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進軍







「……また魔物か……」


ふう、とため息をつくお父様。


「仕方ありません。今は魔盛期ではないかとロランさんが仰っていましたから」

「待て、リリィ。私は聞いていないぞ?」


なんと。


「そうなのですか?」

「ああ。それで、今はどういう状況なのだ?」

「そうですね……。今現在、各地で魔物が活性化しているのはご存知ですか?」

「いや、増えているような気はしていたが、気のせいかと思っていた」

「ローウェン辺境伯領のギルドでは、手が足りないくらいだそうですよ」

「それほどか……」

「もしかしたら、私が色無しを連続して見つけているのは、魔盛期のせいかもしれませんね」

「なるほどな、確かにそうとも考えられる」


その時、アスランがピクリと反応し、木立の方へと駆けていく。

そのタイミングでガサッと飛び出してきたのは蛇の魔物。

アスランは前脚で蛇の頭を地に叩きつける。

その衝撃で伸びた蛇を咥えて運び、シルルの元へ。

そのまま蛇はシルルに呑まれ、綺麗に解体されてペッと吐き出された。


「……便利だな、お前の従魔たちは」

「助かっております」


指をサッと振れば、解体された蛇が私の亜空間収納に収まった。


「……便利だな、お前も……」


私もですか。


「しかし、魔盛期か。厄介だな」

「そうですね。この隙を狙って他国が攻めて来るかもしれませんし」

「ははっ!ここまで国力が落ちた国を欲しがる者などいるだろうか。いたとしたら、相当な変わり者だとは思わんか?」


お父様が皮肉げに笑う。


「……一応、国力を回復させる手立てはありますが」

「そうか?ではこの鎮圧が終わったら聞かせてもらおうか」


お父様それアカン!

フラグ!


「いえ、ただ農民の生産力を上げるための手立てをいくつか用意しているだけです。例えば、痩せた土地でも育つ作物を探したり、より多く収穫できるよう改良したりですね」

「ふむ、面白いな」


これでなんとかフラグクラッシュできたかな?


「具体的に、これが終わってからゆっくり聞きたいものだ」


お!と!う!さ!ま!

ダメですってば!

どうしてそうフラグを続けて立てるのですか!?


「……それほどの量でもありませんので、今お教え致しますよ?」

「それならば聞こうか」

「はい」


フラグクラッシュ!

困ったお父様である。


「まずひとつ。私の手の者……〈月影〉に、野にある植物を集めさせ、大きめの実をつけたり、根が膨らんだりといった特徴を持つものを選び出しました。それを魔術で無毒化したり、食べられる部分を肥大化させたりして、作物化しました」


ただ、この魔術は一個体につきひとつの特徴しか引き出したり、逆に抑制したりすることができない。

ある植物に実の肥大化という特徴を引き出す魔術をかけたとする。

そうすると、その個体はそれ以外の特徴がいじれなくなってしまうのだ。


なので、それを育てて種を増やす必要があった。

その種ならば実の肥大化という特徴を引き継ぎながら、別の特徴もいじることができる。

普通ならば十年単位で行うような作業だが、さすがはファンタジー。

魔力を栄養素に変換し、一瞬で育てることができた。


「ほう、面白いな」

「ありがとうございます。それから、2つ目ですが、この魔術を使って、既にある作物の1個体当たりの収穫量を増やしました」

「普通はそちらが先に来ると思うのだがな」


ごもっともです、お父様。

私も後から気づきました。


「しかし、なるほどな。新しい魔術を創り、それで作物を改良、または新たに作り出す、か。面白いことを考えるものだ」


あ、新しい魔術なのですか!?


「あの、魔術を作ったことに関しては……?」

「普通だろう?アルもよく作っているからな」


アル叔父様もですか。

なら、私が魔術を作ってもおかしくはないね。


「……騒がしいな。また魔物でも出たか」


ホント多いなぁ、魔物。


「も、申し上げます!ワイバーンです!ワイバーンが出ました!」


先頭の方から馬で駆けてきた兵が叫ぶ。

なんだ、ワイバーンか。


「私が行きます。よろしいですか?ヴィー従兄様」

「頼む。リリィの騎獣が1番速く着く」

「では、狩ってきます」

「供をします」

「ありがとう、ラスヴェト」


グランディオを駆けさせようとした時。


「お待ちを!相手はワイバーンです!そこらの魔物とは違います!」

「問題ありません」


スパッと言い切り、今度こそグランディオを駆けさせる。

後ろにはラスヴェトが。

さらにその後ろから兵が呼び止める声が聞こえるが、無視する。

グランディオに好きに走らせ、身を任せる。


強く吹き付ける風が、むしろ気持ちいい。

ああ、好きだなぁ、この感覚。

しかし、先頭はもう既に見えている。

白いワイバーンが兵たちに牙を向く。

あのワイバーン…………。


「リリィ。あのワイバーン、俺にくれないか?」


いつの間にか隣に並んでいたラスヴェトが問うてくる。


「いいよ」


私は即答する。


「感謝する」


短い礼の言葉が届くと同時に、メルヴィが駆け抜けていく。


「グランディオ、速度下げて」

[了解した]


もう既にワイバーンの元までたどり着いたラスヴェトは、メルヴィから飛び上がると同時にワイバーンの頭をむんずと掴む。

え、飛び降りるんじゃなくて飛び上がるんだ、そこ。

そして素手なのか。

ラスヴェトはそのまま体を捻り、掴んだワイバーンの頭を地に叩きつけた。

さっきアスランもやってたなぁ。


[ギャオゥ!]


ワイバーンの悲鳴が鼓膜を揺さぶる。

ワイバーンの頭を、今度は足で踏みつけ固定するラスヴェト。

それと同時に現場に到着する私。


戸惑い1色の視線の集中砲火を受ける。

うん、そうなるよね。

私でさえちょっとびっくりしてるよ。

まさかワイバーンを踏みつけるとは。

おもむろに治癒をワイバーンにかけるラスヴェト。

足を退け、ワイバーンに話しかけた。


「討伐されるか、俺に従うか。選べ」


わお。


[グゥゥ……]


ワイバーンはしばらく唸っていたが、最終的には項垂れ、ラスヴェトに従うことにしたようだ。


「お前は……そうだな、デュロイだ」


デュロイと名付けられたワイバーンはビクビクとしながら頷いた。


「ご苦労さま、ラスヴェト」

「いえ」

「では、戻りましょう」

「お待ちを!」


グランディオが踵を返そうと足を踏み出した瞬間、呼び止められる。

またか。


「なんでしょう?」

「今のは一体……?」

「目で見たことが全てです。進軍を続けなさい。では」


ヴィー従兄様たちの元へと駆け戻る。

ラスヴェトの後ろにはデュロイ。


「よく色無しに遭遇するな」


そう、デュロイもまた色無しだった。

徐々に色が着いてきている。


「どうなってるんだろうね」


色無しは珍しいんじゃなかったっけ?

やっぱり、魔盛期のせいなのかなぁ。


「ただいま戻りました、ヴィー従兄様」

「おかえり、リリィ。まさか連れてくるとは思わなかったな」

「ラスヴェトが従魔にしましたので」


そう言うと、生暖かい目を向けられた。

解せぬ。


「あと1時間ほどでタナス砦だ。気を引き締めろ」


お父様に言われ、キリッとする王族一同。


「いや、顔ではなく気をだな……」

「まあ、どちらでもいいではありませんか、父上」


オズ兄様がお父様を慰める。


「はあ、全く……」


そのまま魔物に立て続けに襲われながら進軍すること1時間ほど。

整然と陣営を組んだ反乱軍が目の前に展開していた。








ギャグ一家こと王族。

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