冒険者登録
いつの間にかブックマークが10件になっていました!
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「さて、長々と話してごめんね。ちょっとお話するだけのつもりだったんだけど、リリィちゃんが賢いからつい話し込んじゃったよ」
ギクッ。
大丈夫、大丈夫。
私の3歳児の皮は厚いはず!
ロランさんは防音の魔道具を解除して、懐に仕舞った。
「それじゃ、冒険者登録だったね?」
「うん」
「行こうか」
そう言って立ち上がり、私の前で両手を広げてみせるロランさん。
あれ、なんだかデジャヴ。
そのまま再び抱き上げられ、1階に戻った。
ねえ、私、ギルドに来てから1歩も床に足が着いてないよ。
ある意味すごくない?
「お、ギルマス帰ってきた」
「うん、ただいま。ラドはどう……後でいいか、まずはリリィちゃんだね」
ラドさんは放置プレイをくらった!
ロランさんはサクサクと受付へと近づいた。
濃い紫色の髪に濃い緑色の目をした受付嬢がにこりと笑う。
「エラ、この子の冒険者登録を頼むよ」
「はーい……え?冒険者登録?依頼ではなくてですか?」
目をまん丸くするエラさん。
「うんそう。冒険者登録」
「えっと、かしこまりました……?」
頭にハテナをたくさん浮かべたまま、エラさんは奥へと姿を消す。
1枚の羊皮紙を手に、すぐに戻ってくるエラさん。
「これに必要なことを書いて、ギルドカードを個人特定出来るようにすれば、登録できるんだよ」
「へぇー」
羊皮紙と一緒に出されたインク壺を開け、羽根ペンの先を浸してから書き始める。
ロランさんに抱っこされたままだから、カウンターに届かない、なんてことはない。
「えーと、名前はリリィ。年齢は3歳っと。職業は……何て書けばいいの?ロランさん?」
返事がない。ただの屍のよう……じゃなくて。
「ロランさん。ロランさーん?おーい」
後ろを振り返れば、ロランさんがポカンとしていた。
前を見れば、エラさんもポカンとしている。
ロランさんの目の前で手を振る。
「ロランさーん。帰ってきてくださーい」
ハッとするロランさん。
「リリィちゃん、文字が書けるんだね……。しかも綺麗だよ……」
……やっちまったぜ!
普段歴史書とか普通に写本してたから忘れてたけど、確かに綺麗に字を書く3歳児とか恐怖だわ!
日本でもなかなかいないよ、そんな子!
……よし、流して誤魔化そう。
ロランさん誤魔化されたりしてくれなさそうだけど。
とりあえず全力で誤魔化そう。
「あのね?この職業って何?」
「え?あぁ、えーと。それはね、剣士とか、魔術師とか、回復師とか、自分の出来ることとか、戦闘スタイルとかを職業として書けばいいんだよ」
私の出来ること、ね。
「リリィちゃんは何ができるのかな?」
「えーとね、剣がちょっと使えるよ!あと、魔術もちょっとだけ」
「……え?魔術をその歳で?しかも剣も?」
エラさんが再び呆然とする。
「……これは、全力で隠して守るべきだね……」
……またやっちまったようである。
「とりあえず、職業のところは特殊、と書いておけばどうかな?珍しい戦闘スタイルの人はそうやって書くこともあるからね」
「うん、わかった」
職業の欄に特殊、と書き込む。
「よし。エラ、ギルドカードを」
「ぅえ?あ、は、はい!」
エラさん、まだフリーズしていたようだ。
書き終わった羊皮紙を持って奥に行って帰ってきたエラさんの手にはクレジットカードくらいの大きさのカードが1枚。
……それから、針が1本。
……これ、プスってやって血を垂らして登録するやつやん。
思わず遠い目をする。
「この針で指をチクッとして血をカードに垂らして登録完了だよ」
ほらな。
「針でチクッとするのは僕がやるよ。ちょっとだけ痛いかもしれないけど、我慢してね?」
そう言ってロランさんは私の手を取り、チクッとして、カードに血を垂らした。
血が滲んだ指にはすぐにガラス瓶入りの液体が1滴垂らされ、みるみるうちに治った。
これは、あれだね、ポーション。
「よし、これで登録は完了だよ」
おおぉ。
とうとう冒険者生活が始まるんだね!
ようやく登録完了しました




