戦後処理③
一部胸くそあります。
ご注意ください。
リリィちゃんが居残りする辺りからです。
「さて。まさかこんなに減るとは思わなかったな……」
謀反発生からひと月後。
現在、王族専用の談話室。
王族が全員そろい踏みである。
あの後結局、極刑になったり家を取り潰したりで、貴族はおよそ3分の2まで減った。
「おかげで捌ききれないほどに王家直轄領が増えてしまった。ということで、それぞれの担当を決めるぞ」
ゴソゴソとどこからともなく大きな羊皮紙を取り出し、テーブルに広げるトール伯父様。
それはネリルランディアの地図だった。
って!
もう既に振り分けられてるじゃん!
「俺の方で既に振っておいた」
それ、担当を決めるんじゃなくて、担当を任命するって言うんだよ。
それよりもさ、トール伯父様。
私の担当地域、広すぎませんかねぇ!?
元メイリス伯爵領から元ローウェン辺境伯領までの地域全部私の担当に見えるんですけど!?
「リリィの担当地域は広めにしておいたぞ。テオに、お前が面白いことをしていると聞いてな。この辺りは農耕地だ。存分に使うといい」
犯人お父様か!
そして農耕地ということはあの作物増やそうぜプロジェクトか!
……いや、そんな名称じゃないんだけどさ。
そもそも名称ないけどさ。
「さて次だ」
早っ。
さすがフリーダム王家。
「アルには宰相をやってもらう。リリィは宰相補佐だ」
「分かりました」
「はい」
「テオは騎士団総帥だ」
「わかった。ということは、騎士団第1師団長もだな?」
「ああ。頼む」
「了解した」
総帥だと騎士団第1師団長?
どういうこっちゃ?
「騎士団総帥は、騎士団第1師団長も兼ねることになっているのだ」
首を傾げる私に気づいたお父様が解説してくれる。
なるほど。
「騎士団第2師団長はオズがやってくれ」
「分かりました」
「んで、騎士団第3師団長はリリィな」
ちょっと待てーい!
「トール伯父様、私宰相補佐なのですよね?」
「ああ、そうだが?」
「担当地域も広いのですよね?」
「そうだな?」
「その上騎士団第3師団長ですか!?」
トール伯父様は困ったように唸る。
「そもそも騎士は、騎乗できる従魔がいて初めてなれるものだ。そして今は信用できる者が少ない。結果、お前になった」
いやいやいや。
「私まだ5歳です」
「そういえばそうだったな?……まあ、別に構わん。俺はこの国を実力主義にするつもりだからな。年齢、性別、種族など関係なしに、な」
そう言ってチラリと私の近侍たちを見るトール伯父様。
そしてその視線はおじい様へ。
「もちろん、父上にもしばらくの間は頑張って頂く」
「年寄りをこき使う気か、このバカ息子が。そもそも私はもう王位を退いたのだぞ。それがしゃしゃり出るわけにもいくまい」
「ご冗談を。まだ父上は176歳ではないか」
…………何歳だって?
「そういうお前は129だったか」
……うん?
「俺ももうそんな歳か……。テオは132だったな。アルは124か?そんでもってアリアは116か」
……ううんんん?
「双子は26、それで末っ子リリィは5だな」
ええぇぇぇ……。
あれですか?
魔力多い人ほど長生きするあれですか?
まじかぁ。
どおりでオズ兄様とギュス兄様と比べてお母様もお父様も若いわけだよ。
「いいえ、お兄様。末っ子は0歳ですわ。まだ産まれていないのですもの」
えっ?
それってまさか……。
「よかったわね、リリィちゃん。あなた、お姉様になるわよ」
思わずポカンとしてしまう。
「それは本当か、アリア!?」
おじい様がガタッと立ち上がる。
「嘘を言ってどうしますの?本当ですわ、お父様」
「そうか……よかった……」
ポロポロと泣き出すおじい様。
「よかったな、アリア……」
「ええ。ありがとうございます、お兄様」
…………?
トール伯父様がどことなく寂しそうに見える。
「では、めでたい話が出たところでそろそろ解散とするか。…………リリィは話があるから残ってくれ」
まじですかい。
お父様がお母様を労るように寄り添い、出ていく。
お兄様たちやアル叔父様、ヴィー従兄様とおじい様も出ていく。
そして残ったのは私とトール伯父様、そしてそれぞれの近侍のみ。
「さて。話というのはだな……」
どこか躊躇いがちなトール伯父様。
「……これだ」
ペラリ、と羊皮紙を2枚テーブルに投げるトール伯父様。
これは…………。
「堕胎薬と王妃様の……」
「ああ。まさか、アリアとタチアナが口にするものに堕胎薬が盛られていたとはな……」
トール伯父様は自嘲気味に笑った。
「それに、タチアナが死んでしまったのは、産後の肥立ちが悪かったのだとばかり思っていた……」
テーブルの上に投げられた羊皮紙のうちの1枚は〈闇鴉〉への堕胎薬の注文契約書、もう1枚は〈闇鴉〉への故王妃、タチアナ様の暗殺依頼の契約書。
これによると、貴族たちは堕胎薬を盛って王族の数を減らして力を削ぎ、タチアナ様はヴィー従兄様を出産した時に遅効性の毒でじわじわと殺されたらしい。
「ヴィーも、タチアナが死んだのは己のせいだと思っているようだった……」
「ヴィー従兄様のせいでは……」
「ああ。もちろんあいつのせいではない。そもそもあいつのせいだとは俺も微塵も思っていなかった。……毒殺だとは思わなかったがな。お前への話というのは、これに関しての礼だ」
「礼……ですか?」
「ああ。お前のおかげでタチアナの死の真相を知り、仇をとることが出来た」
トール伯父様は、よくやった、と言うかのように頭をぽんぽんと叩いてくる。
「タチアナは男勝りなやつでな。女として愛していたわけではなかったが、それでも、共にこの国を導いてゆく俺の半身くらいには思っていたのだ」
昔を懐かしむように、ゆっくりと語りだすトール伯父様。
「互いを尊重し、互いの足りないところを補い合い、良き信頼関係を築いていた……。そういえばだな、こういうことがあったのだ」
目を輝かせ、生き生きとタチアナ様の話を続けるトール伯父様。
私はその惚気話に、トール伯父様の気が済むまで付き合った。
絶対、タチアナ様を愛してなかったはずがないよね。
鈍いんだね、トール伯父様は。
…………よかったね、タチアナ様。




