小六編 第40話 合宿一日目 麻雀のルール
六時になったので子供等を帰宅させる。高校生以下は帰る様に。これからは大人の時間だ。ちょっとしたツマミとビールで乾杯。こらこら直哉、お前はまだ未成年だろ。来年まで待て。麻雀させないぞ。
竹内の婆ちゃんや美沙恵さん達の保護者組は一時間程で帰って行く。自分の家庭もある訳だしね。それ以降に残っているのは大体二十代半ばまでの若手のみだ。ここからが本当の打ち上げと言ってもいい。本日は皆、大儀であった。←偉そうに
「で、麻雀は?」
「お前そればっかだな。ちょっと待て、打ち上げ終わって他のメンバーが帰ってからだ。遅くとも九時には終わるから。」
やれやれ、直哉はハマり過ぎだ。金銭を賭けてる訳じゃないからいいけど、将来ギャンブルにのめり込みそうで心配だよ。くれぐれもパチンカスにはなるなよ。アレは将軍様にミサイル代を献上してるのと同じだからな。
麻雀出来そうなメンツとしては、俺、直哉、朋照、誠司、貴教くらいか、新はやらないんだよな。最近の大学生はそんなものなのかもな。
「貴教、打ち上げの後、麻雀やるけどお前さんもやる?」
「いや、明日も仕事なんで遠慮しますわ。」
「そっか、そうだよな。学生だけだよな、この時期暇なのって。」
「先生も学生じゃないじゃないですか。」
「俺はいいんだよ。自営業だし。経営者だし。今日だって十二時には終わるつもりだし。」
「だしだしって……いい出汁がとれそうですね。」
「麻雀やるのがお手伝い要員確保の条件だったんだよ。だから直哉が必死で集めて来たんだ。」
「あー、そういう……」
「なので仕方なくだ。そのあたり誤解無き様に。」
「へいへい、そういう事にしときますわ。」
打ち上げ終わって若手も帰って行く。この場には俺と三人の麻雀メンバーだけが残った。さぁ、久しぶりにやるか。
まずはルールの確認、賭けて無いから適当でもいいんだけど、はっきりさせておいた方が役作りの指針になるしな。場主は俺だから俺ルールを採用させて貰う。別に独自ルールって訳じゃ無く一般的なものだ。ただやる前にはっきりさせておくことが重要なのだ。うちでは大体以下の様なルールでやる事にしてる。
一般的なリーチ麻雀で、東風戦、南風戦のみの半荘、西入、北入は無
二万五千点持ちの三万点返しでオカ(トップ賞)は二万点、ウマは無
箱割れによる飛び無
一発、裏ドラ、槓裏、喰い断、自摸平和有
(但し、自摸平和は20符として計算する)
平和形の喰い断を両面待ちロン上がりした場合は20符とする
(親で1000点/子で700点という上がり役になる事がある)
30符4翻、60符3翻(親で11600点/子で7700点)は満貫に切上げない
七対子は25符2翻とする
流し満貫有
5本場以降の2翻縛り無
八連荘役満無
オープンリーチ無
大車輪、小車輪、四連刻、三連刻無
(以前は認めていたが一般的な役では無い様なので除外した)
赤五牌、花牌、割れ目、ヤキトリは採用しない
ダブロン無、頭ハネで上家側一人の上がりとする
トリプルロン無、流局とする
四風連打、四人リーチ、四槓流れ(複数人によるもの)、九種九牌、全て流局とする
四暗刻単騎待ち、国士無双十三面待ち、純正九蓮宝燈はダブル役満にしない
四喜和に関して、小四喜はシングル役満、大四喜はダブル役満とする
役満が複合する場合は合算する ダブル/トリプル/クアドラプル役満も有
(但し、大四喜は小四喜とは合算せず大四喜として扱う)
例:大四喜[ダブル]字一色[シングル]四暗刻単騎[シングル]はクアドラプル役満になる
こんなものかな。このうちでの基本ルールを印刷した紙を、始める前にメンバー全員に回示して同意を得る。ルール変更はメンバー全員が了承すれば認められる。まぁ大抵は場主である俺が認めないんだけどね。
それと勝者、敗者の処遇についても事前に決めておかなければならない。原則として金銭はかけないで、敗者が勝者に、一回飯を奢るという条件でやっている。あとはそれを半荘毎に決めるのか、トータルで決めるのか、になる。後者はシンプルで、半荘を何回やろうが総合点でトップとラスを決めるやり方である。後者は半荘毎なので、トップとラスが半荘の回数だけ発生する。この場合、トップとラスを回数を加減算する事が出来るというルールだ。どういう事かと言うと…
(数字は順位) 俺 直哉 朋照 誠司 奢る側 奢られる側
半荘1回目 1 2 4 3 朋照 → 俺
半荘2回目 2 4 3 1 直哉 → 誠司
半荘3回目 2 3 1 4 誠司 → 朋照
半荘4回目 4 2 1 3 俺 → 朋照
このケースでは、半荘1回目では朋照が俺に奢るのだが、半荘4回目では逆に俺が朋照に奢る事になった。よって差し引きで奢り奢られの関係はチャラになる。半荘2回目では直哉が誠司に奢り、半荘3回目では誠司が朋照に奢る事になった。誠司は直哉から奢ってもらえる権利と朋照に奢らなければならない義務を相殺、結果として直哉が朋照に奢る事になる。直哉がラスで朋照がトップの回は無かったのだが、トップ/ラス回数を加減算すると結果的にこの様な関係になるのである。
「お前らはどっちがいい?」
「トータルでのトップとラスでいきましょう。奢られる権利や奢る義務はややこしいです。」
「今日だけじゃないし、一日毎にトップラス決めて、奢り奢られは数日にまたがった場合の当事者同士の話し合いで自由にしたらいいんじゃないですか。」
「じゃ、トータルでのトップがラスに飯を奢って貰えるという条件でやろう。一応制限を設けて一回の食事代の上限は千円迄な。あと今日は、というか明日以降もだが合宿中は十二時で終わりだからな。目安として十一時半の時点でやってる半荘で終わりな。」
「りょーかいです。だけど最終日は徹マンでもいいんじゃないですか?」
「最終日のメンツが全員了承したらな。」
翌日の仕事次第だな。仮に仕事が無かったとしても、四日連続麻雀でその後の五日目に徹マンとかやりたくねぇ―。
それでは闘牌開始! 久しぶりだから牌を積むのがしんどい。全自動雀卓が欲しいな。今は結構お安くなってるんだっけ? まぁ年に数回しかやらんから買うつもりは無いけど。
半荘三回の結果、目出度くトップを獲らせていただきました。自模り四暗刻と門前清一色絡みの親の倍満上がれたのがでかかったな。あっ、ラスは直哉でした。一番やりたがってた奴がラスとはな。直哉は明日以降も来るから奢られ権利は行使せずとっておこう。俺がラス引く事もあるかもしれんしね。