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最後の準備

プルプルもふもふたち、立派になって再登場






あれから後処理という名の事前処理をほどほどに進めること4日。

とうとう謀反が起こる日である。


まだ夜が明けていない、真っ暗と言っていい時間帯。

謀反は夜明けと共に起こし、不意をつくつもりだと報告が上がってきたためだ。

もちろん他の王族たちにも伝達済み。


そして私は今、離宮の一角のとある建物に向かっていた。

傍にはラスヴェトもいて、ふよふよと浮かぶ魔術の淡い光の玉が私たちの足元を照らしている。


ピコン、と所有者にしか分からない音でリングがお知らせをしてきた。

スクリーンを開いて確認すれば、謀反の準備が完了し、予定通り夜が明けると同時に動くだろうとメッセージが届いていた。

ふむふむ、了解、と。


「ラスヴェト」

「ああ、見た」


私たちは急ぎ足になる。

何も言わずとも分かってくれるラスヴェト、さすがです。


まもなく目的地である建物に着いた。

中へと入る。

入口付近にあるスイッチを手探りで見つけ出して押す。

すると、カチッという音とともに明かりがついた。

魔術の光の玉は消す。


建物の中は広々として手入れの行き届いた一部屋の獣舎になっている。

その中央には、もふもふの山がデン、と鎮座していた。

私に気づくとその山は一気に崩れ、雪崩のように私に向かってきた。

全方位をもふもふに囲まれ、もみくちゃにされる。


「分かった!分かったからみんな落ち着いて!」


ようやく止まったもふもふ攻撃に、ふぅ、と一息つく。


[主さん!主さんなの!]

「ぐはぁっ!」


私を囲むもふもふの壁の中から小さな影が飛び出して来て私に突撃をかました。

その正体は私にそっくりな女の子。


実はこれ、シルルである。

ある日突然、私の髪を2、3本プチッと引き抜いたかと思ったら、それをもしゃもしゃしていきなり私にそっくりな女の子になったのである。

スライムが人間の姿に。

テンプレだぁ。


[だ、大丈夫なの!?……ごめんなさいなの……]


しゅんとするシルル。


「大丈夫だよ。でも、次からは気をつけてね」

[分かったなの!]


くつくつと喉で笑う声がする。


[シルル殿はせっかちであるな]


炎獅子、アスランだ。

がっしりとした体に鋭い眼光、とても威厳を感じさせる風体だ。

ライオンよりも一回り大きいサイズにまで育った。

そのアスランの言葉にむくれるシルル。


[だって、だってなの!]

[ふむ、シルルの気持ちも分からなくはないぞ。私もだからな]


グランディオがシルルに頷く。

美しく均整のとれた、しなやかな筋肉で覆われた立派な体躯。

グランディオは普通の馬より一回り大きいはずのフレイムホースの中でもさらに大きいらしい。

私は他のフレイムホースを見た事がないから分からないが、アーロンがそう言っていた。

正直、5歳児が乗ると違和感が半端ないと思う。


[アスラン。あなただってそわそわしていたでしょう。僕は見たんですからね]


グリフォンのシエルがアスランをからかう。


[むっ!言うでないわ、シエル!]

[ほれほれ、そなたらいい加減にせぬか。みっともないぞ]


タマモがみんなを(なだ)める。

タマモは、拾った時は小さくてころころしていた。

しかし今目の前にいるタマモは、サラサラツヤツヤかつもふもふな毛並みにスラッとした体躯、そして極めつけはお尻で揺れる9本の尻尾。

そう、おなじみ九尾である。


[ぬし様よ、なにゆえ近頃おいでにならなかったのじゃ?こなたは寂しかったのじゃぞ]


そう言ってペタンと耳を伏せるタマモ。

心なしか尻尾もしょんぼりしている。

可愛すぎか。


「最近は仕事があって忙しかったの。寂しい思いをさせてごめんね」


タマモの毛並みを思う存分楽しみながら謝る。


「私が来られなかった間も魔物狩りしてくれてたんだってね?ありがとう」


この獣舎の入口にはドアがなく、従魔たちは自由に出入りできるようになっている。

また、この離宮には〈月影〉しかいないので、離宮の出入りも自由だ。


実は、私がこんなに早くAランクに上がれたのは従魔たちのおかげでもある。

従魔たちが狩ってきた魔物をギルドに売ることで、ポイントが順調に貯まっていったのだ。


[ぬし様のお役に立てたのなら嬉しいのじゃ]


タマモの耳がピンと立ち、尻尾がゆらゆらと揺れる。


[して、ぬし様よ。このような時間にいかがなさったのじゃ?]

「ちょっと待ってね……はい」


私の、謀反に関する記憶を従魔のみんなと共有する。

みんなが元々色無しであり、私の魔力に染まってより深く繋がっていることで初めてできるのだ。

普通の従魔では出来ない。


[ふむ、なるほどのぅ。ぬし様はこなたらを連れてゆきたいのじゃな?]

「うん、そういうこと」


情報伝達が速いって、いいよね。


[ぬし様が望まれるのならば、こなたに(いな)やはないのじゃ]

[シルルも行くの!]

[私も参りましょうぞ]

[我もだ]

[僕も、もちろん行きますよ]

「みんな、ありがとう!」


従魔たちの頭を撫でて回っていると。


[ねぇ……?あたし、忘れられてないよね?]

[ああ、すまない、我が妹よ。兄は忘れていた]


おい、グランディオ。


[お兄ちゃんひどい!ご主人様ぁー!お兄ちゃんがぁー!]

「落ち着け、メルヴィ。俺は忘れていないから安心しろ。もちろんお前も連れて行く」

[わーい!]


ご機嫌直るの速っ!

……あ、そうだった。


「ねぇみんな、これつけて」


指をスッと振り、亜空間収納からみんなに合わせて作られた装身具を出す。

そこには私の象徴華であるディアヌスリリーが(かたど)られている。


王族は一人一つ、魔法植物の中から象徴華を選ぶ。

そしてその象徴華はその王族個人を表す紋章のようなもの。

それを、私の場合は他の王族に勝手に決められた。

全員が口を揃えてこれしかないだろう、とゴリ押ししてきたのだ。


ディアヌスリリーは私の誕生月を司る月の女神、ディアーナの花だと言われている。

そして設定がてんこ盛りな花でもある。


見た目はガラス細工のように透明な百合で、月光に照らされるとその光で魔力を生み出し、淡く光る。

その生態は、魔物を引き付け自らの護衛とし、その見返りとして魔力を与える。

その魔力を与えられた魔物は気性が穏やかになるという。

しかし、ひとたびディアヌスリリーに害が及べば全力で牙を向く。

そしてディアヌスリリー自体も蔓を振り回し、外敵を追い払う。

おっそろしい花である。


しかし、それだけではない。

ディアヌスリリーは上質な癒しや護りの魔力を溜め込んでいるため、極上の魔法薬の材料となる。

善の人間が触れればその効果はより高くなるが、悪の人間が触れれば瞬く間にドス黒い紫色に染まる。

変色したディアヌスリリーは猛毒で、そのエキスを1滴含むだけでドラゴンがのたうち回り、そして死に至るとさえ言われる。

本当に、おっそろしい花である。

そしてそれをピッタリだと言ってゴリ押しする王族も王族である。


「これでよし、と」


うん、サイズはピッタリだね。

ついでにグランディオとメルヴィには馬具を取り付け、騎乗できるようにしておく。


「これで私の従魔だって判るようになったよ。それじゃ、王城に行こうか」


転移でな。








ネーミングセンスはお留守です

(´・ω・`)

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