小六編 第47話 合宿四日目 ドッヂボール
本日2話目の投稿になります。よろしくお願いいたします。
「先生、チーム分けはこれでいいスかね。」
小学生のチーム分けを任していた直哉がそう言ってきた。
「どうやって分けた?」
「単純に年齢順に並べて奇数番目と偶数番目で分けました。男女比率がちょっと偏ったんで、何組かはトレードしましたけど。」
ほほぅ、男女比まで考慮に入れるとはなかなかやりよる。あとは学年まで考慮に入れた男女比だが…まぁ許容範囲か。高学年男子が多い方が断然有利になるからな。
「さてルールをどうしよう。今の子はどんなルールでやってるんだ?」
「単純にぶつけられたら外に出るんじゃないですか?」
「それはそうだが、例えば外野に行っても外野から相手チームにぶつけたら内側に戻れる、戻れないとか、時間制限制にするのか、皆殺しまで終わらないとかあるだろう。」
「皆殺しって……まぁ意味は分かりますけど。」
「現役の小学生に聞こう。まずは外野からの復活は有り? それとも無し?」
「小学校では一旦外野に出ちゃったら戻れないんですけど、戻るの有りならそっちがいいです。その方がやる気が出るんで。」
「他に意見は?」
特には無い様だ。
「そうなると必然的に時間制限有りになるな。復帰が有りだといつまで経っても全滅しない可能性がある。」
「時間制限は何分位がいいですかね。」
「例えば30分は長すぎるよな。かといって10分じゃ短すぎる気がする。15から20分てとこか。」
「20分にしましょう。20分経過の時点で内側に多く残ってる方が勝ちって事で。同数ならサドンデスで。」
「先に一人でもやられた方の負けって事か。それでいいか?」
子供等は概ね納得した様だ。
「試合開始時のボールはどっちから始めるってのはあるのか? 俺の子供の頃はじゃんけんで決めてたけど。」
「バスケみたくジャンプボールでいいんじゃないスか。俺らそれでやってましたけど。」
成程、そういうやり方か。その方が面白いな。そうなると各チーム一人ずつだけは敵陣スタートになるのか。
「あと、外野はサイドから投げるの有り?」
「そんなんあるんスか?聞いた事無いです。」
「そうか、まぁローカルルールだろうな。結構盛り上がるんだけどな。」
「外野は最初一人スタート?」
「そうですね。この人数ならそれでいいんじゃないでしょうか。もっと人数いる時は最初から二、三人出すこともありますけど。あっ、復活有りだと外野が居なくなる場合もありますせんか。」
「最初の一人は絶対に内側に戻れない、あるいは外野の最後の一人はぶつけても内側に戻れないって事にすればいい。どっちがいい?」
「最初の一人は戻れないってのは本人が面白くないでしょう。後者で。」
「あと、『ままこ』制度を採用しようと思うんだが……」
「ままこって何スか?」
「こっちではままこって言わんのか。一般的には『おみそ』って言うのかな、要はぶつけられてもアウトにならない子だ。」
「あぁ、聞いた事あります。小さい子の救済措置みたいなヤツですね。」
「一、二年生はそうしようと思うんだ。見た所どちらのチームも三人ずつ該当する子が居るみたいだからバランス的にもいいだろう。」
大体ルールが決まった様だ。何か石灰の白線を引いたコートがあったのでそれを利用する事にした。体育の授業で引いたのが残っていたのだろう。ドッヂボール用かどうかは分からんけど。OBには審判、線審をお願いし、時計係は俺がやる事になった。
「試合は20分、サドンデス有り、10分休憩後コートチェンジして二試合目な。それでは……スタート。」
直哉がセンターでボールを上げる。そのボールを六年生男子二人が奪い合い自陣に落とそうとジャンプする。かくして血で血を洗う死闘が……始まる筈も無く、ゆるーい感じのドッヂボールが開始されたのだった。
そう言えば小学校の同級生で変わったボールの受け方をする奴が居たな。普通は胸と腕で抱え込む様にして受けるんだが、そいつは両手の手の平を前に突き出してボールを上に弾くのだ。そして落ちてきたボールをキャッチしてすぐさま敵陣に投げ込む。弾いた後キャッチできなくて地面に落としてしまえば当然アウトだ。見ていてハラハラするキャッチ方法だった。先生には突き指するからやめろ、とか落とすぞ、とか言われてたが結局やめなかったな。それがそいつのスタイルだったんだろうな。
おっと、いかんいかん。時計係の仕事をしなくちゃな。大体8分経過した所か。外野の数はと……4人と3人か。なかなか拮抗してるな。あっ、今4人対4人になった。内側は動き回るから数えにくいけど、外野はあまり動きが無いからカウントしやすいのだ。
よくよく見れば勝陽が外に出てる。あいつ、大柄で運動神経いいのにわざと当てられて外に出やがったな。内側と外野で連携して攻撃する作戦に出たか。外野の司令塔を買って出たんだろうな。でも外野に出てもお前が敵にぶつけたら中に戻んなきゃいけないんだぞ。そういう縛りがある中でどこまで奮戦出来るかな。
「あと5分!」
あと5分コールを入れた。次は1分前まで言わないつもりだ。外野からの復帰があるから今は勝ってても結構簡単にひっくり返る事がある。それが復帰ありルールの面白い所ではある。やってる方は手が抜けないんだろうけどな。だからいいんじゃないか。
あっ、彩音が未由の盾になってぶつけられた。未由は「ままこ」だから当てられてもアウトにならないんだから無駄死にだぞ。えっ? 未由にぶつけられるのが我慢出来なかった? 無駄死にではなく尊い犠牲だと? まぁ本人がそう思うのは自由だがな。お前が外に出る事によってチームとしては結構なダメージ受けてるぞ。残機数的な意味において。
「あと1分。」
そろそろ勝陽は敵にぶつけて中に戻った方がいいんじゃないか。お前ならすぐに当てられるだろ。最終的に内側の人数が多い方が勝ちなんだから。こういう時に限ってなかなか当たらないんだよな。
結局、彩音のチームは負けてしまった。勝陽のチームでもあるがな。よし、10分間休憩。麦茶を飲め。水分補給しろ。
10分の休憩後、二試合目。皆慣れてきたのか、なかなか当てられなくなってきたな。外野に殆ど出てない。ゲームが動かないと面白くないじゃないか。停滞したまま残り5分になった。皆バテてるのだろうか。
「あと5分!」
ここで勝陽チームの動きが変わった。今までのらりくらりとやっていたのだがいきなり攻め始めた。体力温存して残り5分に賭けたか。悪い手では無い。ひたすら攻めまくる。相手にボールが渡って投げられてもリスク上等の捨て身のキャッチだ。これが功を奏したか、勝陽チームの勝利となった。残り人数的には差は一人だったんだがな。気迫勝ちってとこだな。これで1対1のイーブンになったな。
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