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小六編 第21話 小娘

本日、2話目の投稿になります。よろしくお願いします。

 静が弁当買って戻ってきた。よしよし、ちゃんと味噌汁も買って来てるな。レシートはと、二人分で1,680円か。まぁこれ位はいいだろ。六時から教室だから早く食っちまおう。


「ところで静は幾つになったんだ?」


 弁当食いながらの他愛のない雑談。


「女性に年齢聞くとか失礼ですよ。先生と一回り違うんですからすぐに分かるでしょ。」


「何、お前今年で48なのか!」


「そんな訳ないでしょ。一回り下ですよ。24です!」


「分かってる。冗談だ。」


 静も24かぁ。年頃の娘がおっさんと弁当食ってるってのはどうなのだろうか。


「大体、休日に行くとこ無いのかよ。先週も今週も俺のとこ襲撃しやがって。」


「先生だって毎週ここに居るじゃないですか。どうせ行くとこ無いんでしょう。訪ねて来た私に感謝してもいいんですよ?」


「うるせぇな。ほっとけや。おっさんに付き合ってくれる奴ぁ居ねぇんだよ。同じ年代の知り合いは皆家族持ちだし。」


「先生に付きまとっていたあの小娘はどうなんですか。都会の大学に行って今二十歳位でしたっけ? 休みとか帰って来てないんですか。」


 小娘て……お前だって俺から見たら小娘だけどな。


「もう暫く会ってねぇよ。そもそも付き合ってた訳でもねぇし。」


「そうなの? 付き合ってるとばかり思ってたけど。」


「そもそも付き合ってるの定義って何だ? どうなったら付き合ってるって状態と言えるんだ?」


「どちらかが告って、もう一方がOKしたらお付き合い成立です。」


「だったら付き合って無いな。どちらも告って無いしOKもしてない。」


「そうなんだ、ふーん。そういう責任の無い状態で先生が弄んでただけなんですね。」


「違うわ。どちらかと言えば俺が振り回されてたんだよ。」


「その状況をいい事にずるずると……」


「暫く会って無いって言ったろう。向こうで男が出来たらしくてな。二年前の夏から俺の前には現れてないよ。」


「付き合う前に終わってた、ってヤツですか。」


「その通りだけどお前から言われると腹立つな。そもそも付き合おうとかそんな意識は無かったからな。」


「当時告られたらOKしてました?」


「どうだろ、多分してないと思うぞ。最初の頃はちょうどいい距離感だったけどだんだんうっとおしくなってたからな。仮にOKしてたとしてもすぐに破綻してたんじゃなかろうか。」


「まぁ元気出しなさいよ。その内いい女性(ひと)が現れますよ。」


 静は俺の肩をポンポンと叩く。上から目線がムカつく。嬉しそうにしやがって。


「ほれ、さっさと食え。もうすぐ六時だぞ。教室の準備しろ。」


「はいはい、ドンマイ。」


 やっぱりムカつくわ、こいつ。


 土曜の夜の教室も無事終わり、中高生には合宿の案内を渡して帰した。社会人にも一応こういうイベントがあり平日だから参加は困難ではあるが、希望者は参加しても構わないから申し出てくれと伝えた。


「先生、合宿の夜はアレやるんすか?」


 直哉(なおや)がそんな事を尋ねて来た。岡林(おかばやし)直哉(なおや)、高校卒業後、専門学校に進んだ奴だがそう言えばこいつも朋照と同い年だったな。書道にはあまり熱心では無かったが、OBになってからもちょくちょく顔を出す。そろそろ合宿だから態々そんな事を聞きに来たのか。専門学校の夏休みってどうなってるんだ? 大学みたく長いのか?


「どうだろうな。メンツが集まればやってもいいが……やるとしても最終日の夜だな。翌日が休みじゃないとキツいだろ。」


「出来そうなら声かけて下さい。即効で行きますから。」


「へいへい、そん時ゃ呼ぶよ。」


「絶対ですよ。じゃっ!」


 本当にそれを聞くだけの為に来た様だ。あいつも好きだねぇ。直哉が言ってたアレってのは麻雀(マージャン)の事だ。高校卒業間際、奴と同い年の男連中に教えてやったらハマった様だ。全員じゃないけど奴は殊の外熱心で、打つ機会があればホイホイとやって来る。符の計算は出来る様になったのだろうか。


 去年の合宿でもOB連中と打ったのだが、その時は直哉達は参戦していない。まだ教えて無かったからな。合宿で麻雀やってた事は後から知った様だが。念の為に言っておくと賭けてはいない。ラス引いた奴がトップの奴に飯を奢る、それ位の平和なものだ。平和(ピンフ)じゃないぞ。こういう緩い麻雀の時、俺は大物手を作る事に注力する。親リーがかかろうがドラポンされようが危険牌も全ツッパでバシバシ切る。振り込んでしまうリスクよりも自分の手役を優先する訳だ。ラスになっても飯奢る位だろ? てなもんである。こんな事やってるから弱いままなんだろうけどな。


 直哉、麻雀だけでなくどうせなら昼飯やレクリエーションの手伝いも来いよ。そうか、麻雀で釣ればいいのか。昼飯以降を手伝って麻雀出来るメンツがそろった場合に限り、夜に麻雀やる。そうすれば直哉が意地でもメンツ、つまりはお手伝い要員を集めてくれるだろう。夜の麻雀は深夜十二時までとかにしとけば翌日もそんなにキツくは無いな。そうだ、そうしよう。


 早速、直哉に電話する。概ね了承、メンツ集め頑張るそうだ。言っとくけど全員、昼から手伝いに来ないと麻雀させんからな。あんまり集まり過ぎても卓抜けしなきゃならん奴が出てくるかもしれんな。いっそのこと二卓でやるか? さすがに八人は集まらんか。


 明日は日曜でお休み、静には襲撃してこない様に釘を刺しておいた。週に一日位はゆっくりしたいものである。昼迄ゴロゴロしてその後は買い物にでも行くかね。主に食材確保の為に。


 来週は……そうだ、彩音がスキャナ使い始めるんだったな。プリンタ周り片付けてないや。明日やっとこう。それと木曜に彩音の母親が来るんだったな。オカンって彩音は呼んでたけどオカンって感じの人なのかな。(どんな人だよ)入塾申込書と説明用資料、それと同意確認書も準備しとかなきゃ。それと……


 土曜は色々あって疲れた様だ。いつの間にか寝落ちして目が覚めたのは日曜の昼近くになってからだった。どうせゴロゴロするつもりだったからいいんだけどね。何か負けた気分だ。

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