表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
城の王  作者: 京理義高
34/39

34.女帝


26


 女は呼び出しを受けると、予期していたかのように応じた。心電図の電子音が規則正しい時間を刻んでいる。毛利元也の部屋に入り、作り笑いを浮かべる。一人は拳銃を手に持っていた。動かす度にカタカタと音を立てる。それで電子音の間隔が早まった。


「元也さんのいる場所で拳銃はしまって。失礼だわ」 


 毛利元也は寝息も立てていない。ただ、電子音が生きている証拠を具現化されているだけだった。持っている拳銃へ視線を移動させた。


「分かったようなことを。このごに及んで体裁飾ってもしょうがないでしょ」


 悪戯っぽく、明るく振る舞う。拳銃を持っている女は、折りたたんだ紙きれを持っていた。近付いて、そっと渡した。


「今読んで」


 耳元まで口を運び、息を吹きかけるように言った。あまりにも挑戦的かつ自身に満ちていたので、従うか迷った。


「あなたにとって、不利益ではないわ」


「拳銃を持っている人が言うセリフ?」


「私が常識ないことぐらいわかっているでしょ?」


 毛利剛と体を合わせている写真をチラつかせた。女は身震いし、顔をしかめる。それでも身を引くことは無い。


「飲んでいるわね?」


「ふふ」


 女は、不適な笑みをたたえた。それは、小悪魔的でもあった。


「これは……」


 最近書かれていたもののようでもあり、随分前に書かれたもののようでもあった。動揺が冷静な判断を鈍らせた。


「こんなもの、これがどうしたというの?」


 言いながらも、読み返していた。次の瞬間燃やされても、頭に刻むようゆっくりと。目を離すまで待った。


「あなたも理解しているはずよ」 


「さあ、わからないわ」


 毛利元也が眠っているベットの下に、ネックレスと凶器があると指摘した。


「監視していたのね?」 


「気が付いているとばかりに思っていたんだけど、はずれなの?」


 拳銃の先を床に置く。PDA端末を取り出し、女に見せた。部屋の三分の一が写っている画像が画面にあった。


「元也さんの容体を観察する為に使っていたんだけどね」


 窓の前で対峙した。お互い、一歩も引かなかった。


「頭が悪いみたいね。撃っちゃおうかしら」


「出来るはずないわ」


 あざ笑うかのように反論した。


「試してみる?」


 女は小型銃を構えた。もう一人の女は、とっさに銃を取り出す。


 発砲音、片方の女の手から、銃が落ちた。


「ねえ? 本気だったでしょ?」


 微量の血。女は二階のバルコニーでドサッという音を立てた。残った女は、紙を真っ二つに破り、監視カメラの位置をずらした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毛利家全体図を更新しました。
又、登場人物を追加しましたので、下記サイトを参考にしてください。
http://plaza.rakuten.co.jp/kyouriyoshi/2003
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ