小六編 第55話 合宿五日目 山越で狙い撃ち
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よし、門前混一色張ったぞ。待ちは一四萬、一萬なら一盃口も付く。付かなくとも親の跳満だ。リーチはかけない。狙い撃ちが出来ないからな。静は俺が萬子に染めてるのが何となく分かってる様だな。萬子牌は俺の河に捨ててある現物しか切ってこない。
対面の朋照が四萬切りやがった。駄目だよ、朋照からは上がれないんだ。こいつをトップにしないといけないからな。続いて上家の直哉が切る。そして俺の巡目だ。明らかに自摸切りが分かる様に捨て牌を切る。静は朋照が四萬切って通ったので安心して四萬を切ってきた。
「ロンだ。門前混一色一気通貫ドラ1、跳満、親だから一万八千だ。」
俺は手牌を倒す。
中中一二二三三四五六七八九 四ロン (ドラ:八萬)
「な、何で朋照君が切った四萬でロンしないんですか!先生、さっき自摸切りだったし手牌変わって無いからその時点で当たれるでしょ。」
静が抗議して来る。自摸切り? そうだったっけ? 知らんなぁ。忘れたなぁ。
「朋照が切った段階では一盃口が付く一萬が出る迄見逃そうとしてたんだ。その後の自摸によっては中落としていって門前清一色まで狙えるしな。でもこのままでも一盃口付こうが付くまいが同じ跳満だと気付いてな。で、その後出た静の四萬でロンしたんだ。悪く思うな。」
「絶対嘘だ! 先生が翻数間違えるなんておかしい。」
そうだ、嘘だ。朋照から上がらない為に見逃した。その後、山越して偶々静が切った四萬で当たっただけだ。ルール上は何の問題も無い。
その後も執拗に静を狙い撃ちして静のラスはほぼ確定という所まで持って行った。あとは朋照をアシストしてトップに仕立てるだけだ。朋照、何が欲しいんだ? 索子か? ホレ、ポンするがいい。場合によっては差し込んでやるぞ。
俺の努力?の甲斐あって、朋照にトップが転がり込んできた。ラスは勿論、静だ。俺? 俺は朋照のアシストに徹していたんでな。マイナス34で三位だった。ラスさえ引かなければいいのだ。これで五日間の勝敗表と奢り奢られポイントがどうなったかというと、
勝 負
(奢られる側)(奢る側)
合宿1日目 俺 ← 直哉
合宿2日目 茉実 ← 直哉
合宿3日目 直哉 ← 朋照
合宿4日目 静 ← 俺
合宿5日目 朋照 ← 静
俺 0P
朋照 0P
直哉 -1P
誠司 0P
茉実 +1P
静 0P
目論見通り、直哉が茉実に一回奢るというだけになった。直哉、茉実にはちゃんと奢ってやれよ。
「姉ちゃんにはもう奢らされました。なので借金は無しです。」
「そうか、まぁ五日間も麻雀出来た事への必要経費だと思え。」
被害は最小限で済んだ様だな。良かった、良かった。
「全然良くありません! 再戦を要求します!」
何か静が喚いている。
「はいはい、この後は勝人さん入れてやるんだから。」
「先生、じゃ俺はこの辺で……最初に言った通り約束あるんで。」
「おぉ、五日間ありがとうな。玄田家にはバーベキューコンロとか返しに行かないといけないから、その時にあらためてお礼するわ。美沙恵さんや明里にも俺がお礼言っていたと伝えてくれ。」
「それじゃまた。お先に失礼します。」
そう言って朋照は帰って行った。これから夜遊びか……若いねぇ。
「さてと勝人さん、これうちで麻雀やる時のルールです。一応目を通しておいて下さい。」
「はいはい、成程……あまりインフレにならない様な感じですね。割と正統派というか。」
「そうですね。娘さんには『ぬるい』と言われてしまいましたが。梅宮家ではインフレ気味なんですか?」
「そうでも無いですよ。これに赤五が入るのとウマが加わる位ですか。割れ目を追加する事もありますけど。」
「十分インフレだと思いますけど。」
「どうしてもギャンブル要素を入れたい人が多いですからな。」
ルール確認の他に事前にやっておかないといけない事がある。勝者と敗者の扱いだ。
「勝敗の結果による取り決めをしときましょう。今まではその日のラスがトップに千円以内で飯を奢るというのでやってました。なのでそれに準ずるか近い形にしたいんですけど。勝人さんの他に静や直哉の意見も聞きたい。」
「これはうちでやる時によくやるんですが、ラスが他の人に飯を奢るってのはどうでしょう。トップに対してだけでなく、自分を含めて四人分の食事代を負担するんです。」
「成程、いいかもしれません。」
「先生、それちょっと俺が負けたらキツいんですけど。」
四人分の食事代だと少なくとも五千円から一万円コースだ。直哉には厳しいかもしれない。
「勝てばいいんだよ。というのはちょっと酷か。勝人さん、直哉はまだ学生ですのでハンデと言うか救済措置を設けるのは駄目ですか。例えば直哉がラスの場合は免除と言うか自分の分だけ払うとか。その他の者も自己負担で。」
「私はそれでも構いません。静は?」
「私もいいですけど、先生には恨みがありますので個人的に奢って貰いたいところですね。」
「お前はいつも俺に集ってるだろうが。」
「そんな事は知りません!」
プイッと顔を背ける静。何なんだろうな、こいつは。
「つまり俺は『ままこ』という訳ですか。それなら何とか。」
確かに「ままこ」だな。梅宮父娘が「ままこ」って何です?って聞いてきたので、ドッヂボールの時と同じ説明をした。やっぱりこっちじゃ「ままこ」では通じないらしい。
さてと、負けても千円までから五千円以上になってしまった。ここからはどう打とうかな。勝人さんの打ち筋が分かんないからなぁ。少なくとも静よりは強いだろう。とりあえず最初の半荘は様子見かな。いつもみたいに突っ張らないで出来るだけ安全に打つ事にしよう。
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