中学生編 第53話 合同合宿二日目 スーパーサブ
「そういや里子先生の娘、秀子ちゃんなんですけど、この時間は何してるんですか?」
「でこちゃんて……お前、うまい事言うな。」
「秀子ちゃんに霞碩先生も絶賛って言っときますよ。」
「やめろ。」
「で、秀子ちゃんは?」
「あの子なら合宿費用の集計処理やらせている。若い子の方がPCとか扱いなれてるだろ。」
「秀子ちゃんって高校卒業したばっかなんですけど、そんな金を扱う大事なところ任せていいんですか?」
「一人でやらせてる訳じゃ無い。メインは梨香とかがやってるからあくまでその補助だ。」
「俺もその仕事が良かったなぁ。楽そうだし。」
「お前がやったらすぐ終わっちゃうじゃないか。即効でシステム組んじゃいそうだし。それよりお前にはスーパーサブ的なポジションやってもらいたかったんだ。」
「スーパーサブと言えば聞こえはいいですが要するに雑用ですよね。」
「ただの雑用じゃないぞ。何でもこなすオールラウンドプレイヤーだ。」
「スーパーサブやらオールラウンドプレイヤーなら、二日で五千円の日当じゃ割に合いませんね。次回からは是非、コンサル的な立場で参加しましょう。」
「許さん。」
「俺が白鳳の業務改善に本気で手を着ければ経費を半分にする自信がありますよ。リストラとかしまくっていいのなら。」
「リストラはちょっと……」
「分かってますよ。こういう組織は一般の会社ではありませんからね。切るに切れない柵があるってのは分かってます。リストラ無しで業務改善だけだと10%から20%の経費削減ってとこですかね。いや、さすがに20%はキツイかな。」
「その削減した経費の分はお前のコンサル料に消えるんじゃないか?」
「そこはどう考えるかですよ。年間の経費を10%削減してそれを俺にコンサル料として渡す。二年目以降は俺のコンサル料が無くなりますから毎年10%の経費が削減された状態になると考えれば。」
「うー、ちと考える。お前が地元に居たらなぁ。」
「そこは諦めて下さい。」
こういうのは自分で改善策を見つけてそれを実行する為に何をすべきかとかを考えるのが楽しいんだけどな。霞碩先生は励碩先生の書道会を引き継いだ二代目だからそういうのに慣れてないんだろうな。
「もうすぐ昼だな。飯にしよう。」
「俺は今日、どこで食えばいいんですかね。昨日は三四年生組で食いましたけど。」
「どこに振り分けたっけ? お前も振り分けの表作った時居ただろう。」
「どうでしたっけ?」
二人して朝、俺が作ったクロス名簿を確認する。あぁ、若手の雑用グループに入ってる。でもこのグループの大半は弁当配りに行くから本人達が食うのは暫く後になる。という事は俺もそれまでは待ちぼうけになるのか。
「別にそいつらに合わせる必要は無いぞ。雑用グループは弁当配り以外の人員も何人か居る。さっき言ってた芝田んとこの娘なんかもそのグループだが昨日は先に食ってたし。」
「それはありがたい。」
そうこうしてる内に正午になって稽古の時間が終わった。弁当配りの若手は正午直前に各組に弁当を持って行ったので既にここには居ない。雑用グループ用の弁当は残されたままだ。これを食えばいいんだな。
「あら、あんた、今日はここで食べるの?」
秀子ちゃんか。あいかわらず俺の事は「あんた」呼ばわりである。
「霞碩先生の陰謀でな。雑用グループに入れられたんだ。」
「雑用グループって……先生は総務グループって言ってたわよ。」
「初めて聞いたわ。霞碩先生も雑用グループって言ってたぞ。それに総務って実際、雑用だぞ。少なくとも俺が以前務めてた会社じゃそうだった。」
「正式には総務ってなってるわよ。」
「そりゃ雑用とは書けんからな。」
「総務でも雑用でもいいけど午前中はあんた何してたのよ。」
「各組回って御用聞き。」
「御用聞き? 何よそれ。」
「お困り事はありませんか、備品で足りなくなったものはありませんかって各組回って聞いてくるんだ。三河屋さんやってた。」
「三河屋さん?」
「サ〇エさんの三河屋さんを知らんのか? 各家庭に行ってお酒、醤油、みりん、お酢の不足は無いですかって聞いて回って不足があったら注文をもらうんだ。」
「スーパーで買えばいいじゃない。」
「昔はそういう営業があったの。ある意味、飛び込み営業だ。注文取ったら配達もしてくれるんだぞ。」
「ふーん。」
今の子は御用聞きも分からんのか。
「秀子ちゃんは費用の集計やってたんだろ?」
「やってる事は簡単なんだけど単調な作業だったわ。紙の書類から数字を拾ってExcelに埋めていくとかね。」
「中途半端にデジタル化するとこういう弊害が出るよな。やるなら一貫してやってしまわないと。」
「取引先の請求書やらもあるから、外部の物までデジタルデータでくれとは言えないんじゃないの?」
「あー、そう言う事か。それなら仕方ないか。」
合同合宿の費用集計となると弁当代とかだな。と言うかそれ以外が思いつかない。外部、というか白井物産――良樹の会社――経由の讃州デリカ――金谷の会社――の請求書だから当然紙ベースの物になる。あっと、花火の手配も白井物産経由だったな。
「それより食事にしましょう。このお弁当でいいのよね。」
「それでいいと思うけど。俺より秀子ちゃんの方が雑用グループでは先輩なんだから俺より分かってるんじゃないか?」
「それもそうね。先輩を敬いなさい。」
「へいへい。」
それでは食うとしましょうか。あっ、梨香さん、麦茶ありがとうございます。いただきます。




