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中学生編 第11話 合同合宿のお知らせ

 六月に入ってエアコンの運用期間に入った。ネットで見つけた複数個所の温度が測れる温度計も設置したので、運転/停止のタイミングも数字を見て判断出来る様になった。さて、六月だけで何日が運転の対象になるかな。


「先生、六月ですよ、六月! エアコンかけましょう。」


「あん? 駄目だ、今はまだその温度じゃない。26度以上で運転だ。」


 俺は彩音に温度計を見せながら言う。今は24.8度、運転開始の設定温度以下だ。


「えー、じゃ温度が上がればいいんですね。では私の熱い吐息を吹きかけて……」


「やめんか!」


 俺は温度計を取り上げ、彩音が息を吹きかけて温度を上げ様とするのをやめさせる。


「子供等が集まればそれだけで温度上がるからそれまで待ってろ!」


 人間ってのは結構な熱源でもあるのだ。


「JCがハァハァ言いながら息吹きかけてるのってエロくないですか? せっかく先生にはご褒美あげようと思ったのに……」


「やかましい、あと自分でJCとか言うな。」


 そのJC様の制服は今日から夏服の様だ。ふんふん、冬服も良かったが夏服もなかなか良いではないか。


「先生が夏服に反応してる! やっぱり肌色多目だと……男ってヤツはこれだから。」


 何か酷く蔑んだ眼で見られてる様な……やめろよぉ、クセになったらどうする。おっと、どうやら26度を超えた様だな。時間と共に気温が上がったのと教室に来た子供等の体温が室温を上げた様だ。


「よーし、エアコン入れるから皆で窓閉めろ。洗い場と玄関との間の扉も閉めてくれ。」


 子供等が嬉々として窓や扉を閉めていく。お前らそんなに楽しみだったのか。


「ではエアコン、スイッチィー、オーン」


1(ワン)2(ツー)3(スリー)! 電流火花が体を走るぅ」


「お前は幾つなんだよ!」


 そんな歌よく知ってるな。俺が生まれる前の番組だぞ。


「教室に出入りする時は扉を開けっ()なしにしない様にな。冷気が逃げて温度が上がっちゃうぞ。」


 扉にも注意書きを貼っとくか。


「冷房中 開放厳禁 開けたら閉めること」


 エアコン停める条件も言っておこう。


「教室の温度が26度以上になったんでエアコンをつけた。設定温度は25度にしてある。教室外の温度が24度以下になったらエアコン停めるからな。多分、教室終わるまでに24度以下になる事はなさそうだけどな。」


 昨年の県内での実績だと、最高気温が26度以上になった日は六月で23日間、七月は29日間、八月は30日間、九月は27日間、十月でも12日間が該当していた。うーん、十月でもそんなに暑いとは……まぁ六月から九月の月謝で冷房の電気代を回収する様になってるからいいんだけど。暫くの間は電力量(kWh)を毎日記録する様にしよう。


 エアコン導入で塾生は快適、ついでに俺も快適な日々を過ごしていた。やっぱり入れて良かった。そんな六月のある日、白鳳の本部から封書が届いた。何だろう。えーと何々……白鳳書道会 合同合宿開催のお知らせ……何だ、そりゃ? 文書を読み進めると各教室、各個人のレベルアップ、ならびに親睦を深める事を目的に白鳳本部で夏季合同合宿を開催するって内容だった。そう言えば昔、何年かに一度やってたな。俺は二回位しか参加しなかったけど。当時は県内――勿論、白鳳本部のある県ね――の書道教室が集まって合同合宿、と言っても二泊三日位でレクリエーションなんかも取り入れた、半分お遊びの合宿をやっていた。それが復活したのか? 白井先生にどういう経緯で復活したのかその辺の事情を聞いてみるか。


 日程というかスケジュール表も同封されていたので確認する。あぁ、やっぱり日程としてはそこになっちゃうよなぁ。合宿自体は7月31日(土)と8月1日(日)、その前の7月30日(金)と後の8月2日(月)は移動日となっている。本部に近い所にある教室ならば31日の朝に到着、1日の夜に帰るってのもありだろうが、うちみたいに他県からの参加だと前泊で最終日の夜も一泊してから帰るって事になってしまう。七月終わりから八月初めの土日、これはうちの教室が毎年やってる合宿週のすぐ後にあたるのだ。平日五日間うちの合宿やって、その後すぐに本部の合宿に参加とか……厳し過ぎるわ。うちの合宿を月から木の四日間だけにして金曜に片付けと休養、夕方から移動開始なら何とかなるか?


 合宿の内容としては午前中に書道やって午後からはレクリエーション、海水浴とか夜は花火とか……うちの合宿の宿題や勉強タイムが書道の時間になった感じだな。尤も書道教室の合宿なんだから、こちらが真っ当な合宿なんだろうけど。


 費用はどれだけかかるんだ? 30日夕、31日朝昼夕、1日朝昼の食事が付いて五千円、ほぼ食事代なんだろうな。1日夜の宿泊と夕食、朝食はオプションでプラス千五百円か。宿泊は白鳳本部の広間に雑魚寝、男女の仕切り位はあるよな。参加者多数で本部からあふれた人は近くのお寺で宿泊? そんなに参加するのか? うちは泊まらなきゃいけないから合計で六千五百円かかる。それにこれは合宿の費用だけで本部までの交通費は別途かかるよな。うちみたいに他県から参加する場合は往復の交通費が結構かかる。ここから本部の最寄駅までは、新幹線を使わなかったとしてもえーと、往復で七千円弱か。小学生以下の子供なら半額で三千五百円。まとめると、中学生以上は一万三千五百円、小学生以下は一万円。これだけ出して二日間の合宿に参加する奴なんているのかな。まぁ、塾生に聞くだけ聞いてみるか。希望者少なかったらうちは不参加って事で。


 何枚かあるお知らせの最後の一枚を読んで俺は愕然とした。そこには……


下記の者は「今後の事も考えて」必ず参加の事


……、白石、……


 何だよこれは! どういう事? 「今後の事も考えて」とか脅しですか?


 俺の他にも何人かの名前が書かれているが、半分程度は一応名前くらいは知っている人達だ。お互いに面識がある人も居る。何だ、何か共通点は……全く思いつかん。知っている人が半分しかいないからその中で共通項を見出そうとするのだが、思い当たるものが無い。強いて言えば俺と同年代かそれよりも若いって事くらいだが……えぇい!こうなったら直接聞いてやる。


「おぅ、(まさ)、合宿のお知らせが届いたか。」


「えぇ、届きましたよ。あの最後の一枚、無視しちゃっていいですか?」


「無視出来ない様に名指ししたんだがな。」


「どういう理由でそうなったのか、お伺いしたいんですがねぇ。」


「人手だ。」


「は?」


「人手が必要なんだ。特に若手で使いやすいのが。」


「つまり、合宿のサポート要員として招聘(しょうへい)されたと?」


「そう言う事だ。いやぁ、話が早くて助かる。」


「成程、お話はよく分かりました。お断りします。」


「ちょっ!」


 何で俺がわざわざ出向いてまでただ働きせんといかんのだ。しかも逆に俺が金払ってまで。

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