扱いやすさ
「お呼びですか」
「あぁ」
あぁ、じゃないですよ、あぁ、じゃ!
「では、詳細をお願いします」
さっきは聞けませんでしたからね!
男爵位とか、男爵位とか、男爵位とか!
「まずはお前の近侍長についてだ」
はい、男爵位ですね。
「叙爵式のことは知っているな?」
「存じております。4日後のお話ですね」
「そうだ。家名については、その前日には伝えておいて欲しい」
「分かりました」
やっぱり期限は3日かぁ……。
しっかり考えなくちゃ。
「先程その近侍長が取り下げを求めにここへ来たが……悪いな、受け取って貰わねばこちらとしても困るのだ」
トール伯父様が頭をポリポリと搔きながら言う。
「謀反を起こした頭を捕まえたという功績に対して何も与えないというのも、貴族がかなり減っているというのも、国内外に対して示しがつかんのでな」
だからラスヴェトに男爵位を与えて、名ばかりでいいから貴族にしておこう、と。
「もちろん、今まで通りリリィの近侍として振る舞ってもらって構わん。俺の命に従う必要もない」
「本当に今まで通りで良いのですね?」
「むしろ今まで通りの方が良い。俺にお前の近侍長を扱いきれる自信は全くない」
それドヤ顔で言うことですか?
「嫁に関してはそうだな……手柄を立てろ、それしか言えん」
手柄を立てたら向こうから寄ってくるとでも言いたいのですか?
ラスヴェトはそんな子じゃありませんよ!
「リリィに付いていれば自然と功績も積み上がっていくだろう」
ラスヴェトの意に沿わない縁談はお断りですからね!
「……そう睨むな、悪いようにはしないと言ったはずだ」
「絶対に、ですよ」
「分かっている。お前を怒らせたら大変なことになりそうだしな……」
遠い目をするトール伯父様。
よくお分かりで。
「そうだ、これも伝えておかねばな。爵位と同時に、小さいが土地も与えることになっている。選定はリリィに頼む。お前の担当している区域から適当な所を選んでくれ。管理者はこちらで派遣する」
「管理者も必要ありません」
〈月影〉の誰かに頼むのが1番良い。
「……そうか」
そんな呆れた目をされましても。
いつものことでしょうに。
「では次だ」
はい。
「お前が見つけた魔術概念、先程のあれだ。あれを書面にまとめて持ってこい」
え、私魔術関係の書類の書き方なんて分からないんだけど……。
「絶対に漏らすなよ」
分かってますって……。
「それから、絶対に信頼できる魔術師は複数いるか? 研究して、技術として確立させたい」
信頼できる魔術師、いっぱいいるね。
いるけれども。
「魔術師団はどうしたのです?」
「信用できる者の選別がまだ終わっていない」
なるほど。
「分かりました。では、どのような人物をお望みですか?」
「……扱いやすい人物が良い」
うーん。
魔術といえば。
「アーシャ?」
そう思って後ろを振り返ると、アーシャ以外の近侍たちが必死に首を横に振っていた。
え、ダメなの?
本人はいつもの儚げな笑みを浮かべながら首を傾げている。
「僕が……やる……」
ジュダが立候補する。
そしてブンブンと横に振られる首。
「……お前のところには不穏なやつしかいないのか?」
ボソリと言うトール伯父様。
いや、そんなはずは……。
2000人弱の中になら居るよね?
「他にもいますので、そちらを当たってみます」
「頼んだ」
早速リングで募集をかけておこう。
「話は以上だ」
「はい、では失礼致します」
「あぁ」
トール伯父様の執務室を辞し、自室に戻る。
ソファーにぽすんと座り、やれやれ、と一息ついた。
リングを見てみれば、既に応募がちらほらと見受けられる。
みんな相変わらず早いなー。
さてさて、ウロボロスのお話の続きをきこうかな。
そう思った瞬間。
”シャントルア伯爵、倒れる”
そんな通知が、リングに送られてきた。




