SUPER HUND SPINNER
SUPER HUND SPINNER
切りさけ段ボール
潰す足が痛むんだ
毎週の日課
新商品の山
見飽きた指示書
全部焼きソバでいい 特盛のやつ
それ以外は発注を止めろ 頼むよ店長
助けて スピナー
切り裂いて
頼るぜスピナー
メタリックボディ
ねえお客さん 聞いてちょうだいよ
オタクの娘 嫁にくれよ
もしダメなら あなたでもいい お母さん
逃げないで 俺は根っからの 熟女好き
「シャウエッセーン」
「いらっしゃいませー」
木場と、32歳のアルバイト・きの子が顔を見合わせる。
「ちょっと木場さん」
「はい」
「今、何て言いました」
「いらっしゃませ」
「違うでしょ」
「違いませんよ」
「シャウエッセンって聞こえた」
「空耳じゃないですか」
「ポークビッツでしょ」
「何言ってんの」
「あの、レジやってくれませんか」
店員の漫才にしびれを切らし、ゆうきは女性誌をレジカウンターに叩きつけた。そのただならぬ様子に、困ったような表情で
「すいませんね、冗談が通じない人で」
そう言い訳しつつ女性誌からゴムを取り外す木場。きの子は怒って、おでんの材料を取りにウォークインへと消えた。店内に二人きり。ゆうきが徐に、カウンターに身を乗り出した。
「木場さん、やっと二人っきりだね……ああ、その袋とじ、切ってもらえませんか」
「はい?」
木場は、女性誌の真ん中を開いた。
『女性器100作品! 彫刻デコレーション 芸術は爆発だ』……袋とじの表紙を見て木場は苦笑いしつつ
「お会計済んだらね。666円です、デーモン・ポイントカードはお持ちですか」
そう言うと、ゆうきの目を真っ直ぐ見つめた。互いに見つめ合う事、5秒。先に動いたのは、ゆうきだった。ゆうきは木場の手を取り、囁いた。
「大事なものを、あなたにあげる」
ゆうきは、上着の中から小さな箱を取り出した。そしてそれを、木場の手の上に乗せ
「ずっと探していたものだよ」
そう言うと、木場の唇に左手の人差し指を這わせ、その人差し指を己の唇に這わせた後ペチャペチャとしゃぶってから、恍惚の表情を浮かべたのち、去っていった。その後ろ姿を、呆然と見つめる木場。
(あれ? 俺、何でドキドキしてるんだろう。なんて綺麗な目なんだ、それに……)
木場は、熱い滾りを感じ、しばし考え込んだ。
(いや、そんな筈は無い。俺は熟女が好きなんだ、どうしようもなく。分かり切った事じゃないか、もう43だぜ、俺。人生において今まで、一度だって、男になんか)
木場は、頭ではそう否定しつつも、体の、あまりの正直さに恥ずかしさを覚え、紅潮して汗ばむ顔を手で拭うと照れ隠しのように、乱暴な手つきで小さな箱をこじ開けた。
木場の、動きが止まる。中には、黄色い「ハンドスピナー」が入っていた。新品ではない、やや使い古された。
「木場さん! どうしたのさ、何かされたの、あいつに!」
驚いたきの子が、木場に駆け寄る。
「……何でも無いです。何でも」
「でも、泣いてるじゃんよ」
「何でも無いったら!」
「何さ、頑固者!」
「うるせえ!」
「スケベ!」
「……!」
きの子の言葉に、反論できない木場の下半身。
「トイレ行ってきます」
「早くしてね」
木場は、大人しくきの子の指示に従うのだった。
(それにしても……なぜデビル運送の彼が、師匠の形見を)
木場の目は、かつて師と共に戦った時代の、修羅の日々に戻ったかの如く殺気立っていた。そして、トイレにこもっていた老人が、すれちがいざま木場の顔をチラリと見た瞬間
「人殺し!」
そう叫んで、泣き叫びながら一目散に逃げだした。




