.1㎏位になる様に調整した古紙の束を一つ持って行ってみた。スーパーの片隅に何やら回収用の箱と計量装置らしき物が置いてある。成程、あそこで計量するのか。計量台、おそらくロードセル(圧電素子)を使って電気的に計測しているのだろう、そこに持ってきた古紙の束を置く。1.09kgと表示された。で、ポイントカードを入れると……おぉ、2ポイント加算された。やっぱり切り上げなんだ。小数点以下2桁まで表示されているから、おそらく1.01㎏でも2ポイント貰えると思われる。計量後の古紙はこの箱に入れてと。
一応説明文が書いてあったので読んでみる。ふんふん、古紙としては本、雑誌、新聞、菓子箱なんかもいいんだな。あっ、段ボールは駄目なのか。何でだよ。段ボールって再生するには一番いい素材なんだぞ。仕方ない、段ボールは古紙回収業者に持って行くか。
うちの市では可燃ゴミ以外は無料で回収してくれる。但し分別が必要だ。俺としては分別は苦にならない。捨てる際に分別して仕分けするからそれぞれの回収日に出すだけだ。可燃ゴミは古紙とされるものはスーパーに持って来ればいいし、古紙回収業者もタダで引き取ってくれる。可燃ゴミとしては生ゴミ――野菜クズ、タマゴの殻等――も含まれるのだが、これは畑に埋めて堆肥にすればいい。つまり分別さえすればうちから出るゴミは全て無料で処分できるのだ。
昔は小学校や中学校にも焼却炉なんかがあって、掃除の後にはそこにゴミを捨て何でもかんでも燃やしていたが、昨今ではそれは条例とかで禁止されていて出来ない。学校どころか一般家庭でも空のドラム缶で燃やして処分したりしてたけど、今じゃ無理だ。面倒臭い時代になったもんだな。
収穫が終わった後の田畑で野焼きが行われる事があるが、これも条例で難しくなってきている。野焼きによって出来る草木灰には石灰、リン酸、カリウム等、植物の育成には欠かせない成分が含まれており、手っ取り早い肥料となる事から太古より野焼きが行われてきたが、条例に照らし合わせると違法行為になる自治体もある。条例により今後、野焼きが出来なくなると知った農家が市役所に押しかけ、「野焼きを禁止したら一揆起こすぞ!」と迫られたという笑えない話を聞いた事がある。まぁ野焼きは近隣住宅への煙害も引き起こすからなぁ。周りが農家ばかりならお互い様ってなるんだろうけど、最近は農家と農家以外の家が混在する地域も多いし、なかなか難しい問題ではある。
おう、月子。ゴミの問題を自由研究にしたらどうだ。環境に与える影響とか考察するのもいいけど、如何に無料でゴミを処分するかとかまとめると受けがいいかもしれんぞ。先生とか子供に対してと言うよりは家計を預かっている母親受けだがな。何、セコ過ぎて悲しくなる? いいじゃねぇか。有益な情報は皆にシェアしていこうよ。




