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小六編 第22話 スキャナ貸出し

「早速ですがスキャナ貸して下さい。」


 月曜の修道教室、彩音が来て早々スキャナよこせと言ってきた。


「へいへい、約束だったな。」


 事務所からプリンタを引っ張り出す。電源コードの抜き差しが面倒なんだよな。抜け防止でひねるタイプのコンセントだし。


「ほれ、これだ。好きな所に置け。コンセントは自由に使っていい。スキャナとPCなんかの設置が終わったらWi-Fiとかの設定してやるから知らせろ。」


「はーい、お願いしますね。」


 嬉々として店を広げ始める彩音。本当に楽しそうだな。


「設置完了です。設定お願いします。」


「おうよ。まずはWi-Fiでネットにつながる様にしてないと……パスワードは、と……ブラウザは……Crome(クロメ)か、これを立ち上げて……よし、ネットにはつながってるみたいだな。」


 この辺りは簡単だな。最近のOSだと簡単にNetWork環境が構築出来てしまう。昔は結構苦労して設定してたんだけどな。


「あとはプリンタとつなげる訳だが……彩音、自分ちのプリンタもカノンだったよな。だったらこのPCにカノンのプリンタユーティリティ入ってないか?」


「どうでしょう? コマンドメニューにカノンのフォルダがあったからそこにあるかも。」


「どれどれ……あぁ、あったあった。これでプリンタサーチすれば……おっ、認識した。これでつながるベースは出来たな。あとはお絵描きツールから使える様になればいい訳だがそっちは彩音がやってみてくれ。俺じゃようわからん。」


「分かりました。(AYA)ちゃん起動!」


 彩ちゃんって……まぁツールの名前だってのはこないだ聞いたから分かってるんだけどな。


「スキャンコマンドから……スキャナの選択……あぁ、これかな。とりあえず彩からも認識はされてるみたいです。あとはテスト的に実際に何かをスキャンしてみましょう。」


 彩音はスケッチブックの適当なページを開いてスキャナに載せる。その後PCを操作してスキャンを行うみたいだ。


「これで、と……解像度は100dpiもあればいいかな、ネームというかその前段階のラフ画だし。それではスキャン開始!」


 ウィウィ……ウィーン……スキャナがスケッチブックを走査して読み取っていく。解像度は高くないので短時間で終わった様だ。


「どうだ、スキャン出来てるか?」


「ちょっと待って下さい……えーと……あっ、OKです。ちゃんと取り込めてます。」


「どれどれ……大丈夫みたいだな。これでいいな。」


「はい、ありがとうございます。圧倒的感謝!(あっとうてきかんしゃ)」


「はいはい、トーマス、トーマス、と……」


「むぅ、そうスルーしますか。」


 彩音が振ってきたネタを華麗にスルー。いつもいつも相手してたんじゃクセになる。甘やかしちゃいかん。


「一旦PCとプリンタの電源落として、再起動後にもう一度作画ツールからスキャン出来るか試してみてくれ。Wi-Fiパスワードとかを再入力しなくてもいいかどうかの確認だ。」


「分かりました。」


 PCシャットダウン、再起動、プリンタも一旦電源OFF、電源再投入、ネットには……つながるな。作画ツール立ち上げてスキャン、うん、取り込みOK、パスワード入れなくても大丈夫みたいだな。


「よし、とりあえず俺はお役御免だな。あとは好きにしろ。」


 彩音にそう告げたが俺の言葉もそっちのけで、作画ツールとスキャナ操作するのに夢中の様だ。


 やれやれと思いながら他の子等の見回りに向かった。夏休みに入ったし宿題やってる奴も多いからな。早めにやっとくと後で思いっきり遊べるぞ。今ふと思い出したのだが俺が小学生の頃、地区の子ども会で集まって夏休みに勉強会したな。ただ確かに一年生の時はそういう勉強会をやった記憶があるのだがその時だけだ。二年生以降はやったのかな。どうにも思い出せない、という事はやってないんだろうな。上の者が面倒になってやめてしまったのかな。上級生からすれば教えるばかりで自分らのメリットはあまりないからな。俺がこの教室で夏休みに合宿――と言うか夏休みの宿題対策としての勉強会――やってるのは一年生の時のその記憶が深層心理の中に残っていたからなのかもしれない。


「先生、ちょっといいかね。」


 竹内の婆ちゃんが訪ねて来た。五十位の男性と一緒だ。この男性、どこかで見たような気が……気のせいかな。


「あぁ婆ちゃん、いいですよ。何でしょうか。」


「こちらの桜田(さくらだ)さんがちょっと…」


 桜田? 俺が知ってる桜田さんと言えば淳子さんと……確か数年前までうちに通ってた塾生に桜田姓の子がいたけど……


「お久しぶりです。四年前までこちらでお世話になってた桜田(さくらだ)由利子(ゆりこ)の父で桜田(さくらだ)正之(まさゆき)です。」


 あぁー、思い出した。由利子のお父さんか。由利子が小さい頃、教室の何かの行事でお手伝いをしてもらった記憶がある。確か桜田家は神社でこの人も神職さんだった筈だ。


「これはこれは、ご無沙汰しております。お元気でしたか? 今日はいかがしました?」


「お陰様で。実はうちの神社で夏休みにラジオ体操会やる事になりまして、その宣伝と言いますか案内のポスターを貼らせて頂けないかと……こちらの教室は小学生のお子さんが多数集まる場所ですので。」


「成程、そういう事ですか。構いませんよ。」


「はっ、ありがとうございます。教室の隅にでも貼らせて頂ければ……これなんですが。」


 手作り感がハンパないな。でもラミネートしてるし、屋外に貼る事も想定してるのだろう。


「由利子さんは今、大学生ですか? 確か玄田の朋照と同い年だったと記憶してますが。」


「そうです。短大の一年生です。こちらの教室も朋照君に誘われて入った様なものでして。」


「そう言えばそうでしたね。来週、うちの教室では合宿やるんですが、もし由利子さんの時間がとれる様でしたらお手伝いに来てもらう事は可能でしょうか? 朋照とかその同年代の子も何人か来てくれるみたいなんで馴染み易いとは思うんですが。」


「どうでしょう。七月中に帰省してくるかどうか。向こうで遊び惚けてるんじゃないかと。」


「地元じゃないんですね。もし帰省される様でしたら伝言だけでもお願いします。」


「分かりました。あまり期待に沿えないとは思いますが。」


「お願いします。ではポスターは貼っておきます。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。竹内さんも態々(わざわざ)ありがとうございました。」


「いえいえ、私もラジオ体操、行っていいですか? こんな年寄りですけど。」


「勿論です。ちゃんと出席のスタンプも押しますよ。ラジオ体操カードも用意してます。」


 ラジオ体操か……俺も何年か振りに行ってみようかな。早起き出来ればだけど。ポスターに書かれた毎朝六時半よりの文字を見て大分厳しいなと思った俺であった。

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