中学生編 第62話 合宿の事後処理
静と別れて四日ぶりの自宅の鍵を開ける。
「ただいまぁー。」
まぁ、誰が返事してくれる訳でも無いんですけどね。
「ミャー。」
あっ、ミユキチが返事してくれた。ヤマトは……あっ、そこで寝てるのね。
「ミユキチ、ヤマト、ただいま。いい子にしてたか?」
ミユキチがスリスリしてくる。何だよ、寂しかったのか? んな訳ないか、ヤマトと一緒だったんだし。
「悪い、風呂行って来るからな。」
シャワーだけさっと浴びて寝室に向かう。ミユキチがベッドの上でお出迎えだ。今日はここで寝るのか? あんまり相手してやれないぞ。とにかく疲れた。そのまま倒れ込む様にベッドへダイブ。おやすみなさーい。
翌朝、起きると十時過ぎだった。うーん、十四時間位寝てた様だ。隣でミユキチとヤマトも寝てる。ミユキチなら俺の隣で寝てるよってヤツだ。寝てても腹は減る。昨日は飯も食わずに寝ちまったからなぁ。何か食い物は、っと。冷蔵庫を開けるとロクなもんがねぇ。四日間も家を空けるからあらかた処分――要は食っちまったって事だ――したからなぁ。これからご飯炊いてもいいけど一時間位かかるしおかずがない。仕方ない、弁当でも買って来るか。おっと、どうせ外へ出るならついでに竹内家と玄田家にお土産持って行こう。まずは隣の竹内家だな。おっ、ミユキチ達も来るのか。エサの補給してもらってたからな。ちょうどおあつらえ向きに庭で洗濯物干してるな。
「婆ちゃん、おはようございます。」
「あら、先生。おはようさん。合宿お疲れ様でした。」
「こちらこそミユキチ達がお世話になっちまって。これ、お礼というかお土産です。お納め下さい。」
お礼を言ってソーメンと名物か〇どを渡す。ミユキチとヤマトも並んで頭を下げる。
「あらあら、気にしなくてもいいのに。」
「一応、月子のお土産とはかぶらない物を選びましたので。」
「ありがとうね。猫ちゃん達、あれでご飯足りたのかしら。」
「ミャン!」
大丈夫だったようだ。
「それでは他にも回る所がありますのでこれで。」
「はい、修道教室は今日からやるのよね。」
「そのつもりです。」
さて、次は玄田家だ。うちからは徒歩十五分位。まぁ歩けない距離ではない。帰りに弁当屋かコンビニに寄るし健康の為にも歩きましょうか。さすがにミユキチ達は来ないな。婆ちゃんにお礼したからミユキチ達はお役御免だ。
「こんちはー。」
「あっ、先生。おはようございます。どうしたの?」
偶々、明衣が居た様だ。
「美沙恵さん、居るか? 合宿のお礼渡そうと思って。」
「ちょっと待ってね、お母さーん!」
「何よ……あっ、先生。おはようございます。合宿お疲れ様でした。」
「こちらこそ合宿ではお世話になりまして。これはお礼というか合同合宿でうどんの国行った時のお土産です。お納め下さい。」
「そんな……勝陽も行きましたのに。」
「一応、勝陽とはかぶらない様に配慮はしたつもりですので。玄田さんとこには家族でお手伝いしていただきましたし、遠慮なさらずお受け取り下さい。」
灸〇んと大量のソーメンを渡す。今は子供が四人揃ってるからこれ位は必要だろう。すぐに食べなくてもソーメンなら日持ちするしな。
「それではありがたく頂戴致します。またお手伝いが必要な時は遠慮なく言って下さいね。」
「お気遣いありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。」
「先生、夏休み中、修道教室に行っていい?」
「そりゃかまわんが……子供の勉強みてくれるのか?」
「うん、子供等が教えてって言えば面倒みるよ。」
「そうか、そりゃ期待出来るな。」
明衣がうちの教室に関われるのはこの夏が最後になるだろう。目一杯楽しめ。
玄田家を辞し自宅へと戻る。おっと、弁当、弁当っと。途中にある弁当屋で焼き肉弁当を買う。よーし、先生、ご飯大盛にしちゃうぞぉ!
自宅で弁当を食い乍らとりあえずやらんといかん事を考える。合同合宿中の荷物の整理、洗濯、費用の会計処理、おっと、合同合宿だけじゃなくうちの合宿の会計処理もしないとな。うーん、なかなかやる事が多いな。でも結局いつかはやらないといけないのだ。手を着けやすい所からやっていくか。まずは洗濯だな。
合同合宿の荷物から洗濯物を取り出し洗濯機を回しているともう昼になっちまった。さっき弁当食ったから昼飯はいいとして、三時になれば修道教室が始まる。教室の換気をしておくか。四日間人の出入りが無かった訳だからな。
「こんにちはー。」
三時になって何人かの子供達がやって来た。室温は、と……27.2度、よしエアコン起動だ。
「エアコン入れるから窓と戸を閉めてくれ。」
やっぱりエアコン導入して良かったな。これで塾生が増えてくれるといいんだけどな。さて、俺はこの涼しい環境の中で合宿の会計処理でもしようか。うちの合宿の分は粗方Excelに入力だけはしてるんだよな。後は最終日の分を入力するだけだ。よし、出来た。うーん、エアコンの電気代を計上すると若干の赤字かぁ。今までの留保金があるからそれで賄える位の額ではあるが。次回からはもう少し費用を絞らないとなぁ。とりあえず貸借対照表を作って、と。よし、三千円程あった繰越金が千数百円になったけど致し方なし。
そいでもって次は合同合宿費用だな。この費用はどうしようかな。どうしようかなというのは事業の一環として扱うのか、それともうちの合宿と同様、レクリエーションとして扱うのかという事である。事業として扱うなら帳簿に反映しなければならないし、レクリエーションならさっき繰越金が千数百円になってしまった事業とは別の財布と、同じ扱いをしなければならない。
厳密には事業なんだろうな。理由としてはきちんとした書道の稽古の合宿である事、俺の働いた分が日当として白鳳から支払われるという事、合宿の費用はいつも事業決済している白鳳の口座に振り込むという事、等が挙げられる。しかし、事業とは別の財布で処理する事も可能だ。参加者からの費用は現金でもらってる、つまり事業用の銀行口座への振込みでは無いから履歴が残っていない。白鳳の口座へ振込む時も、うちの事業とは関係の無い口座から振込めば事業用口座に履歴が残る事は無い。どうすっかなぁ。事業にすると消費税の事も考えなきゃならなくなるんだよな。うん、事業とは別の財布で考えよう。合同合宿もレクリエーションって事で。




