中学生編 第27話 合宿三日目 カレーの準備
合宿三日目、今日はカレーに午後からは小学校のグラウンドか。カレーの準備は十時位から始めればいいか。カレーの方は竹内の婆ちゃんと美沙恵さんに任すとして、俺はご飯の方をやんなきゃな。と言っても炊飯器で炊くだけなんだが量がな。玄田家と桜宮神社で借りた十合炊き、竹内家とうちの五合半の炊飯器を使う訳だが、米を研ぐのも十合とかやった事無いな。ま、何とかなるだろう。まずは十合炊き一台と五合半のを一台だけ、それが終わったら残りの十合と五合半、一台ずつを時間差で炊く。そうしないとブレーカーが落ちるからだ。十時までに米を研ぐところまでやっておこう。そこまでやったらあとは炊飯器がやってくれるから俺は殆どやる事が無い。昨日のバーベキューで使ったコンロや鉄板の掃除と片付けをやっておこう。
「先生、これうちの炊飯器ね。カレーは私と玄田の奥さんとでやるからご飯はお願いね。」
「婆ちゃん、ありがとうございます。そう言えば玄田さんにカレー鍋というか寸胴貸してくれって言われてたんですが、どこに出しとけばいいですか?」
「先生のとこの台所のテーブルの上にでも出しておいて。多分、最終的にはうちと先生の所の二カ所で煮る事になりそうだから。」
「お手数かけます。よろしくお願いします。手伝いの女の子達の配置とかは? お二人に任せてもいいでしょうか。」
「その方がいいわね。仕込みというか野菜の皮むきを手分けしてやんないと、量が量だけにね。」
「明里、女性陣は婆ちゃんと美沙恵さんの指示で動く様にしてくれ。俺はご飯の方に専念するからカレーやら食器の準備なんかは任せる。」
「調理とかはどこでやればいいんですかね。」
「それも含めて婆ちゃんと美沙恵さんの指示に従ってくれ。」
カレーの方を婆ちゃん達にブン投げ、俺はご飯とバーベキューの片付けに取り掛かる。えーと、ご飯は炊飯器の容量分、目一杯炊いても大丈夫かな。まぁ、余ってもおにぎりにでもしておけば打ち上げの時に誰か食うだろ。足りなかったら? そんときゃ大人が我慢すればいい。カレースープ? シチュー? だけすすっときゃいいのだ。後でコンビニ弁当でも買って来るさ。とりあえず米を研ぐ、研ぐ、研ぐ。よし、合計三十一合分研いで水も張ったしこれでしばらく放置。米に水を吸わせた方がいいからな。ではコンロの片付けにかかろう。コンロは洗って……と言っても煤は落ち切らないからな。ある程度の妥協は必要だ。水洗いして雑巾で軽くぬぐって天日干し。焼き網や鉄板も同様に掃除して乾かす。天気もいいし、一、二時間で乾くだろう。今やれる事はここまでだ。乾いたら男共に手伝わせて物置に片付けよう。
炊飯器の方は十時になったらスイッチを入れるだけなんだが、十合炊きって炊き上がりまでにどれくらい時間かかるんだ? 五合半の方はうちで使ってるので五十分位と把握してるんだけど……
「美沙恵さん、十合炊きの炊飯器って炊き上がりまでにどれくらい時間かかるんですか?」
「どれ位だったかしら……何年も使ってないから忘れたわね。でも五合半に変えた時に時間が早くなると思ったけど同じ位だった記憶があるから……一時間以内だと思うわよ。」
「そうですか、あんまり変わらないんですね。」
考えてみれば倍の量を炊くけど消費電力も倍なんだから時間は同じ位になる筈だよな。第一陣は十時炊飯開始、それが十一時位に炊き上がってそのタイミングで第二陣の炊飯を始めれば、十二時位に全てが炊き上がるな。
「先生、カレーのお鍋取って来てって頼まれたんだけどこれでいいの?」
「おぅ、それだ。持ってってくれ、紘菜。」
「わっ、炊飯器一杯あるね。これ全部で炊くの?」
「そうだ、色んな所からかき集めて来たんだ。」
「でっかい炊飯器だね。こんなの初めて見るよ。」
「普通の家庭では十合炊きなんか持ってないからな。玄田さん家とかからも借りたんだ。」
「そういえば昔、明衣の家で見た事あるかも。」
「お前ら小さい頃から仲良かったもんな。よくお互いの家、行き来してたんだろ。」
「うん、でも中学から学校違っちゃったし、特に明衣が東京の大学行ってからは滅多に会えなくなっちゃったよ。」
「こういう機会でも無いと会えないか。」
「だから合宿の手伝いはちょっと楽しみだったんだよ。明衣もそうだけど小さい頃の友達に久しぶりに会えるから。」
「同窓会みたいなもんだよな。明衣も来年からは向こうで就職みたいでますます会う機会が無くなるから、今のうちに遊んどけ。」
「そうするよ。じゃ、お鍋持ってくね。」
二十歳くらいになると皆、それぞれの道を歩んでいく事になる。そう考えると、うちの教室もこの合宿も何年かしたらごっそり人が入れ替わるんだろうな。ちょっと寂しい気分になってしまった。さて、そろそろ十時だ。第一陣の炊飯を開始するか。
一時間後、第一陣の飯が炊けた。よしよし、ちゃんと出来てるな。それでは第二陣のスイッチオーン。カレーの方はどうかな。竹内家の台所でやってるみたいだから少し様子を見て来よう。
「婆ちゃん、カレーの方はどんな具合ですか。」
「仕込みは終わって今煮てるとこよ。あとはカレールーを投入してまた暫く煮て完成かしらね。」
「カレールー入れたくらいのところでうちのガスコンロに移動しましょうか? 配膳とかもあるから近い場所の方がいいでしょう。」
「そうね、子供等の分、甘口の鍋は早めに持って行った方がいいわね。ルーを入れたら移動させるわ。」
「そちらのタイミングでやっていただいて結構ですので、その辺はお任せします。俺は昨日のバーベキューの片付けやってますんで、声をかけて下さい。」
「分かったわ。」
バーベキューコンロや鉄板は……乾いてるな。物置に移動しよう。えーと、直哉でいいか。
「直哉、すまんがバーベキューコンロ、物置に片付けるんで手伝ってくれ。男共何人か連れて来てくれ。」
「ういっス。」
元々うちにあったコンロが二台と焼き網、玄田家から貰った大型コンロが一台、それに鉄板。玄田家から貰ったコンロと鉄板が重いんだ、これが。男共の手を借りて何とか物置に納める。次使うのはまた来年だ。燃え残った炭も片しとかないとな。消火する時に水ぶっかけたからよく乾燥させないと。合同合宿に出発するまでに乾ききらないかもしれんが、そうなったら湿ったままでもとりあえず一斗缶に入れとくしかないな。合同合宿から帰ってからあらためて天日干しだ。
そうこうしている内に第二陣の飯も炊け、カレーも完成した。今年はレトルトじゃないぞ。存分にかっ食らうがよい。




