話し合い
本日二話目
お兄さんは私を抱っこしたまま、2階にある部屋の一室に入った。
部屋の真ん中にテーブルがあり、それを挟む形でソファーが向かい合わせに置いてある。
応接室のようなものだろう、とあたりをつける。
お兄さんはソファーの片方に私を座らせ、自分は反対側のソファーに腰掛けた。
「さてと。うちのサブマスが悪かったね。それと、起こして連れてきてくれてありがとう。アレはお仕置きしておくから、安心してね」
……ラドさん頑張って。
自業自得ではあるけども。
そしてこの言い方。
これはもしや………?
「じゃあ、改めまして。僕がこのローウェン辺境伯領領都ギルドのギルドマスター、ロランだよ」
ですよねー。
「リリィちゃんは冒険者登録しに来たんだったかな?」
「うん」
「そうか。他のギルドで登録しようとしなくて、ホント良かったよ」
およ?
「他のギルドじゃダメなの?」
「うーん。なんて言えばいいんだろう。そうだね、他のギルドは今、偉い人たちがみんな悪いことを考える人ばかりなんだ。だからきっと、リリィちゃんが他のギルドに登録に行ったら、大変なことになると思う」
ロランさんいい人だわ。
相手が3歳児だからって変に誤魔化したりしないで、わかりやすく説明しようとしてくれてる。
「悪い人たち、やっつけないの?」
「……ふむ、ちょっと待っててね」
ロランさんは懐から何かを取り出してカチッとスイッチを入れ、テーブルの上にコトンと置いた。
「これは?」
「これは魔道具だよ。これで音が外に聞こえないようにするんだ」
「魔道具?魔術具じゃないの?」
「……驚いたな、魔術具を知っているのか。魔道具は魔力のない人でも、こうしてスイッチを押すことで付いている魔石の魔力を使って動くようになってるんだ。魔術具は魔石が付いていなくて、使っている人の魔力を使って動くんだよ。あとは、魔道具はこうして手を離しても大丈夫だけど、魔術具はずっと触っていなければならないんだ」
「へぇー」
「それで、悪い人たちをやっつけないのか?だったかな?」
「うん」
「彼らをやっつけることはできないんだ」
「どうして?悪い人なんでしょ?」
「うん、そうだね。でもね、もっと偉い、お貴族様たちがいてね。その人たちの中にも悪い人が多いんだ。その人たちにギルドの悪い人たちは助けてくださいって贈り物をしたり、お金をあげたりして守ってもらうんだ。だから、やっつけられない」
つまり、賄賂、と。
なるほどね。
防音の魔道具もこのためか。
「その悪いお貴族様よりもっと偉い人はいないの?その人たちに助けてって言ったら悪い人たちやっつけてくれないの?」
王族とかさ。
「いるんだけどね……。お貴族様たちより偉いのは王族って言う人たちなんだけど、お貴族様たちの力が強すぎて、その人たちもなかなか手を出せないんだ」
ふむ、貴族と王族の力関係のバランスが崩れているわけか。
王族まで悪人、なんてことは無いと思いたい。
どちらにしろ、なんとめんどくさいことだろうか。
「だからね、気をつけるんだよ。目立つと目をつけられてしまうかもしれないからね」
「うん、わかった!」
あれ?おかしいな。
まだ登録終わってない




