小六編 第51話 合宿四日目 嵐は去った
今回は短いです。
「私の実力、思い知りやがりましたか。」
フフン、と鼻で笑いドヤ顔の静、マジでムカつく。だがラスを引いた俺が何を言っても負け犬の遠吠えにしかならん。
「分かった分かった。実力は認めよう。今日の奢って貰える権利は静の物だ。」
「先生が奢ってくれるんですよね。何タカろっかなぁ。」
「最初の取り決め通り千円以内だからな。」
「考えときます。楽しみぃ。」
「明日はどうするんだ。また来るのか。」
「何か私が来るのがご不満な様ですね。」
「そんな事は無い。また麻雀メンツが足りなくなった場合にアテに出来るかどうかを確認しただけだ。」
「明日も来ますよ。その翌日は休みだから遅くなっても大丈夫ですし……と、泊ってあげてもよろしいですわ。」
「それは駄目だ。若い娘を朝帰りさせたなんてなったら世間的に俺がアウトだ。特にお前の場合、婆ちゃんから怒られるだろ。」
「むぅ、まぁいいです。何か考えます。」
「何を考えるのかは知らんが、今日はもう帰れ。十一時になるぞ。それから明日来るなら差し入れは今日みたく豪華じゃなくてもいいぞ。スナック菓子やツマミ程度で。今日の寿司で十分貢献したからな。」
「はいはい、それではまた明日。朋照君や直哉君もまたねぇ。」
そう言うと静はニコニコ顔で帰って行った。
「さて、明日も誠司は駄目なんだっけか。」
「手伝いは来れるけど麻雀は無理だそうです。」
「となると今日と同じメンツになる訳だが……」
「いいんじゃないですか? 徹マン出来ないのは残念っスけど。」
「そうだな。」
朋照と直哉はあまり気にしていない様だ。まぁ麻雀出来れば何でもいいのだろう。ただちょっと考えてみよう。合宿四日間での勝敗表としては以下の様になっている。
勝 負
(奢られる側)(奢る側)
合宿1日目 俺 ← 直哉
合宿2日目 茉実 ← 直哉
合宿3日目 直哉 ← 朋照
合宿4日目 静 ← 俺
うちの麻雀の慣例として、奢られる権利と奢る義務は相殺する事が出来る。それを分かり易く数値化する為に、勝を+1P、負を-1Pとした場合の個人別の成績としては
俺 0P
朋照 -1P
直哉 -1P
誠司 0P
茉実 +1P
静 +1P
結果としてプラスが奢って貰える回数、マイナスが奢らなければならない回数になる。
俺としては出来るだけイーブンにしてやりたいのだが、誠司と茉実はもう参加しない。つまり茉実の誰かから必ず奢って貰える権利が確定している。あとは静をラスにして朋照か直哉にトップを獲らせれば、獲れなかった方が茉実に一回奢るだけで済むという訳だ。ここはあまり麻雀には乗り気ではなかった茉実を引き込んだ直哉に泥を被ってもらおう。そんな訳で明日は何としても朋照がトップ、静がラスになる様に暗躍しようと思う。俺は二位か三位で十分だ。
「じゃまた明日よろしくな。」
「うぇーぃす。」
「おやすみなさい。」
朋照と直哉を帰し、俺も床に就くことにする。いよいよ明日で合宿も終わりだ。明日のリクリエーションは何になるのかな。俺としてはキックベースボールがいいな。俺が楽だし。などと身も蓋も無い事を考えながら眠りにつくのだった。




