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小六編 第45話 合宿三日目 飯盒炊飯

本日2話目の投稿になります。よろしくお願いいたします。

 水曜日、合宿三日目。昨日の麻雀は酷い目にあった。主に精神的ダメージにおいて。尤も登山で肉体的ダメージも相当食らってるのだが。


「先生、日本の人口は? 何人?」


「ん、依実(えみ)、社会の宿題か。今は約一億二千万人って教えてるんだっけ。それとももう一億三千万人になったんだっけか。」


 俺が小学生の頃は約一億一千万人と教わった。三十年前の知識は陳腐化するな。国会議員の数だってコロコロ変わるし。


「じゃ面積は?」


「これはいくら埋め立てが増えたと言っても当時とそんなに変わらんだろう。約38万平方キロメートルだ。」


「一番面積が広い都道府県は?」


「そりゃ北海道だろ。てか何でもかんでも俺に聞いてちゃ自分の勉強にならんぞ。」


 俺は依実の社会科資料集をペラペラめくり、都道府県のデータ一覧のページを開く。


「ほら、ここに都道府県別の表がある。これで面積の一番大きなものを調べるんだ。」


「はーい、ちなみに一番面積が小さいのは?」


「今は香川県だ。俺が子供の頃は大阪府だったけどな。」


 大阪が埋め立てしまくった結果、最下位を脱出したんだよな。俺の子供の頃のひっかけ問題で面積が一番小さいのは何県?というものがあった。当時の最下位は大阪だったがこれは香川県が正解。何故なら大阪は「府」であり「県」ではないから。問題は「何県?」となっているのだから香川県が一番面積の小さな「県」になるのだ。今ではひっかけにならない問題だがな。同様に一番面積が大きい県は?というひっかけもあったな。こっちは昔も今も岩手「県」だな。まぁ香川県に関しては面積最小県、ため池、うどんだけ覚えときゃいいだろ。と、暴論でまとめる。


 そろそろ昼飯の準備しなくちゃ。(かまど)、どうしよう。バーベキューコンロで飯盒炊飯できるかな。炭火だと火力が心もとないからコンロ使うにしても薪かな。だったら薪買って来なくちゃならんじゃん。あわててホームセンターへ車を走らす。30人分か……五束もあればいいかな。いや、余裕をもって八束位買っとこう。


 午前中にバーベキューコンロと薪を使って、飯盒で飯が炊けるか三合程炊いてテストしてみる。何とかなりそう。(かまど)は組まなくて済みそうだ。コンロには火種として炭を入れ、薪を乗せる。ついでに一昨日、昨日の昼飯で使った割りばしも薪としてくべてしまえ。焚き付けにちょうどいいだろう。燃料をセットしたコンロに焼き網を被せ、その上に飯盒を乗せる形にすれば扱いやすい。


 ブルーシートでなんちゃってタープと敷物も用意した。タープは教室の屋根の(ひさし)にロープで結んで、もう片方の端を脚立で台座作ってそこに括り付けた。敷物は地面に敷いただけだ。


 今日の昼飯は少し変則的だ。飯盒炊飯をする事自体がレクリエーションなので、十二時から飯盒で飯を炊くところから始める。出来上がるのはおそらく一時位になるだろうから、そこで昼飯になるのだ。


 子供を4班に分け、飯盒と米を渡して研ぐ所からやらせる。1班につき大人を一名以上付ける事も忘れない。それとは別に大人用の飯盒も用意する。子供等の飯盒はあくまで子供用、大人は大人で自炊する。失敗する班が出て来るであろう事を予想し念の為、炊飯器でも五合程炊いておいた。自宅の三口ガスコンロをフル活用してレトルトカレーを温める。甘口16パック、中辛8パック、辛口8パックを用意した。小さいのから順に好きなのを選ばせる。小さい子は甘口じゃないと駄目な子が多いから甘口多めだ。


 皆、上手く炊けたかな。下の方が焦げた班もあった様だが、概ね大丈夫なようだ。お焦げで量が足りなくなった班には大人用の飯盒から分け与えた。大人は最悪、炊飯器から補充しても大丈夫だろうからな。


 紙皿にご飯を盛った子供等を小さいのから順に並ばせ、レトルトカレーを渡していく。好きな辛さを選べよ。やはり甘口が人気の様だ。選んだパックの封は大人が切ってご飯にかけてやる。熱いから火傷でもされたらコトだからな。


 ブルーシートを敷いた所で食べるんだ。飲み物も用意してあるぞ。自分らで炊いたご飯は美味かろう。なかなか自分でご飯炊くなんてのは出来ないからな。飯盒でなくとも鍋とガスコンロでもご飯は炊けるからな。今度家でやってみるといい。火を使うから家の人と一緒にな。そう言えば会社員時代に長期出張でヨーロッパ行った時、ホテルの近くのスーパーで米売ってたから買って、ホテル備え付けのキッチンで米炊いたな。水の量とか超適当だったけど、炊飯器じゃなくとも案外簡単に炊けた記憶がある。


 飯盒炊飯にレトルトのカレーなんて味気無いな、なんて思っていたのだが、最近の小学生のキャンプだとご飯は飯盒炊飯で炊くけど、カレーは各自でレトルトカレー持って行って、それを温めて食べるというケースも少なくないのだそうだ。温めるのもかまどを使うそうだが。カレーは野菜の皮剥いたりカットしたり大変だもんな。自分らの好みのカレーのレトルトパック持って行った方がいいのかもな。


 食い終わったら片付けだ。今日は子供等にもやらせる。片付けまでやって飯盒炊飯と言えるからだ。


「はーい、注目! 食べ終わった者から片付けに取り掛かれ。いいか、食べ残しや残飯は後で俺が埋めるからこの容器に入れておけ。紙皿と紙コップは軽く洗ってひとまとめにしてこの段ボール箱に重ねて入れろ。プラスチックのスプーンは洗剤で浸け洗いするから、これも軽く洗ってからこのバケツに入れろ。後は飯盒をきれいに洗って干しておけ。片付けに関して分かんない事があったら、俺か明里に聞いてその指示に従う様に。終わったら今日はもう自由時間だ。宿題の続きやるもよし、ブルーシートの上でゴロゴロしてもよしだ。中学生以上はバーベキューコンロの片付けがあるから後で呼ぶ。コンロが冷める迄は自由にして貰って構わない。」


 一通り指示を出し少し落ち着いた。俺はどうしようかな。残飯埋める穴でも掘るか。来年からは予め大きな穴を掘っておこう。シャベル片手に畑の隅に向かうのだった。


 穴掘りを終えるとコンロはもう大分冷めている様だった。中学生以上に声をかけ、コンロの中を確認する。とりあえず燃え残った薪で半分以上残っている物は取り出して水をぶっかけておいた。乾かして次回使う事にしよう。小さな燃えカスや消し炭は残飯と一緒に埋めてしまおう。残飯もそんなに多くなかった。


「先生、プラスチックのスプーンだけど、あれ洗うって事は再利用するの?」


 明里がそんな事を聞いてきた。


「そのつもりだったが何か問題あるのか?」


「うーん、衛生的にどうこうというのもあるんだけど、あれって油汚れが落ちにくいんだよね。丁寧に手洗いすれば落ちると思うけど労力が……というか面倒。」


「そうなんか、あれって買っても値段はさして高くないから使い捨てでいいか。」


「そうしようよ。軽く洗うだけしてプラごみで捨てればタダだし。」


 殆どの自治体がそうだと思うが、廃プラスチックごみは無料で回収してくれる。分別が面倒なだけで。


「紙皿や紙コップはどうするの? 可燃ごみは有料だよね。」


「市の回収に出すとそうだけど、古紙回収業者の所に持って行けばタダで回収してくれる。量が多ければいくらかバックしてくれるくらいだ。この程度の量じゃバックは無いけどな。」


「そうなんだ。」


「割り箸は可燃ごみで出すしかないんだけど、一昨日、昨日の分は今日の飯盒炊飯で燃やしちまった。焚き付けにはちょうどいいから明日、明後日の分も取っとこうと思うんだ。」


「成程ね。ところで明日の昼ご飯は? もう決まってる?」


「流しソーメンをもう一回はやろうと思ってる。もう一回はまたバーベキューかな。」


「明日は暑くなるそうだから流しソーメンは明日にしましょう。」


「そうするか。じゃ、また買い出しよろしくな。」


「明日の人数は?」


「ちょっと待て、確認するわ。」


 明日はちょっと少な目で子供は20人だ。


「子供が20人、お手伝い人員入れても26人だな。」


「ソーメンは50束位でいい?あとめんつゆの素を追加しとかないと。」


「ソーメンはそれでいいだろ。めんつゆや薬味は任せた。昨日で必要量の感覚はつかめただろ。ほい、一万円。」


 そんな感じで明日の昼飯が決まってしまった。リクリエーションは何にするかな。プールや海に行けないとなるとネタが無いんだよな。小学校のグラウンドでドッヂボールでもするか? キックベースボールでもいいかもな。


 そんなこんなで合宿三日目が終わった。あっ、麻雀は直哉がやっとトップ獲れて朋照がラスを引いた。結果として俺に奢る義務が直哉から朋照に移ったのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。ブックマーク、評価、感想等いただけると励みになりますのでよろしくお願いいたします。

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