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小六編 第27話 アッーーーーー!

 神社でラジオ体操カードを無事?ゲットした彩音は文句を言い乍ら帰って行った。帰る前に


「携帯番号、登録しといて下さいね。」


「小学生なのに携帯というかスマホ持ってるとか……最近の子はすごいな。」


「私のじゃないです。先生の目覚まし用にオカンから借りて来たんです。」


「そうなんだ、じゃ登録は『持永母』とでもしておくか。」


 そんなやり取りをして俺も自宅に戻って来た。よし、寝るぞ。こうやってまた有意義になるかもしれなかった時間を無駄にしていくのだろうな。


 起きるとまた昼を過ぎてた。なんかこのパターン多いな。少し遅い昼飯を食っていると誰か尋ねて来た。


「先生、少し早いですけど教室開けて貰っていいですか?」


 彩音か、今はと……二時か。まぁ一時間くらい早いのはよかろう。


「どうした、早いな。」


「マンガ見せに来たんですよ。皆が来ない内にこっそり見せようと思って。」


 成程、まだ大勢に見せるのは恥ずかしいという訳か。


「分かった、見せて貰って感想を述べようではないか。」


「PC立ち上げるので少し待って下さい。ビューワーで見やすい様にjpgファイルに変換しといたのですぐ見れます。8ページしかないしね。あっ、でもベタや背景は入ってないから本当にストーリーが分かるレベルでしか無いので、その辺はあまり期待しないで下さい。」


「分かったよ。立ち上がったか?」


「はい、これになります。」


 彩音があるファイルをダブルクリックして1ページ目を表示させる。


「2ページ目以降はマウスのホイールでページが進みますから。」


「どれどれ……」


 彩乃がPCの前を譲ったので正面に座り、画面を覗き込む。


「こ、これは……」


 1ページ目は眼鏡を掛けた男性に屈強な男が所謂(いわゆる)壁ドンしている場面から始まっていた。なにか二人で言い合っている様だ。2ページ目から何か様子がおかしかった。何故二人ともズボンを脱ぐ。屈強な男は上まで(はだ)けてキムキな筋肉を晒していた。これはひょっとして、ひょっとして、恐る恐るマウスホイールを回し、5ページ目に進むと……


「アッーーーーー!」


 5ページ目と俺のセリフがかぶっちまったじゃねぇか。


「おいー、なんちゅーもん描いとるんだ! そして何故俺に見せる!」


「感想を、と思いまして。お気に召しませんでしたか?」


「召すか―!」


「むぅ、まぁ召さないというもの一つの感想ではありますね。出来れば最後まで読んだ上で感想頂きたいのですが。」


「読みたくないんだが?」


「まぁまぁ、そう言わずに。読んでる内に気に入るかもしれませんよ。」


「気に入る訳が無いし、気に入ったら気に入ったで大問題だよ。」


「お願いしますよぉ。せめて最後まで。ほらあと3ページですから。毒を食らわば皿までですよ。」


 自分で毒って言いやがった。やっぱり俺にとっては毒の様だ。彩音がしつこいので精神をゴリゴリ削られながら最後まで読んだ。最後は眼鏡男が勝ち誇った様な顔で勝利宣言していたが、どうしてそうなったかは覚えていない。きっと俺の記憶から消してしまいたい様な場面展開があったのだろう。


「で、どうでした? 一応解説しておくとこのメガネ男子の誘い受けっていう王道パターンなんですけど。」


 そんな専門用語言われても分からんわ。というか記憶から消してしまいたい。


「どうでしたと言われてもな……こういうのがあるっていうのは知ってたが……BLだっけ? 実際に見せられるとな……ショックだわ。」


「そんなショックを受ける程良かったって事ですか?」


「違うわ!そんな訳無いだろう。一つ分かったのは予想通りというか、俺には無理だって事だ。」


「えー、そんなぁ…先生なら理解してくれると思たのにぃ。」


「何故そう思った。これ所謂『女性向け』ってジャンルだろ? 常識的に考えて男の俺に理解を求めるのがおかしい。」


「えー、だって……ここ『衆道(しゅうどう)教室』じゃないですか。こういうのを追い求める所でしょ?」


「確かに『修道(しゅうどう)教室』だが……ちょっと待て、そっちの『しゅうどう』じゃない!」


「分かってますよ、最初は『衆道』の方かと思ったけど、さすがにそんな大胆な名前つける訳無いですよね。でもツッキーに『しゅうどう』教室って言われて興味持ったのがきっかけですから、あながち勘違いでも無いんですけどね。」


 ちょっと気になる事があった。これをはっきりさせるのは怖い気もするが……恐る恐る聞いてみる。


「ちなみにだがな……月子は知ってるのか。お前がその……こういうのを描いてるって事は。」


「一応は。ここまではっきりしたのは見せた事は無いですけどね。」


 成程、そりゃ、お前の作画やりたがらない訳だわ。


「で、感想ですけど。」


「勘弁してくれ。俺には無理です。」


「そうですかぁ……残念。」


 シュンとしてやがる。そんなに俺に理解して欲しかったのか。


「勘違いしないで欲しいのだが、人には色んな趣味嗜好があるから、お前がどんな絵を描こうがお前自身を否定するつもりは無い。お前の趣味を否定する事もしない。俺の嗜好には合わないってだけだ。」


「じゃあ、これからも修道教室(ここ)でBL描いてもいいんですか?」


「いいけど修道には小さい子もいっぱいいる。その子達には見せない様にしてくれ。そういうのを描く時は教室の一番後ろの端っこでやれ。後ろに誰も回り込めない様にして画面を見られない様にしてな。」


「えー、面倒ー、それに布教活動したいのにー。」


「それは布教では無く『腐教』だ。やるにしても中学生以上、出来れば高校生以上にしてくれ。小学生は許さん。」


「私自身が小学生なんですけど……」


「そこだよ、なんで小学生でこんな……というかこういうのって所謂R-18作品だろ。小学生というか未成年が見るのNGじゃないのか。」


「R-18作品を未成年が買ったり未成年に売ったりするのは駄目でしょうけど、未成年が描くのは規制が無いでしょう。というかそんなの取り締まり様が無いですよ。」


「た、確かに……でも未成年が描いたR-18モノを即売会に出すのはどうなんだろう。倫理的に拙い気がする。」


「そういうジャンルって出展自体が未成年には認められて無いと思いますよ。」


「そ、そうだよな。そりゃそうか。」


「だから委託販売とかで売ってるんだと思います。」


 売ってるのかよ!


「まさかとは思うがお前も……」


「やだなぁ、私の画力じゃ受けてくれる所なんて無いですよ。そういう伝手もありませんし。」


 まるで伝手があればすぐにでも委託したいと言わんばかりだな、こいつ。とりあえず周りの小さい子等に影響を及ぼす事の無き様、厳重に監視する必要がありそうだ。

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