プロローグ1
初投稿です
私はリリディアナ、3歳。
3歳児がそんな流暢に喋るかよ、という文句は聞こえない。
実は私には、前世の記憶があるんだよね。
と言っても前世の自我を保ったままという訳ではなく、ふとした瞬間に、ああそう言えば、っていう感じで思い出す断片的なもの。
なんとなく曖昧で、他人の記憶を覗いているようなのに感覚も感情も自分のもののような、そんな不思議な記憶。
まあ、今の人格と前世の人格は別だという認識はあるけれど、結局は似たような性格をしている、と思う。
さて、とりあえず前世の記憶云々はおいといて、次は私、リリディアナについて。
今私がお母様と暮らしているのはローウェン辺境伯爵領にある領主館という名の要塞。
ローウェン辺境伯爵領は魔物がわんさか出る深淵の森と接している。
だから、領主館は森にほど近い場所に建てられてて、要塞としての機能を持っている。
そんな所に住んでいるなら領主であるローウェン辺境伯の娘だと思うだろうけど、違うんだよね、これが。
お母様曰く、私がお母様のお腹の中にいる時に、お母様ごと攫われてきたらしい。
そして家令のラシス曰く、ローウェン辺境伯は大の女嫌いで、恋愛対象は男。
もちろん、ローウェン辺境伯は男。
そんなローウェン辺境伯は、女嫌いが過ぎて跡継ぎが作れない。
しかも、血縁に跡継ぎの座に据えられるような人物はいない。
じゃあどうするかと考えたローウェン辺境伯は、なんと妊娠中の女性を攫ってきて、そのお腹の子を自分の子だということにすればいいじゃん?という結論を出し、実行した。
稀に見るバカである。
そして攫われてきたのがお母様だったというわけだ。
ちなみに私は、自分のお父様が誰で、今どこにいるのか教えてもらっていない。
あ、領主館の使用人や兵たちはみんなその辺のことは知っているし、むしろ私たちの味方だよ。
―――――コンコン
「どうぞ」
ガチャリ、とドアを開けて入ってきたのは私付き侍女のエナ。
「リリディアナ様、お夕食のお時間です。アリアンナ様もお待ちですよ」
「分かりました、直ぐに行きます」
もうそんな時間なのか。
にしても、お嬢様の猫を被るのは毎回めんどくさい。
まあ、慣れつつあるけど。
ちなみにアリアンナは私のお母様の名前。
とってもマイペースで、コロコロと機嫌が変わる。
待たせるとどんな機嫌になるかわからない。
ということでまあ、ご飯を食べに行きますか。




