調整
「旦那様、お気づきになられましたか!」
伯爵がベルを鳴らしてそれほど経たずに、ほっとした様子の執事さんらしき人が入ってきた。
「すまない、面倒をかけたね」
「とんでもございません」
「早速だが、リーゼを呼んできてはくれないか?」
「お嬢様を、でございますね」
「うむ」
「ただいまお呼び致します。少々お待ちを」
そう言い残して退室していった執事さん。
私たちはそのまま息を潜めている。
そして。
「お嬢様、お待ちを!」
パタパタと駆ける小さな足音と、それを追いかける侍女と思しき声が扉の向こうから聞こえてきた。
「お父様!」
バンッと勢いよく扉が開かれる。
扉の向こうから現れた人影が伯爵へと突撃していった。
「ぉっふ……」
伯爵、大丈夫ですか……。
「お父様ぁー……うぅ……ふぇっえぇぇ……」
「心配させてすまなかったね、リーゼ。私はもう大丈夫だよ」
「ほっ、本当ですの……?」
「うむ」
良かった、少し泣き止んだみたい。
そこに息を切らせた侍女さんが追いつく。
お疲れ様です。
「お前たちは出ていてくれるか。大事な話がある。しばらく誰も近づけないでおいて欲しい」
「はっ」
「はい」
執事さんと侍女さんが部屋を出ていく。
侍女さん、たった今着いたところなのにね……。
「殿下、近侍殿、もうよろしいでしょう」
2人の足音が遠ざかった後、伯爵が声をかけてきた。
「え? ……え!?」
姿を現した私たちを二度見するリーゼ。
さっきぶりだね!
「リーゼ、具合はどうだい?」
「具合ですか? えぇと……そういえば、先程から少し身体が重いような気がします……」
ウロボロス!
{そう慌てるな、我が主よ。すぐに調整しよう}
お願いね、ウロボロス。
「今の声は何ですの!?」
「あー、えっと、これ」
{これと言わないでくれ、我が主よ……}
驚くリーゼに蛇姿のウロボロスを見せると、ウロボロスから苦情がきた。
はい、ごめんなさい。
「へ、蛇ですわね……。これも従魔ですの?」
{これと言わないでくれ……}
「従魔……ではないけど、似たようなものかな」
似たようなもの……だよね?
たぶん。
「リーゼは蛇、大丈夫?」
「見る分には大丈夫ですわ、一応」
一応。
ウロボロス、蛇以外の姿にはなれない?
{竜になら}
いやでかいよ。
竜はさすがにこの部屋では大きすぎるよ。
{手乗りの大きさにならばなれるぞ、我が主よ}
「じゃあ、それで」
{承知した、我が主よ}
蛇姿のウロボロスから手足と翼や角がにょきにょきと生え出す。
数秒後、私の肩には蛇の代わりに小竜が乗っていた。
あ、これ意外と爪刺さって痛い。
「リーゼ、この竜ちょっと持っててくれる?」
「え、ええ……」
ウロボロス、今はちょっと我慢してね。
リーゼに小竜姿のウロボロスを渡す。
{ふむ……ふむ。……こんなものだな。終わったぞ、我が主よ!}
調整が終わったらしいウロボロスが、んばっとリーゼの肩から飛び立ち、パタパタと羽ばたいて私の肩に着地した。
なんか可愛い。
「今……なんだか、身体の中にある何かがスッキリしたような……?」
あ、これまさかの魔力感知しちゃった感じですか!?
これで冬休み期間の連続更新は終了です。
次は春休み期間ですね!
それまでの間は書き溜めつつ様子を見ながら更新していきます。
……夏休みは大丈夫でしょうか、これ(´・ω・`)




