小六編 第23話 データベースのリンク化
そう言えば次回の教室の日は今月最終週で検定の課題を仕上げなければならない日、という事は月謝袋を渡さないといけない日でもある。書道教室の月謝は月額で金額が決まっており、修道の方も同じく月定額だからそんなに難しく考える事は無い。大変なのは半紙、墨液等の消耗品を物販した分の集計だ。これを各塾生毎に集計して月謝と一緒に請求しなければならない。月の最終週に請求明細書を同封した月謝袋を塾生に渡し、次の教室の日、即ち翌月最初の週に持って来て貰って集金している。この事務処理が面倒なんだよな。
月謝袋というか請求明細書は最終週に渡す訳で、最終週に物販した物はその集計には間に合わない。なので物販品については前月最終週から今月第三週迄を集計して今月最終週(第四週)に渡し、来月第一週に集金する事になる。このサイクルで長年やってるのだがもっといい方法は無いものだろうか。
一番面倒なのはやっぱり塾生毎の集計だろうな。教室で塾生が半紙だ墨液だとその都度買っていくのだがそれを帳簿に記帳し、後でまとめてPCに入力していく。大抵はその教室の日の夜か翌日には入力するのだが、ついつい後回しにして翌週にまとめて二週分の入力をする羽目になったりする。来週は月謝袋を渡さなければならないのだからそれ迄には請求明細書を作らなければならない。今回は後回しには出来ないのだ。
帳簿からPCへ転記するのは大変だが、それさえやってしまえばあとは塾生毎の請求明細書が作られる様なシステムを作っている。例によってExcelのマクロを使ったものだ。物販の品目がプルダウンメニューで選択出来、単価もデータベースから引っ張ってこれるので後は購入者――これもプルダウンで選べる――と数量を入力すれば自動的に集計して請求明細書に反映させてくれる。今にして思えばExcelでやるよりAccessなんかで作った方が簡単だったかな。
よく考えたら帳簿へ記帳してからPCへ再入力なんかやらずに直接PCに入れればいいじゃんか。教室の俺の席の隣にノートPC立ち上げておいて購入されたらその都度PCに入力、そうすれば二度手間が無くなる。何か問題あるかな。無い様な気がする。テスト的に次回の教室でやってみるか。
ちなみに請求明細書は以下の様なフォームで出力される。一番下の、この場合は11,000円を月謝袋の8月の所に記入し、この明細を同封する。
請求明細書
白鳳 太郎 様
月謝 金額
書道教室(8月分) 5,000円
修道教室(8月分) 3,000円
月謝小計 8,000円
月日 物販品目 単価 数量 金額
6.26 半紙(50枚) 200円 1 200円
7. 4 半紙(50枚) 200円 2 400円
7. 4 墨液(400ml) 800円 1 800円
7.11 半紙(50枚) 200円 2 400円
7.18 半紙(50枚) 200円 1 200円
物販小計 2,000円
合計 10,000円
消費税 1,000円
請求金額 11,000円
どうせなら月謝や物販金額をすべてデータベース化して、事業用の帳簿にリンク出来ると便利かな。そうなるとやっぱりAccessかな。ちょっと考えてみるか。こういうシステム作りはちょっとワクワクしてしまう。まずは仕様書作りから……ってそこまで頑張る事はないな。遊びのつもりで行き当たりばったりで作るのも楽しいもんだしな。
と、思っていたのだが……何だかんだで面白くなってきてAccess使ったデータベース化が出来てしまった。物販品の入力もしやすい様にしたし、請求明細書だけならこのシステムで出力できる。事業用の帳簿とのリンクはまだだが、それを踏まえたデータベースを構築したので、あとは帳簿側をゴリゴリ更新していくだけだ。
興がのったというヤツだろう、途中から妙なテンションで一気に作り上げてしまった。おかげで久しぶりに徹夜しちまったよ。午前中はしっかり休んで、つまりは寝て午後からの修道教室に備えよう。今は……もうすぐ六時か。そうだ、ラジオ体操行ってみよう。ちょっと運動した位の方がぐっすり眠れるだろうし。
昨日、桜田さんから教室に貼ってくれと頼まれたラジオ体操のポスターを見る。神社の境内でやるのね。うちから徒歩十分位だったな。朝の散歩とシャレ込もうか。うん、やっぱり何かテンションがおかしい。
という訳でやって来ました、桜宮神社。境内にはもう何人か来ている様だ。ラジオも既に用意されていて、某公共放送(笑)のアナウンサーが朝のニュースを読み上げている。
「あれっ、先生も来たんかね。」
竹内の婆ちゃんに声をかけられた。昨日、行ってもいいかと桜田さんに聞いてたしな。
「婆ちゃん、おはようさんです。たまたま早起き……というか徹夜の作業してまして、そのまま勢いで来ちゃったんですよ。」
「あらー、不摂生ねぇ。駄目よぉ。」
「ちょっと気分がノっちゃって。作業を中断するのが惜しかったんですよねぇ。」
婆ちゃんとそんな会話をしていると桜田さんが話しかけてきた。
「竹内さん、それに先生も。ご参加ありがとうございます。」
「桜田さん、おはようございます。今日は偶々でして……明日からも来れるとお約束は出来ないんですが……申し訳ありません。」
「いえいえ、来られる時に来て頂ければ構いませんので。夏休み中は土日祝日関係無くやりますので、機会があればよろしくお願いします。」
「それにしても神社でラジオ体操とは……こういうのって自治会とか子ども会でやると思ってましたけど。」
「勿論、子ども会でも公園とかでやってますけど、神社も広い場所があるのでやってみようかと。神社っていうのは人が来てナンボってとこがありますので。ぶちゃけると集客の一環です。」
成程、うちの修道教室も似たような物だしな。うちの塾生も小さいのが何人か来てるな。ラジオ体操カードを首からぶら下げるのは今も昔も変わらないんだな。
そうこうしている内に六時半になり、これまた昔と変わらない歌がラジオから流れて来た。新しい朝が来たってヤツだ。ほっといても朝は毎日やって来るんだけどな。それ、イチ、ニィ、サン、だ。




