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小六編 第38話 合宿一日目 バーベキュー

 朋照が焼そばを焼く、およそ十人分だ。誠司が紙皿に盛る、小学生共がそれを受け取りかっ食らう。隣では直哉が次の十人分の具材を炒めている。おかわりは自由だ、いくらでも食らうがいい。バーベキューが食えなくなる位に!


 小学生はとりあえず一回りしたな。では二周目行こうか。皿と箸は捨てるなよ。それは焼きそばのおかわりだけでなく、バーベキューの取り皿としても使うんだから。小学生の中には早くも三周目に入った奴もいるな。よしよし、いいぞ。


貴教(たかのり)(あらた)、そろそろそっちのコンロも火入れしてくれ。ほれ、着火マン。」


「「りょーかいです。」」


 屋島(やしま)貴教(たかのり)、専門学校を出た後、地元で就職したOBだ。その一コ下の城谷(しろたに)(あらた)は大学へ進学した筈だが、もう卒業する頃じゃなかったか?


「大学院の修士課程(マスターコース)に進んだんで、まだ学生です。今、修士二年で来年就職です。」


「工学部だったよな。もう就職先は決まってるんだろ。」


「えぇ、自動車メーカーに。」


 優秀だな。国立大理系大学院出の修士で自動車メーカー勤務とは。


「貴教は福祉関係の仕事だったっけ?」


「介護士ですね。老人介護施設の職員です。」


 皆、ちゃんと社会人してるんだな。


「すまんが午後から二人とあっちの三人で流しソーメン用の竹を取りに行ってくれ。二人とも行った事あるよな。」


「先生は?」


「俺は体力的に厳しいから若いのに任すわ。直径10㎝位のを二、三本、長さはそうだな、三、四メートルあれば十分だ。」


「確かちょっと曲がってるのがいいんでしたっけ。」


「往復の水路作るから少し曲がっているのが理想だが、そこは何とでもなるからこだわらなくていいぞ。真っ直ぐでもV字型にすればいいし。」


「あと太さは出来るだけ均一にした方がいいんですよね。」


「まぁそうだが自然の竹なんだから均一になる筈も無い、適当でいいぞ。」


「太さが途中で変わっちゃったら水流の速度が変わりませんか?」


 新が理系っぽい事を言う。


「それはひょっとして流体力学的な意味で言ってるのか?」


「そうです。極端な事言うと水路断面積が半分になると速度が二倍になりますし……」


 流体力学の基礎だな。


「それはパイプや導管みたいに密閉された様なケースだとそうなるが、竹を割って樋状にするんだから上側が解放されてるだろ。水路が細くても水は上に逃げられるんだから自然と断面積も広くなる。だからそんなに変わらんよ。」


「そっか……そうですよね。失礼しました。」


「まさか流しソーメンで流体力学について議論するとは思わんかったわ。それと出来れば節があまり無い竹を選んでくれ。節が多いと抜くのが大変だからな。」


 バーベキューコンロの方も準備が出来た様だ。それでは食材召喚!


「明里、バーベキューの方も持って来てくれ。」


「はーい!」


「焼きそば担当の三人も適応な所で切り上げてこっち来てくれ。」


「待ってました!」


「かしこまりー!」


 焼きそば先行作戦は功を奏したようだ。特に小さい子は、焼肉や野菜は腹にそんなには入らなかった様だ。お手伝いのOBや大人もバーベキューにありついてワイワイやっている。


「ビールが欲しいところですね。」


貴教がそんな事を言う。


「駄目だぞ。未成年が一杯いるからな。打ち上げまで我慢しろ。」


「へーい、分かってますよ。」


「そういやお前さん、平日だけど仕事はいいのか。」


「昨日が出勤日で今日が休みになったんですよ。介護施設っちゅう所は土日でも交替で誰かが必ず居なくちゃならんので、カレンダー通りの休日にならんのですわ。」


「そういうことか。明日は?」


「残念ながら出勤日ですね。今回の合宿では今日位しか参加出来ないと思います。」


「すまんな、せっかくの休日に。」


「ま、たまにはこういう休日があってもいいでしょ。」


 食後のデザートは竹内の婆ちゃん差し入れのスイカだ。女性陣に切ってもらって一切れずつ皆に渡す。種は畑に吐き出すんじゃないぞ。芽が出ちまう。実際には芽が出ても育たないけどな。雑草扱いになって草取りが面倒臭いんだよ。


 合宿スケジュール的には午後の部になった。レクリエーションの時間だが今日は自由時間だ。


「社会見学希望の奴は居るか?」


「社会見学って何見るんですか?」


「郷土の歴史探訪だ。歴史民俗資料館の見学や寺社仏閣巡りだ。自由研究のネタになるかもしれんぞ。」


 自由研究のネタという所に何人かが興味を示した様だ。希望者は……八人か。さて、引率を誰にするか。俺が行ってもいいんだが、どちらかというとここに残って片付けや明日以降の準備の指揮を執りたいからな。


「二十歳以上の人で誰か引率お願いできませんか?」


「それなら私が連れていきます。資料館と近所のお寺とかに連れて行けばいいんですよね。」


 美沙恵さんが手を上げてくれた。


「先生、私も行っていいかね。」


「婆ちゃん、いいんですか? 月子は行かない様ですけど。」


「健康の為に歩こうと思って。神社にラジオ体操行ってるし、桜宮神社にも連れて行くわ。」


「そうですか、すいませんがよろしくお願いします。」


 婆ちゃんと美沙恵さんが社会見学組の八人を連れて、まずは資料館へ向かった様だ。


「明里は中高生の女子と一緒に食器類の片づけを頼む。紙皿、紙コップ、割箸は捨てるんだが、軽くでいいから洗って、濯ぐくらいでいいぞ。そんで同じ物を重ねてこの箱にまとめて入れといてくれ。洗っとかないと臭くなるからな。外の蛇口の水使ってくれ。残飯や野菜くずの生ゴミはこっちの箱な。後で土に埋めるから、ビニールなんかが混じらない様に気を付けてな。ビニールやプラスチックは土に還らないから。」


 明里に段ボール箱を渡す。次は男子への指示だ。


「貴教、新、朋照、誠司、直哉はさっき言った通り竹の調達だ。特に下の三人は今後の事もあるから、上の二人に竹の選び方なんかをよく聞いておく様に。竹の笹の部分や上の方の細い部分は切り落としてそのまま竹林に捨ててきていいから。ここまで持って帰って来たら邪魔になるし。」


 竹林組に鋸と鉈を渡す。竹林組って書くと何か建設会社みたいだな。竹林に捨てるというのは竹内家には了承を貰っている。もっと言うと使い終わった竹の樋も竹林に捨てに行ってるのだ。


「その他の中高生男子は俺と残ってバーベキューコンロの片づけだ。とりあえず今はまだ熱いから触るな。上の焼き網と鉄板だけ外して洗うんだ。コンロはしばらく放置で、ある程度冷めたら軒下に重ねるんだ。」


 コンロは合宿中にまた使うかもしれないからな。後で使うならこのままにしといた方がいい。勿論、消し炭の処理はきちんとやっとかないと危ないけどな。


「先生、洗い物終わったよ。はいこれ、紙の食器の箱と生ゴミの箱。」


 女子の方は早々に作業を終えた様だ。


「紙の食器の方は倉庫に入れといてくれ。生ゴミの方は俺が今から埋めるわ。」


 生ゴミの箱を受け取り、シャベルを持って畑の隅に行く。この量なら四、五十センチも掘ればいいかな。そうだ、消し炭も一緒に埋めてしまえ。活性炭効果で消臭にもなるだろ。消し炭が活性炭になるのかは疑問だがな。


「手が空いたものから社会見学に行かなかった小学生の面倒見たってくれ。竹林組が帰って来たら男子には竹の加工のヘルプを頼むかもしれんから、そん時はよろしく。」


 なんだかんだで合宿は忙しい。忙しいがそれが楽しいのだ。だから何年も続けてるんだろうな。

最後までお読みいただきありがとうございます。今話でやっと10万文字を超えました。今後ともよろしくお願いいたします。後ほど本日2話目を投稿します。

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