中学生編 第28話 合宿三日目 キックベースボール
子供等の昼飯はほぼ終わった、終わったのだが……懸念していた通り大人の分が足りなくなった。カレーの方はいいのだがご飯が足りない。具体的には五人分位足りない。食べ盛りな男子でおかわりしてたのが何人か居たしな。どうしたものかな。コンビニで弁当でも買って来るか。
「午後は小学校のグラウンドでレクリエーションよね。片付けで女性陣が何人か残るからそれ以外の人で先に食べなさいな。残る人には今からご飯炊くから。」
美沙恵さんがありがたい申し出をしてくれた。
「よろしいんですか。うちとしては助かりますけど。」
「お米、あと五合くらいは残ってる?」
「今回合宿用で買ったのは5㎏で三十三合相当ですね。既に三十一合炊きましたから残りは二合、三合ほど足りませんね。」
「それならうどん茹でてカレーうどんにしましょう。お米炊くのは時間かかるけどうどん茹でるのはすぐだしね。違うもの食べてると子供達が羨ましがるから、皆がグラウンドへ行った後に食べる事にするわ。」
「それはいいアイデアですね。冷凍うどんですが五食パックがうちの冷凍庫にありますのでそれを提供しますよ。」
「それは駄目よ。合宿費用に計上しなきゃなんないからスーパーで買って来るわ。合宿の経費で落としてね。」
「それは勿論かまいませんが……すいません。ではレシートでいいんで領収書をお願いします。」
結局そういう事になった。残るのは竹内の婆ちゃん、美沙恵さん、明里、明衣、紘菜の五人。それ以外の者は子供等と同じカレーライスだ。よし、チャッチャと食って片付けも速攻で終わらすぞ。
「明里、すまんが子供等の片付けについてやってくれ。中学生以上に手伝わせていいから。去年と同じ様に軽く洗って容器ごとにまとめて重ねて置いてくれ。残飯とかの処理も去年と同じだ。要領は分かってるよな。」
「大丈夫ですよ。先生達も早く食べてグラウンドへ行く準備して下さい。皆が行かないと私達が食べれないんだから。」
「お、おぅ。」
カレーを素早くかき込んでとりあえずは自分の食器の分だけ片付ける。全体の片付けは女性陣に任せて、俺は午後のリクリエーションに注力しなければならない。
「先生、泉谷先生には今から行きますって電話しといたからね。」
「あぁ、婆ちゃん、ありがとうございます。電話しなきゃと思ってたところです。」
「私もごはん食べたら見に行くからね。それとこれ、麦茶準備しといたから持って行って。」
麦茶の入ったクーラーサーバー渡された。
「いつもすみません。では行ってきますので……留守番お願いします。」
申し訳ないと思いつつも子供等を連れて小学校のグラウンドへ向かう。そういや何するか決めてなかったけど……キックベースボールかな。
「皆、グラウンドでは何したい? 特に意見が無ければキックベースボールなんだけど。」
「ドッヂボールよりはマシかなぁ。」
「いいんじゃない? 動き回るよりは。」
特に異論は無い様だな。ではキックベースボールという事で。
「んじゃちょっと校長先生に挨拶して色々借りてくるからチーム分けしといてくれ。学年や男女比率、チームで戦力的に差が無い様にして。」
チーム分けはOB達に任せて俺は職員室へ向かう。
「泉谷先生、お久しぶりです。今年もよろしくお願いします。」
「いらっしゃい。今日も暑いので水分補給はしっかりとお願いしますね。これ、体育倉庫の鍵です。」
「ありがとうございます。竹内の婆ちゃんが麦茶をたっぷり持たせてくれましたので、水分補給は大丈夫だと思います。去年、割と好評だったキックベースボールをやりますのでベースとサッカーボールお借りします。」
泉谷校長から体育倉庫の鍵を借りて再びグラウンドへ向かう。倉庫からサッカーボールとベース一式を取り出し……むっ、両手がベース四枚でふさがってサッカーボールが持ちにくいな。サッカーボールだから蹴りながら持って行ってもいいよな。ドリブルしながらグラウンドへ向かう。ダイヤモンドは去年と同じ位置だな。おそらく体育の授業かなんかで引いたと思われる白線のラインが残ってる。途中までドリブルでボールを運んだが、面倒になったのでダイヤモンド目がけて一気に蹴り込んだ。
「ボール蹴るぞぉ! ホレっ!」
バシュン! ボールはいい感じに飛んでいき、三塁ベースの辺りでワンバウンド、ホームベースの辺りに居た朋照が足で弾いて頭上に上げてからキャッチした。
「チーム分け出来たか?」
「大丈夫っスよ。」
既に一塁側、三塁側に分かれている両陣営を見ると……うん、いいんじゃないかな。適度に戦力が散らばってて。
「とりあえず七回までで一試合終了、休憩してもう一試合かな。二試合目は時間的に厳しかったら途中で終わりって事でやってみよう。」
一塁塁審、三塁塁審をOBに振り分け、二、三回毎に交代って事で試合を進めよう。出ずっぱりだと塁審の方が熱中症になるからな。それではプレイボール!
試合はそこそこ盛り上がった。と言うか乱打戦だな。やたら点がボコボコ入る。まぁ、こっちの方が面白いっちゃ面白いんだが。一時間位過ぎたところで婆ちゃんと明里が様子を見に来た。2リットルのペットボトルに麦茶を入れ、しかもコンビニで買ってきたと思われるロックアイスまで持って来てくれた。成程、明里は荷物持ち要員だったか。
「サーバーに麦茶を補充した方がいいと思って。最初に入れた麦茶もそろそろ温くなってるだろうから氷も入れときなさいな。」
さすが年の功、素晴らしい気づかいである。婆ちゃんは本当に子供が好きなんだな。
「氷の代金はこちらで持ちます。レシートありますか?」
「これは私の差し入れでいいわ。気にしなくていいから。」
「ありがとうございます。助かります。」
そうこうしてる内に一試合目が終わった。18対16、なかなか白熱した試合だったようだな。
「よーし、三十分休憩。皆、麦茶で水分補給な。氷入れたからまた冷たいのが飲めるぞ。」
子供等は冷たい麦茶に大喜びだ。それを眺めている婆ちゃんも満足そうだな。
「明里、カレーうどんはどうだった?」
「居残りメンバー皆でちゃんと食べましたよ。それとカレーが少し残っちゃったんで先生ん家の鍋に入れてあります。打ち上げや夜食で食べれたらと思って。」
「そうか、ありがとう。何人分位残ってる?」
「どうでしょう、十人分は無いと思いますけど……五、六人分位かな。」
「それくらいなら今日明日で何とかなりそうだな。逆に言うと明後日からは合同合宿に行かなきゃならんから、少なくともそれまでに何とかしないと廃棄する事になる。」
「余ってもタッパーか何かに入れて冷蔵庫に入れとけば数日は持ちますよ。」
「それ聞いた事はあるけどやった事無いんだよな。まぁ、出来るだけ今日明日で片付けるよ。」
「食器類はいつもの様に同じ容器をまとめて重ねてあります。残飯や野菜クズなんかの生ゴミも箱に入れてますけど早めに処理しないと臭いが……」
「分かった。帰ったら真っ先に埋める。」
「カレー絡みで片付けなきゃいけないのは先生のとこの鍋だけです。炊飯器もうちのはお母さんが持って帰るって言ってましたし、竹内さんのとこのは月子ちゃんのお母さんが持って行きました。今晩のご飯炊かなきゃって言って。残りの二つは先生の所の台所にあります。勿論、ちゃんと洗ってますよ。」
「そうか、十合炊きは桜宮神社に返しに行かなきゃならんな。合同合宿後でもかまわないと桜田さんには言われてるけど。」
「あの大きいの、神社から借りたんだ。由利ちゃんに持って帰ってもらえばいいんじゃないですか?」
「あいつ、そういうの嫌がると思うんだ。でかいしあんなの下げて帰るなんて恥ずかしいだろ。」
「確かに……私だったら嫌ですね。」
「君の弟は下げてうちまで持って来たけどな。」
明里とカレーの片付けについて話してると二試合目が始まった。チームは同じで先行と後攻を入れ替えてやるみたいだ。今は……三時位か。七回まで出来るかな。
「七回までか四時半の時点でやってる回の表裏で終わりな。水分補給はこまめに、そして怪我の無い様にな。無理はするなよ。」
二試合目もそこそこ点が入るのだが一試合目に比べればおとなしい。皆、体力的に疲れちゃった感じだな。試合の進行も早いな。この分だと七回までやっても四時過ぎには終わっちゃうかもしれん。
試合はサクサク進み、結果としては11対14、一試合目で敗れた方が勝利し、イーブンで終わった。時刻は四時十五分、少し早いがもう一試合という時間ではないな。
「じゃ、これで今日というか今年の合宿のリクリエーションは全て終わり。明日は午前中の勉強だけで終わるからな。昼飯はあるから安心しろ。OBは子供等を引率して先に教室に帰っててくれ。俺は用具返して校長先生に挨拶して帰るから。着いたら子供等は解散していいからな。」
「お疲れーっス。」
さて、ベースとサッカーボールを体育倉庫に返して施錠してと……俺は職員室に向かう。
「泉谷先生、今年もありがとうございました。倉庫の鍵、お返しに上がりました。」
「いえいえ、こんな事でよければ。今後も地域貢献という事で頑張って下さい。」
「ありがとうございます。それでは失礼します。」
これで本当に今年のレクリエーションがすべて終わった。考えてみれば今年はレクリエーション三日間だけだったからな。随分と楽が出来た。あとは帰って片付けだ。やらんといかんのはとりあえず生ゴミ埋めるのと残ったカレーの処分か。まぁ、打ち上げでいくらか消費するだろう。それこそカレーうどん作れば男共が食うだろうからな。あとは……そう言えば今日も麻雀やるのか。直哉が居るからやるんだろうな。面倒くせぇなぁ。そう言えば今年は静が襲撃して来ない。なんて言ってるとフラグが立っちゃいそうだ。やれやれだぜ。




