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小六編 第53話 合宿五日目 キックベースボールでorz

 バーベキューの準備で忘れそうになった。泉谷校長に今日のグラウンドの件、連絡しとかないと。


「婆ちゃん、泉谷先生の電話番号教えて下さい。」


「今日の連絡ね。最初、私がかけるから後で変わってあげるわ。」


「すいません。お願いします。」


「トゥルルルル、トゥルルルル……」


「あっ、泉谷先生ですか。竹内です。昨日はありがとうございます。それで今日の予定なんですけど、白石(びゃくせき)先生が、はい、はい、では代わりますので。」


 婆ちゃんが自分のスマホを俺に渡してきたので受け取る。


「もしもし、お電話代わりました。白石です。昨日はどうもありがとうございました。それで今日の件なんですが、三時位からお借り出来ないかと……えぇ、そうです。それでついでと言っては何なんですが、ベース、野球なんかで使うベースですね、あれもお借りできればと。はい、キックベースボールで、はい、そうです。OKですか。ありがとうございます。助かります。はい、では三時ごろ伺いますので。よろしくお願いいたします。はい、また後程、それでは失礼します。」


 ふう、何とかなった。


「婆ちゃん、ありがとうございました。」


 そう言ってスマホを返す。


「また麦茶用意しとくわね。」


「何から何まですみません。助かります。」


 さて、これでしばらくはバーベキューに専念出来るぞ。


 最終日という事もあってバーベキューは大盛況だった。さすが肉増し増ししただけはある。片付けも二回目だし慣れたものである。


「今日の残飯はどれくらいだ?」


「初日のバーベキューの時より少ないよ。やっぱり肉が多いと食べ残しも少ないね。野菜くずは結構出たけど。」


「それは仕方ないよ。でも埋める量が少ないのはいいな。掘る穴が小さくて済む。」


「それなんですけど、先生……」


 ん、朋照か、何かな?


「この間、燃え残った炭を土に埋めてましたよね。親父に聞いたんですけど、炭は土に還らないから埋めない方がいいって。」


「そうなん? 炭って元は木だろ? 木なら最終的には腐って土になるんじゃないか?」


「その辺はよくわかんないですけど、多分炭になっちゃうと普通に比べて腐りにくくなるのではないかと……」


「まぁ普通の木だって腐りきるには何年もかかるだろうし……炭になると腐りにくくなるってのは分からんではない。しかしだったら燃え残った炭はどう処分するのが正しいんだ?」


「可燃ごみで出すしかないかと。一番いいのは燃やす、つまり使い切っちゃう事だそうです。」


「うーん、今から燃やすのはなぁ……前回埋めちゃった分は仕方ないとして、今回のはどうするか……冷まし切って次の機会に使うか。薪も燃え残ったのはとっておいてまた使おうとしてるんだし同じだろ。」


「薪もそうですけど炭は特に冷ます……というか水かける位しないと発火しそうで怖いですよ。」


「そうだよなぁ……ブリキのトタン板をどこかで入手して、その上にでも置いて水ぶっかけた後しばらく放置して乾燥させよう。うん、そうしよう。」


「念の為、保管は一斗缶か何か金属の容器に入れといた方がいいですね。蓋があればなお良しですけど。」


「成程、万が一再燃してもそれ以上酸素を供給させない為か。」


 面倒臭いなぁ……もう燃やしちゃおうかな。


「秋になったらそれで焼き芋やりましょう。」


「そうするには結局、秋まで保管しとかなきゃならんという事じゃないか。」


「あっ、そっか。」


「まぁ何か考えるわ。次回以降は燃え残しが無い様にしないとな。」


 イベントをするという事は、準備が大変だという事は勿論だが、後始末も何かと大変なのだ。とりあえず燃え残りの炭や薪に関して、今日出来る事は水ぶっかけておく位しか無いな。


 昼飯を食べ終わった子供等はなんちゃってテント――ブルーシートででっち上げたタープと敷物――で寝っ転がっている。なにせキャンプ擬き(お昼寝付き)だからな。食事の片付けくらい自分でやらんとキャンプにならないぞ。という訳で後片付けを手伝わせた。と言っても紙の皿やコップを軽く洗って、同じものを重ねてまとめさせる位なんだけどな。でもこれを一人でやろうとすると結構大変なんだ。ちっこくても数は大きな戦力になる。戦いは数なのだよ。


 キャンプ擬きの後は小学校のグラウンドへ行ってキックベースボールだ。昨日と同じくOBにチーム分けを任せて職員室へ行く……行こうとしたのだが、すでに泉谷校長が体育倉庫の前で待ち構えていた。


「どうもどうも。」


「泉谷先生、態々出て来て下さったんですか。申し訳ありません。」


「何々、ちょっとした息抜きですよ。ずっと部屋の中だけというのもね。はい、体育倉庫の鍵です。」


「ありがとうございます。お借りします。ベースはどの辺にありますかね。」


「さっきちょっと覗いてみたんですけど、入って左側の棚にありましたよ。ちゃんと五角形のホームベースもありましたし。」


「確認までしていただいてなんかすいません。」


「貸すと言った以上、無いと申し訳ないですからな。」


「ありがとうございます。ではサッカーボールとベース一式、お借りします。」


「終わったらまた声をかけて下さい。」


 そう言うと泉谷校長は校舎の方へ戻って行った。さて、俺も子供たちの所に戻るか。チーム分けも出来てる様だな。よし、始めよう。


「ホームラン!」


 勝陽が開幕ブッパでプレイボールホームランを放った。いや、外野フェンスがある訳じゃ無いからランニングホームランなんだけどな。ボールは遮蔽物の無いグラウンドを転がって行き、外野の選手が追いついた頃には勝陽は既にホームインしていた。守備側チームを見ると、彩音がダイヤモンドの真ん中で地面に両手と両膝をつき、四つん這いになって項垂れている。今日は勝陽と同じチームじゃないんだな。


「彩音、お前何してんの?」


「甲子園で開幕ホームランくらって打ちひしがれるピッチャーごっこ。」


「いやな遊びだな。そもそもこのルールじゃピッチャー居ないだろ。」


「orzがしたかったんです。」


「はいはい、orz、orz。」


「これ(orz)って、縦書きになったらどうなるんでしょうね。」


「馬鹿だな、縦書きになる筈無いだろう。」


 ならんよな。なったらそれはそれで嬉しいけど。うちの教室の宣伝になるという意味において。いや宣伝になるのか? 寧ろ逆効果かもしれない。


 今日は乱打戦だな。両チームとも飛ばすわ飛ばすわ。なかなかアウトにならない。3回を終わって両チームとも10点越えかよ。まぁ全く点が入らないよりは盛り上がるけどな。結局、仲良く16点ずつ獲って5回を終えた。5回迄で延長無しとしていたからドローで試合終了。皆、結構楽しめた様で良かった。


 ボールとベースを体育倉庫に返却し、泉谷校長に鍵を返しに行く。


「泉谷先生、倉庫の鍵を返しに参りました。昨日今日の二日間、本当にお世話になりました。」


「いやいや、先生こそ子供達の為に色々やっているじゃないですか。そのお手伝いをしただけですよ。」


「そう言っていただけると嬉しいです。地域貢献の一助になってればいいのですが。」


「そのお役目は十分に果たしていると思いますよ。また何かあれば声をかけて下さい。私も何時までこの学校に居るか分かりませんけど、出来る範囲で協力させていただきますので。」


「ありがとうございます。来年またお世話になるかもしれませんので、よろしくお願いします。」


 最後のレクリエーションも無事終わり、これで今年の合宿は終了だ。少なくとも子供達にとっては。俺やOBにはこの後、片付けが残っている。尤もその後には打ち上げもあるんだけどね。あと麻雀もか……orz。

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