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中学生編 第73話  甲羅干し

 明衣(めい)の顔面キックにより朋照(ともてる)との勝負に敗れてしまった俺はジュースを奢らされる破目(はめ)になった。実際には明衣のせいというより彩音(あやね)のせいだろうな。とりあえず来週の修道でグリっとこう。


「いやー、何か悪いっスねぇ。いただきます。」


「あぁ、そういう約束だったからな。気にするな。」


(きみ)は何で先生に奢ってもらってるの?」


 明衣がそんな事を朋照に聞いてくる。しかし実弟に「君」って……変わった姉弟だな。


「ある意味、姉ちゃんのおかげかな。」


「そうだな。結果的にはそうなるな。いやまぁ、元凶は彩音だが。」


「彩音ちゃんが? どゆこと?」


 俺は水泳勝負でジュースを賭けていた事、到着は俺の方が早かったが明衣に蹴り落されたせいで朋照の方が浮島に上がるのが早かった事、明衣が蹴ったのは彩音がたきつけてた事が原因である事を語った。


「それは申し訳ない事をしちゃいましたね。お詫びに先生のジュース代は私が出します。」


「いや、それ位はいいんだ。どうせ朋照には昼のバーベキューの準備で手伝ってもらうからその対価って事で。」


「昼、バーベキューっスか?」


「ちゃんとコンロや炭も持って来てるぞ。玄田家から貰ったでかいヤツじゃなくて元からうちにあった標準サイズのヤツな。」


「そういやお母さんが朝、野菜なんかを切って段取りしてましたね。」


「海水浴場でカッティングするのは面倒だからな。それだけは頼んでおいたんだ。」


 野菜だけは玄田家の負担で買ってもらった。後から請求して下さいって言ったんだがこれ位は出しますって言われてしまったんだよな。コンロ、焼き網、炭なんかは俺が用意したし、肉は俺が負担したんだがな。


「ここ、バーベキューは禁止ではないんですよね。」


「禁止では無いが許可が必要で、許可を貰うには費用がかかる。まぁショバ代払えって事だな。」


「えっ、じゃぁ早めに許可とっとかないと。」


「心配せんでもバーベキュー始めたら管理人がショバ代取りに来るよ。来なかったらラッキーって事になるが、間違いなく来る。許可証の木札持ってな。タチの悪い事に火を起こして焼き始めたタイミングで来るんだ。言い逃れが出来ない様にな。」


 何年か前、会社員時代に職場の行事で来た時に経験済みだ。


「先生、バーベキューの準備、何時位から始めます?」


 美沙恵さんが聞いてくる。今は……十時半過ぎか。さすがにまだ早いよな。


「あと一時間位してからでいいんじゃないですかね。それまでは泳ぐなり浜辺で遊ぶなりゆっくりしてから始めましょう。」


 せっかく来たんだからな。俺ももう少し泳ぎたい。


「もう少し泳いできます。バーベキューの準備までには戻ってきますから。」


「私も行っていい?」


「構わんが浮島で甲羅干しするだけだからつまらんかもしれんぞ。おっと、蹴るんじゃないぞ。」


「踏むだけにしとく。」


「踏むなよ。彩音の言う事、信じるな。」


「それもフリだからって言ってたよ。」


「あのヤロー……」


 一応反論しといたから踏まれる事は無いだろう。とりあえず浮島まで泳いでいくか。明衣も泳ぎながらついてくる。こいつも小学生の頃はスイミングスクールとか通ってたから海でもそこそこ泳げる。でも運動というか体を動かすのは得意なイメージがないんだよな。もっとも陸上スポーツと水泳は別物だと言っていいからな。かくいう俺も水泳以外の陸上スポーツや球技なんかはからきしだ。そういや小学校の時にもそういうタイプの同級生が結構いたな。(おか)では動きが悪いのに水泳だと早いヤツ。あるいはその逆で陸での運動はそつなくこなすのに水泳では――泳げない訳では無いのだが――平均以下になってしまうヤツ。あれ、何でだろうな。勿論、両方とも得意な奴も居るには居たがな。


 よし、浮島に到着だ。今は誰も居ない様だな。うつ伏せに寝転んで甲羅干しだ。明衣も上がって来たな。うん、Tシャツが張り付いてエロいぞ。甲羅干しは……さすがにしないか。俺の横で体育座り――場所によっては三角座りって言うそうだが――の格好で話しかけてきた。


「明日の事、忘れてないよね。」


「忘れてはいないが何も考えてないのも事実だ。どこか行きたい所はあるのか。希望があれば聞くぞ。海水浴じゃなくてもいいぞ。」


「もうちょっと考えて下さいよ。」


「そうは言ってもなぁ……若い娘の嗜好なんて分からんし。」


「まぁ、ぶっちゃけどこでもいいんだけどね。」


「俺は出来るだけゴロゴロ出来るところがいいんだけど、それだと自宅になっちゃうしお前のお礼にもならんしな。」


「(それでもいいんだけどね……)」


「何か言ったか?」


「何でもない。」


 プイッと顔を背ける明衣。変なヤツだな。


「とりあえず明日、うちに来てくれ。それまでに考えとく……と言うか考えといてくれ。」


「準備とかあるのに……」


「水着の準備だけしとけばいいんじゃないか? 使わんかもしれんけど。」


「そうじゃないんだけどな。」


 そうなのか? 女子の準備とやらがよく分からんな。

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