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小六編 第39話 合宿一日目 流しソーメンの水路を作る

本日2話目の投稿です。よろしくお願いいたします。

 竹林組が帰ってきた。五メートル級を三本、こんなに要らないんだが失敗した時の為の予備ということで。五メートルもあると加工しにくいので、まずは半分に切る。で、鉈で縦に割る。理想は直径の中心、つまり真っ二つに割れるといいんだが……ちょっとズレた様だな。まぁこれくらいならよかろう。


 二メートル半の(とい)状の物が何本か出来た。これをつなげて流しソーメンの水路を作る。二メートル半を四本つなげれば十メートルだが、うちの庭は十メートルの直線距離を確保出来ない。なので途中で折り返す。二つつなげて五メートルの所に桶を置いてそこに水が溜まるようにする。その桶からあふれた分が下流側の樋に流れる様にする。そんでまた五メートル、合計で十メートルだ。水は十メートル分を流れて最終的に排水溝に落ちるのだが、ソーメンは最初の所と折り返しの桶の所からも流すようにする。そうしないとソーメンが桶に溜まって下流側には流れないからね。


 大体のレイアウトが決まったら節を抜く、というか割って壊していく。ハンマーで割って(のみ)で削る。これがきれいに削れていないと、ソーメンが引っかかってうまく流れないからな。それと並行して樋を支える支柱を作る。といっても脚立なんかを利用して、足りない所は余った竹を三脚状に組んで支えとする。


 一番苦労するのはやはり折り返し部分だろう。桶は縁の一部に切り欠きを入れて、確実にそこから水が溢れる様にしているが、その下流側の樋とのつなぎが難しい。水を流してみて上手く水の受け渡しが出来る様にしなければならない。


 何度か試行錯誤をして何とか水だけは上手く流れる様になった。水は一応、上水道のものを使った。口に入る物を流すんだし井戸水では衛生的に不安が残るからだ。あとは実際にソーメンを流してテストするんだが……今日やっちまうか。


 ソーメンを二束ほど湯がく。半分、つまり一束分を最初のスタート地点から流す。桶の手前のあたりで貴教に箸で取らせる。OKだ。もう一束分を折り返しの桶の部分から流す。最後の部分で新に取らせてみる。こちらもOK。よし二人共、めんつゆをやろう。薬味は無いけど勘弁な。


 水路が出来た事で、いつでも流しソーメンが出来る様になった。明日の昼食は流しソーメンでいいかな。せっかく作ったんだし一回だけじゃ勿体無いから二回位はやってもいいな。


「明里、明日はソーメンでいくことにした。食材の調達について相談したい。」


「それなら今日程大変では無いですね。カットとかもありませんし、湯がく量が多いだけで。」


「あとはめんつゆの準備だな。薬味とかもあるし。子供は薬味が苦手なのもいるから難しいな。」


「それだったらめんつゆと薬味は別々に用意しといて、その人が入れたいものだけ入れる様にすればいいんじゃないですか。」


「そうか、セルフ方式か。」


「〇亀うどん方式です。」


「やめろ!あれを讃岐うどんとは認めん!うどんの国の名にかけて。」


「えー……」


 我ながら大人げないな。


「薬味って何が必要だ? (ねぎ)胡麻(ごま)生姜(しょうが)山葵(わさび)とか?」


「そうですね、好みが分かれるとこですね。」


「美沙恵さんとも相談しよう。俺としては葱は必須だな。葱はうちの畑の使えばいいから買わなくていいぞ。当日採って刻めばいい。」


 葱はうどんやソーメンで使うのでうちの畑の常備品なのだ。客が畑から採って自ら刻んで薬味にする。実際そういう究極のセルフうどん店がうどんの国には実在した。今もあるかどうか知らんけど。


「分かりました。お母さんと相談します。ソーメンは何人分……というか何束要りますかね。」


「明日の参加人数は…塾生とお手伝い合わせて35人位だな。倍の70束位用意しといてとりあえず40から50束位湯がいとけばいいんじゃないか。余ったら二回目に回そう。」


「そんな感じですね。」


 気付けばもう五時だ。社会見学組が帰ってきた。何か美沙恵さんが明里と話している。明日の食材についてだろうか。


「何か歴史民俗資料館でお母さんの名前があったって言ってるんですけど……」


「えっ、美紗恵さん、ついに歴史上の人物になっちゃったの?」


「違うんですよ、先生。私が高校の卒業記念にクラスで作った物が資料館に展示されてて、そこにクラス全員の名前が載ってたんですよ。ちょっと恥ずかしかったわ。」


「美沙恵さんの高校時代って……」


「それ以上言ったら……」


「し、失礼しました。それで何が展示されてたんです?」


「昔の城下町時代の街並みを再現した模型でね、ジオラマ?っていうのかしら。今みたいに埋め立てとかされてなくてお城が海際にあった時代のね。」


「それって確か江戸時代より前の戦国期のものですよね。美沙恵さん、その頃から生きて……」


「はぁ?」


 すっげぇ睨まれた。怖いです。


「何でもないです……ごめんなさい。」


 うむ、やはり年齢に絡む話は女性にはタブーの様だな。


「あっ、そうだ、美沙恵さん。お借りしているバーベキューコンロと鉄板なんですけど、返すのは合宿終わってからでもいいですか? ひょっとしたらもう一回くらい使うかもしれないんで。」


「それは問題無いですよ。うちも使う予定はないし。」


「ありがとうございます。それではそういう事でよろしくお願いします。」


 ふぅ、なんとか話題が逸れてくれたぜ。


「あっ、婆ちゃん。ご苦労様です。大変だったでしょう。」


「いやいや、あれ位は歩かないと。そうそう、桜宮神社で桜田さんにお会いして事情を話したら、神社の成り立ちや歴史なんかを子供等に案内というか説明してくれたわよ。ちゃっかりラジオ体操の宣伝もしてたけど。」


「それは良かった。婆ちゃんが一緒だったから桜田さんもうちの教室の子供だって分かったんですね。ありがとうございます。今度俺からもお礼言っときますよ。」


「そうしてちょうだい。顔は売っとくものね。」


 社会見学組も案外有意義だったみたいだな。ところで彩音はどうしてたかって?あいつは宿題もしていたようだが、途中からはずっとPCとペンタブで「グヘヘヘ」とか言いながら例のモノ(BL)描いてたよ。頼むから他の子供等には見つからん様にしてくれよ。


 とりあえず初日が終わった。いや厳密には今日のプチ打ち上げがあるんだけどな。それと直哉が麻雀を手ぐすね引いて待ち構えている。言っとくけど十二時までだからな。

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