シャントルア伯爵
常葉の枝、第1回ノベプラ大賞の応募期間内に10万字いかなかったので第2回に回します。
というわけで表自重再開。
……歴史・時代コンテストでまた中断するかもしれませんが。
「一体何が…………リーゼ!?」
リーゼというらしい娘に駆け寄るシャントルア伯爵。
「アーロン」
こそっとアーロンに近寄り、話し掛ける。
「はい、いかが致しましょう?」
声を潜めつつ答えるアーロンに私も声を潜めつつ指示を出す。
「とりあえず、2部屋用意して。片部屋にリーゼ嬢を寝かせて、もう一部屋に伯爵を通して」
「承知致しました。この場は一度私にお任せを」
「お願いね」
伯爵に近づいていくアーロンに任せ、商会内にある私専用の部屋に足を向けた。
従魔たちには中庭に行ってもらう。
部屋の前までたどり着くと、ラスヴェトがドアを開けてくれる。
中に入り、ボフッとソファーにダイブ。
アーロンが私のために時間をかけて選び抜いたというソファーは、私の身体を難なく受け止めた。
「あぁぁー……やっちゃったよぉー……」
「リリィがあそこまで怒っているのは初めて見た……。俺がいない間に一体何があった?」
ラスヴェトに商会前での出来事をかいつまんで話す。
「それは向こうが悪いな」
断言するラスヴェト。
「俺が傍にいれば……。すまなかった」
「ううん、気にしないで。止めてくれてありがとう」
それに、あれは私も悪かった。
私は立場的に、あんなふうに感情を爆発させちゃいけないから。
……失敗したなぁ。
「……大丈夫だ、今回は顔も隠していたから問題はないはずだ。次がないように気をつければいい。もしあったとしても、その時も俺が止めよう」
そう言って優しく頭を撫でてくれるラスヴェト。
本当に、ラスヴェトは私のことならなんでもお見通しだね。
頭が上がらないよ。
「うん、ありがとう」
────コンコン
「はい」
ノックの音に返事をすれば、アーロンの秘書をしているテッドが入ってきた。
「失礼します。リリィ様、ご指示の通りに致しました。おいで願えますか?」
「うん、わかった」
「顔はお隠しになられたままでお願い致します」
「うん」
ソファーから立ち上がると、テッドがドアを開けてくれ、先に部屋を出る。
テッドに先導されてある部屋に入れば、アーロンと伯爵がソファーに座っていた。
アーロンは私に気づき立ち上がる。
「こちらへ」
私を上座に座らせたアーロンは元の位置に座る。
テッドはアーロンの斜め後ろ、ラスヴェトは私の斜め後ろに立った。
……いや、座っていいんだよ?
伯爵は私が何者か掴みかねているのか、困惑気味だ。
「さて、先程のことですが」
アーロンが口火を切る。
「リーゼ嬢、でしたかな。貴方のご息女が私どもに無理な要求をなさりまして。それは出来ないと申し上げましたところ、強気に出られたのです」
そういえば、結局何に対して文句を言っていたんだろう?
「無理な要求とは……?」
伯爵がおずおずとアーロンに尋ねる。
「この商会を寄越せ、とおっしゃっておりましたなぁ」
あ、うん。
無理。
一瞬、伯爵の目が光ったような気がした。
「なるほど……。ちなみに、何故無理なのか伺っても?」
「お教え出来ませんな」
「やはり、王族関係……ですか?」
あ、気のせいじゃない。
確実にロックオンしてる。
「お教え出来ません、と申し上げております」
眉一つ動かさず、言葉を重ねるアーロン。
さすがだね。
「ふむ……。これ程で、どうでしょう?」
何かハンドサインをアーロンに見せる伯爵。
えっと……何だろう?
「……そういえば、シャントルア伯爵は商売をなさっておられるのでしたな。しかし、こちらの返事は変わりません」
あぁ、情報を買い取るって言いたかったのね。
「なるほど……。仕方ありませんね。では、これ程でこの商会を買い取らせて頂きたい」
「お断り致します」
値段をろくに確認もしないまま即答で却下するアーロン。
そりゃそうだ。
「わかりました、倍出しましょう。それから従業員はそのまま雇い続けます。これでよろしいですか?」
「どんな条件を出されても、答えは変わりませんぞ」
頑なに断り続けるアーロンに、再び困惑顔の伯爵。
「そもそも、私にはその権限がありませんしな」
「……え?」
アーロンの暴露に、伯爵が固まった。




