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小六編 第37話 合宿一日目 考えましょう

本日、2話目の投稿になります。よろしくお願いします。

 いよいよ今年の合宿が始まった。朝から子供等が集まって来る。最初に「おはようございます」とあいさつした後、今日のスケジュールや注意事項を伝える。午前中は勉強、夏休みの宿題メインで宿題ならば絵を描くことや工作、書道――小学校的には習字かな――等も認める。周りと相談してもいいし、上の子や大人に質問してもいい。但し、あまり騒がしくしない様にな。昼飯は庭に出てバーベキューだ。十時頃になったらOB達とバーベキューコンロや食材の準備を始めなきゃならん。多分その頃には婆ちゃんが差し入れ持って来るだろう。午後は自由時間。宿題の続きやってもいいし、ゲームやってもいい。引率の大人に付いてもらって社会見学――殆ど散歩になるが――に行ってもいいぞ。あとOB男子の何人かは竹の調達に行く様に。


「先生、これどうやって解くの?」


 彩音か……初っ端から聞いてくるなよ。どれどれ……と宿題の冊子を覗き込む。おっと、このページに関しては殆どは埋まってるじゃないか。この間俺が行った通り、自分で解ける問題は済ませておいて、自力で解けない難しい問題を合宿で質問するという、彩音曰く、ズルい方法できたか。えーと何々……所謂(いわゆる)文章問題か。考えましょうというヤツだな。


問題 A君はチョコレート2個と飴玉8個を買い480円払いました。

   B君はチョコレート2個と飴玉5個を買い390円払いました。

   チョコレート1個と飴玉1個の値段はそれぞれいくらでしょう。


 中学生以上ならチョコレートの値段をx、飴玉の値段をyと置き、連立方程式を作ってxとyを求めればいい訳だが…


2x + 8y = 480

2x + 5y = 390


 これを解いて x=120、y=30、つまりチョコレートは1個120円、飴玉は1個30円だ。ただ小学校の算数にはまず、xやyと置く、という概念が無い。なのでこの方法は使えない。こういう場合は図を描いて説明するといい。


A君 480円 [チョコ][チョコ][飴][飴][飴][飴][飴][飴][飴][飴]

B君 390円 [チョコ][チョコ][飴][飴][飴][飴][飴]


 ここまで描けば頭のいい奴や勘のいい奴ならすぐ分かる。


「これで分かるか?」


「あー、成程、飴三個分の差が480円と390円の差、えーと90円になるんですね。ということは90÷3=30で飴は1個30円か。」


「正解、じゃチョコは?」


「飴8個は30円×8=240円、480円から飴の分240円を引くと480-240=240円、これがチョコ2個分だから240円÷2=120円、チョコは1個120円です。」


「念の為、B君の方にも当てはめて計算してみるんだ。それでも合ってたら間違いない事が分かる。これを検算と言う。」


「えーと、チョコ120円×2=240円、飴30円×5=150円、240円+150円=390円、合ってますね。」


 小学生の算数でこの手の問題が出る場合、片方――今回はチョコ――の数が同数になっている。連立方程式で言うとx項の係数だ。なので図で描くともう一方――今回は飴――の個数の差がトータルの金額の差になる様に問題がなっている。でないと連立方程式を使わないと解けない。連立方程式を使わずに解く、しかも小学生でも理解できる様に、というのは慣れないと案外難しいのだ。


 その後、何人かの小学生の質問に答えてやっていると、買い出しから明里が帰って来た。母親の美沙恵さんも一緒だ。


「お肉、お野菜、飲み物、紙皿、紙コップ、アルミホイール、その他、必要になりそうな物、買ってきました。」


「ご苦労さん、大変だったろう、幾ら位かかった?」


「一万六千円位ですかね。あっ、これレシートとおつりです。」


「サンキュ、悪いが引き続き野菜のカットとか、食材の準備頼む。美沙恵さんもよろしくお願いします。」


「えぇ、勿論です。」


 うーん、相変わらず美沙恵さんは動きがいい。婆ちゃんも差し入れ持って来た。やっぱりスイカだった。婆ちゃんも食材の準備、お願いします。中学生達には子供の面倒、特に勉強の方を見てやる様に指示しておいた。高校生以上の男連中はバーベキューコンロの設営だ。十一時半位から火を入れ始めるからそれ迄に用意するぞ。今回は焼きそばもやるんだったな。玄田家から焼きそば用の鉄板も借りて来てある。結構でかいな。重いし……コンロ潰れないだろうな。よく考えたらこのコンロも玄田家のヤツじゃないか。つまり実績有という事だな。少しずつではあるがコンロの設営が進み、いつでも火を入れれる状態になった。


「明里、食材の方はどうだ?」


「カットなんかは終わって、今は食器や箸、コップの準備してます。」


「コンロの方はもう火を入れようと思ってる。適当な所で食材持って来てくれ。」


「分かりました。」


「よーし、それじゃ火入れるぞ。」


「「うぃーす」」


「まず焼きそば用のコンロからだ。今回初めてだから最初にやっとこう。」


「着火していいですか?」


「おぉ、頼む。」


 直哉が火を着け、誠司が扇いで火力調整をする。朋照は鉄板の担当だ。


「朋照、すまんが鉄板の方頼む。お前ん家のヤツだから俺らよりは慣れてるだろ。焼きそば担当だ。」


「へいへい、そうなると思ってましたよ。肉の差し入れはお願いしますよ。」


 俺は朋照の横にツツツと移動し、こそっと耳打ちをする。


「実はさっき食材の方を見て来たのだが……今日の人数に対してバーベキューの食材の量が心もとない様に見えた。そこで今回の君のミッションだが……バーベキューはコンロの準備が出来ていないとか適当に理由をつけて遅らせる。子供等には先に焼きそばを食わせ、腹を一杯にさせる。そんで適当な所でバーベキューにシフトさせるが腹一杯であまり食えない、という状況にするんだ。尚、このテープは自動的に消滅する。」


「テープってなんすか?」


「突っ込むとこそこかよ!」


 そういえばこいつ等の世代だとメディアとしてのテープを知らないんだろうな。MDでも分からないかもしれない。今ならばデジタル音源なんだろうな。mp4とかなら通じるのかな。ジェネレーションギャップを感じざるを得ない。


「とにかくだ、焼きそばを焼いて焼いて焼きまくれ。心配しないでも交代要員はつける。まずは立ち上がりを任せる。あとは直哉とかに教えながら交代できる人員を育てるんだ。」


「えぇー……」


「バーベキューの方が余れば余る程、肉が回って来るぞ。」


「さぁ、焼きますよぉ!直哉、モリジ、サポートよろしく。あと途中で交代するから要領見ておけよ。」


「二人も頑張れば頑張る程、肉が回って来るからよろしく。」


 明里には焼きそば用の食材を優先して持って来させよう。あとこの三人には午後からは竹取の仕事がある。さすがに三人だけじゃ不安だからもう少し上の者も付けるか。そうだな、貴教(たかのり)あたりを付けとけば大丈夫だろう。あいつなら何度か俺と一緒に竹林に行ってるし。


 よし時間だ、明里、焼きそばの材料を持って来るんだ。君の弟がバシバシ焼いてくれるぞ!

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