DEVIL MAKER
アル中が叫んでる
嘲笑が彼を追い立てる
老人は昼寝の邪魔だと怒鳴りたて
主婦は子供を抱き寄せる
彼は歩く道すら無い
黒い戦闘機
彼の言葉は望まれない
受け取り拒否で行き場の無い荷物
印鑑の無い伝票
倉庫に積まれる箱の中身は
火薬がぎっしり
子供が火を点けたんだ
ただ何となく
火傷しながら見上げた空には
誰も見た事が無い色の
花火が上がってたってさ
そうやって悪魔は追い出されたのさ
汚れなき 優しき人々の世界から
炎は
人の手で汚される
炎は
人の手で汚される
「ゆうきさん、おつかれさまです」
「……すいません、お先失礼します」
仕事を早めに切り上げ、男は夕暮れの下、仄暗い感情を抑えるように立ちすくんだ。一体僕は、何をしようとしているんだろう。彼とは、始まってもいないのに。何でこんなに彼が憎いんだろう。いや、憎くなんかない。むしろ好きだ。今すぐ会いたい。だけど、素直に好きと言えない。顔を見れば喧嘩になる。
どうして? 僕が男で、彼も男だから? それがどうした、そんなの、すげーどうでもいい事じゃないか……彼も、そう思ってくれたらいいのに。
ゆうきの青い瞳は、夕焼けと混じり合い、紫色になる。その瞳の奥で、黒猫が蠢いた。
「木場さん、ホント熟女が好きですよね」
「だって甘えたいもの」
「熟女だって、甘えたいときもあるんじゃないですか」
「知ったように言うなよ、君はまだ若いじゃないか」
「私、こう見えて32歳ですけどね」
「え。そうなの」
「はい。子供3人産みましたよ。全部父親が違うんですけどね、はっはっは」
「……」
幹線道路沿いのコンビニの夕勤二名が、揚げ物を什器に並べながら冗談を言い合う。
明日は必ずやってくる、そんな幻想を抱きながら、人は真夜中、希望を抱きながら眠る。その眠りが、永遠に続く事には目を閉じて。人は、眠らないでは生きられないのだから。
そんな微睡むようなひと時は、来客を告げる音によって覚まされた。
金髪の、一見すると女のような顔立ちの、細身ながらも華奢とは言い難い体つきの男が店に現れたのを見て
「木場さん、デビル運送の兄ちゃんだよ。今日の集荷、もう終わったはずだけど」
「仕事帰りじゃないの」
「あの人いつも、木場さんの事ずっと見てるんだよね」
「……俺、女性にしか興味が無いから」
「だよね。ホント、女好きだもんね、木場さんって」
「……」
ヒソヒソし始めた店員たちの方に真っ直ぐ向かわず、雑誌の立ち読みを始める……古田ゆうきは、立ち読みを諦め、女性誌を一冊手にしてレジに向かった。




