中学生編 第19話 炊飯器と鍋
本日2話目の投稿になります。よろしくお願いいたします。
以前からうちで保有しているバーベキューコンロも引っ張り出してきた。あとは炭の補充くらいか。それ以外に何かあるかな。そうだ、カレー用の炊飯器やら鍋の準備しなきゃ。あー、しまった。玄田さん所に行ったんだったら十合炊きの炊飯器も借りて来ればよかった。すっかり頭から抜け落ちていた俺であった。仕方がない、また別の機会に取りに行こう。桜宮神社でも十合炊きを借りるんだったな。桜田さんと一回話しとこう。って電話番号知らないや。いいや、神社の番号にかければ取り次いでくれるだろう。
「はい、桜宮神社です。」
「お世話になります。私、書道教室の白石と申します。桜田さんはいらっしゃいますか?」
「えーと、今ここには桜田が四人いるんですけど、どの桜田でしょうか? 宮司ですかね。」
「失礼しました。禰宜さんをお願いします。」
「禰宜ですね。少々お待ち下さい。」
ふー、迂闊だった。桜宮神社は桜田一族で運営してるから皆、桜田さんなんだよな。由利子の父親である桜田正之氏は禰宜という役職で、宮司――神社のトップ――に次ぐNo.2の地位にある。桜宮神社の宮司は正之氏のお兄さんが務めていた筈だ。その宮司さんや禰宜さんの奥さんも神社の手伝いで時々来てるから、桜田さんばかりになるんだよな。今度からは禰宜さんって呼ぶことにしよう。
「お待たせしました。桜田です。」
「お世話になります。書道教室の白石です。竹内の婆ちゃんが依頼した十合炊きの炊飯器をお借りする件なんですが、取りに行くとしたらいつそちらへ伺えばよろしいでしょうか。」
「あぁ、その件ですか。明後日位にラジオ体操のポスター持って行こうとしていて、その時に一緒に持参しようと思ってたんですが、それじゃ遅いでしょうか?」
「いえ、遅いなんてとんでもない。ですがいいんでしょうか? こちらから取りに行こうと思ってたんですが。」
「どうせラジオ体操のポスター持って行かなきゃならないんで、ついでですよ。気にしないで下さい。返しに来る時はそちらからお願いしますね。」
「それは当然です。では申し訳ありませんが、炊飯器の件、よろしくお願いします。」
桜宮神社の炊飯器は待ってればいい事になってしまった。そうなると益々、源田さん家の炊飯器を忘れていた事が悔やまれる。ただ悔やんでばかりいても物事は前に進まない。とりあえず美沙恵さんにいつ取りに行ってもいいか電話してと……
「美沙恵さん、先程はバーベキューコンロ、ありがとうございました。それでですね、その時に一緒に炊飯器も借りればよかったんですがすっかり忘れてましてね。申し訳ないですけどまた取りに行っていいですか。」
「バーベキューコンロや鉄板なら無理だったけど、炊飯器位の重さならうちの勝陽に持って行かせるわよ。どうせ教室に行くんだし。」
「それはうちとしては助かりますが、勝陽、嫌がりません? でかい炊飯器抱えて道歩くのって。」
「それ位やらせるわよ。風呂敷にでも包んでおけばいいんだし。」
それはそれで目立つような気がするが……
「分かりました。それでは勝陽には頑張ってもらいましょう。よろしくお願いします。」
「炊飯器はもう大丈夫よね。それとカレー鍋の件なんだけど、先生の所にはどんな鍋がある?」
「うちですか? そうですね。使えそうなのは……寸胴がありますね。パスタとかうどん湯がくのに使ってるヤツ。十から十五人分位のカレーならいけると思いますが。」
「分かったわ。うちと竹内さんとこで不足分を用意するから。この件は私に任せてくれない?」
「それはかまいませんが……よろしくお願いします。」
「じゃ、そういう事で。」
こういうのは主婦に任せた方がいいな。下手に口出ししない方がいい。よし、これでカレーの準備も出来た。いや、正確には準備出来た訳じゃ無いが準備の段取りが付けられた。あとは何だ? あー、炭買いに行かなくちゃ。
最後までお読みいただきありがとうございます。ブックマーク、評価、感想等いただけると励みになります。よろしくお願いいたします。




