中学生編 第56話 合同合宿二日目 弁当係とシャワー
今日の夜も宿泊するのは約30名、随分と減ったな。その内、うちの教室は10名も居るから残留組の中では一大勢力だ。だからと言って何かある訳でも無いんだが。
「優、弁当配布をやってた若手はもう帰ったからお前がその係な。」
あぁ、やっぱりそうなるのか。霞碩先生に先手を取られてしまった。
「それはかまいませんが配布リストはありますか?」
「それは大丈夫だ。教室毎の配布数を表にしてある。もうすぐ業者が配達にやって来るから任せたぞ。」
「へーい。」
弁当係か。配布と空容器の回収とかそんな感じでいいんだよな。残った教室も五つ位しかないから大した作業ではないだろう。
「優くん、お弁当屋さんが来たからお願いね。」
梨香さんが俺を呼びに来た。さて、ご奉公するか。白鳳本部の玄関に出て弁当業者からブツを受け取る。
「本当に優樹が居た。太ったなぁ。」
は? なんじゃそりゃ。弁当屋にデブ呼ばわりされる謂われは無いぞ。弁当業者の方を睨むと……
「お前、ひょっとして金谷か。」
「そうだ。白井からお前が居るって聞いて、配達に付いて来た。」
何やってんの、営業部長。と言うか次期社長だろ、お前。
「久しぶりだなぁ。高校卒業以来か。」
「良樹にも言ったが大学卒業したばかりの時、登山の途中で会ってるんだが?」
「へ? 知らんぞ。」
「お前から声かけて来たんだがな。俺が社会人一年目でお前はまだ学生だって言ってたと思う。」
「あー、大学のサークルで登山行ったのは何となく覚えてる。そん時会ったっけ?」
「あんなミラクル、忘れる方がどうかしてると思うぞ。」
「すまん、覚えてない。」
「積もる話もあるけど俺、これから弁当配んなきゃだから悪いが……」
「空容器回収の時にまた来る。そん時にでも連絡先交換しよう。」
「まぁ、それでもいいけど。」
金谷は配達の若いのと一緒に帰って行った。いいのか、営業部長。まぁ、日曜だからそんなに忙しくは無いんだろうがな。おっと、俺は弁当配んなきゃな。
「これから弁当配ります。教室毎に代表者が取りに来て下さい。」
「〇〇教室です。」
「はい、〇〇教室、えーと、四つですね。」
「××教室、お願いします。」
「××教室、はい、五つですね。」
霞碩先生に貰った配布リストと照らし合わせながら弁当を配っていく。うちの分は啓志と雅也で取りに来た。十人分だから二人位いないと運べない。
「もう何回かやってるから分かると思いますが、食べ終わった空容器はこの箱に入れて下さい。あとで業者さんが回収に来ます。」
来るのは営業部長だけどな。さて、俺も弁当にありつこう。さっさと食って回収する空容器をまとめなきゃならん。
「先生、弁当食ってからは何かやる事あるんですか? 昨日みたいに花火とか。」
「いや、特に何もない。自由時間だ。」
「風呂入りたいです。一昨日と昨日は海水浴後にシャワー浴びたけど今日はそういうの無かったから。」
「風呂か……ちょっと聞いてみる。」
「最悪、シャワーだけでもいいんで。」
今日は外を歩いたからな。2kmとは言え、夏の午後の強行軍では汗もかくだろう。俺も頭くらいは洗いたい。
「霞碩先生、この辺りに銭湯って無い……ですよね。」
「今時、そんなもんある訳無いだろ。」
「ですよねー、子供等が風呂入りたいって。シャワーだけでもいいんですけどね。」
「なんだ、そう言う事か。一応、シャワーは考えてある。」
「そうなんですか? どうするんです?」
「近く……という訳でも無いんだが、プールを併設してるスポーツジムがあってな。そこのシャワーを借りれる事になってる。本来は会員にならないと使えないんだが……」
「スポーツジムって事は、ひょっとして姉さん?」
「そういう事だ。あいつがゴリ押ししてな。」
「それだけで全てが理解出来てしまうのが何かヤダ。」
「希望者にはシャワー券を渡す。但しこれは有料で400円だ。うちも半額補助してるから実質200円だな。有料にしたのはすでに帰った教室と差がつくといかんからだ。」
「希望者のみ200円払ってシャワーだけ使えるって事でいいですか?」
「それでいい。」
「プールのシャワーだとシャンプーやボディソープ使うのが駄目とかの制約がありそうですけど。」
「それは問題無いみたいだ。仮に問題あってもあいつがゴリ押しするだろう。」
「それでいいのか。姉さん強すぎ。」
「経緯は知らない。私はあいつから一人400円でシャワーのみ、シャンプー使用可としか聞いていない。と言うか、それ以上深く聞くのが怖い。」
「行くのは勝手に行けって事ですかね。」
「残ってるのは大体車で来てる所ばかりだからな。シャワー券配って地図を渡せば大丈夫だろう。ほら、ここだ。」
霞碩先生が渡してきた地図を見ると……何だ、下野峠の中腹じゃないか。こんなとこにジムが出来たんだな。知らなかった。
「そろそろ皆、飯食い終わっただろう。その説明をしようと思ってたところだ。」
「その情報は事前に知っておきかったです。」
心配して損した。とりあえずうちの者にはシャワー使えるとだけ伝えておこう。一人200円位なら合宿の費用から出してもいいよな。
「確認してきた。これから説明があるんだがシャワーを借りれるらしい。車で移動しなきゃならんが希望者にはシャワー券を渡すとの事だ。一人200円かかるが合宿費用から出すからそこは心配しなくていいぞ。うちは全員希望って事でいいか?」
霞碩先生と姉さんがシャワーの利用についての説明を始めた。事前に聞いてた通りだな。いくつか質問があったな。プールのシャワーだから水着着用じゃないといけないのか、とか。それに対する姉さんの回答は
「水着でも真っ裸でも好きにしろ。」
マッパってあんた……まぁ、分かるけど。あと夜の八時から十時までの間で使う様にという時間制限があった。これは姉さんがその時間、ジムに張り付くからその時間帯で済ませる様にとのお達しだった。姉さん、張り付くのはいいけど男子の方はどうするんですか? と、思ったのだが言い出すと俺がご指名を受ける事が予想されたので言い出せなかった。ヤブヘビにはなりたくない。と思っていたが何故だか良樹が召喚されていた。かわいそうに……きっとこれも姉さんにゴリ押しされたんだろうな。
七時過ぎに金谷が弁当の空容器を回収に来た。姉さんに召喚された良樹も居たので驚いた様だった。うーん、予期せぬプチ同窓会になってしまったな。金谷とは連絡先を交換しておいた。こっちへ帰って来る時には連絡しろよと言われたが、こういう機会でも無いと帰って来ないからなぁ。
八時になってシャワーを使うべくジムへと向かった。姉さんと良樹がジムの前で案内をしている。後で聞いたが良樹もこのジムの会員なんだな。それもあって姉さんに引っ張り込まれたのか。さて、シャワー、シャワー、と。本来の会員が利用してるから邪魔にならん様にしないとな。久しぶりにシャンプー使えてスッキリだ。あとは寝るだけ。明日の移動と観光に備えて鋭気を養おう。




